北山村は、奈良県と三重県に挟まれた、和歌山県の飛び地。付近には三県境が5ヶ所もある。
駅や商業施設を貫通する境界線、3つの県が集結した「三県境」…世の中には知られざるマニアックな県境が少なからず存在する。
100を超える県境スポットを実際に訪れ、そのややこしくも興味深い裏事情とともにまとめた書籍『県境マニアと行く くるっとふしぎ県境ツアー』から、「県境を26回もまたぐ道」「自治体まるごと飛び地」についての一節をご紹介したい。(写真:田仕雅淑)
※本稿は、田仕雅淑著『県境マニアと行く くるっとふしぎ県境ツアー』(技術評論社)を一部抜粋・編集したものです。
県境を「26回」もまたぐ道
高野龍神スカイラインは、高野山と龍神温泉を結ぶ延長42.7kmの道路で、1980年の開通当初は有料道路であったが、2003年に国道371号の一部になり、無料開放となった。
全国には短い区間に県境を何度もまたぐ道路はいくつもあるが、またぐ回数でいうと、ここが全国ナンバー1だろう。その数はなんと26。ほとんどが「道の駅田辺市龍神ごまさんスカイタワー」の北側20kmの区間に集中している。
筆者も、自分で車を走らせた時の動画を確認してみた。県境が集中したエリアに入ると、何度もカーナビから県境を越えたアナウンスが聴こえてくる。その音声を数えてみると、28回であった。実際の越境回数よりも多いのは、県境が道路に触れただけで、横切らない場合でも反応するからだろう。とにかくカーナビがにぎやかになる。
この道路が県境を何度もまたぐことになったのは、和歌山県の最高峰である護摩壇山(ごまだんさん)をはじめとした、奈良県との県境である山の尾根を削ってつくられた道だからだ。そのため見晴らしも良く、ドライバーやライダーに人気のドライブルートになっている。
それだけではなく、見通しの良さから電波の送受信にも都合が良いため、無線マニアの人達もこの道路周辺に集まる。筆者が取材に訪れた日は、沿道の「鶴姫公園」の駐車場に、アンテナを高くのばした車が何台も停まっていた。
ごまさんスカイタワーから見たスカイライン
もちろん、私達のような県境マニアにも有名なスポットなので、シーズンになると車両が集中して渋滞も起きるらしい。また、警察の見回りもそれなりにあるので、県境で気分が上がるあまりスピードを出しすぎないよう、安全運転で越境しよう。
ドライブの終点には、道の駅「田辺市龍神ごまさんスカイタワー」がある。お土産の購入ができるので、休憩がてら寄ってみるのも良いだろう。スカイタワーの名のとおり展望塔もあり、有料(300円)ではあるが、和歌山県で最も高い場所からの景色を堪能できる。