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うつ病や認知症にも? 「オーディオブック」が脳機能にもたらす効果

上田渉(株式会社オトバンク代表取締役会長)

2022年08月29日 公開

 

耳勉強法が「認知症予防トレーニング」になる!?

耳勉強法によって得られる効果やメリットは、まだほかにもあります。本記事の最後に紹介しておきたいのは、認知症予防トレーニング効果です。のちほど紹介するように、これを裏づけるエビデンスはいくつか論文として発表されています。

また、認知症予防うんぬんを抜きにしても、私はシニアのみなさんにどんどんオーディオブックに親しんでいただきたいと心から望んでいます。カルチャースクールの教室に足を運んだり、目を酷使するほど文字や映像を見たりしなくても、生涯学習が可能になるからです。

目の不自由な方のコミュニケーション手段としては点字が有名ですが、繊細な指の感覚が求められますので、先天的に目の見えない方や若年層でないと、しっかり習得できないといわれています。

緑内障で中途失明者となった私の祖父も、点字は学べなかったそうです。このように、もともと本が大好きという人が、目の症状が悪くなったため心ならずも本離れが進んでしまう、というケースは少なくありません。

結果的に脳への刺激が減少し、それが認知症へと向かわせる一因になる可能性がないとはいえません。仮に目が見える状態であったとしても、高齢者になればなるほど目を使うことによって生じる疲労は顕著になりますので、読書による学びが年々困難になることは明白です。

しかしながら、まだ耳には頼ることができます。オーディオブックなら、身体的負担を極力減らしたうえで、脳を活性化させることが可能です。

 

オーディオブックなら飽きずに楽しめる

2000年代の初頭に、加齢医学を専門とする東北大学の川島隆太教授が、高齢者に計算課題をやってもらうことが認知症予防になることを証明しましたが、オーディオブックにもそれと同じ効果があるのではないかと私は考えました。

オーディオブックを聴くことは、計算課題を解くよりも着手するハードルが低いですし、脳トレに有効とされるパズルやゲームに比べ、コンテンツが豊富かつバラエティ豊かゆえに飽きにくいという利点もあります。

だから私は、自分の手でその効果を実証したいと思うようになりました。

そして、検証を行うためには専門家の助けが必要と考え、関西福祉科学大学で認知症の研究などを行っている脳科学者の重森健太教授に、協力を依頼しました。

重森先生が2016年に上梓された『走れば脳は強くなる』(クロスメディア・パブリッシング)という本の内容が非常に面白く、私が取り組もうとしていることに先生も関心を示していただけるのではないかと思ったからです。

すると、まさに意気投合という感じで、重森先生は二つ返事でOKしてくださり、すぐに実験を開始することになりました。これが2019年1月のことです。

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高齢者のみなさんはぜひオーディオブックを

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