頼み事を目上の人や、忙しい相手にするのは難しいもの。一体どのような言葉で頼めば、相手に負担をかけずに伝えることが出来るのでしょうか。清水克彦氏が、「言いづらい頼み事」をする時の会話のコツを紹介します。
※ 本稿は、清水克彦著『「ものの言い方」「文章の書き方」を知らずに大人になった人へ』(PHP研究所)より、内容の一部を抜粋・編集したものです。
相手に配慮して「相談をもちかける」方法
仕事を持つ人の必須要件として「ホウレンソウ」(報連相=報告、連絡、相談)の重要性が指摘されたことがあります。
形式どおりに話がしやすい報告や連絡と違って、もっとも難しいのが相談です。持ちかけ方によって、うまくいく場合とそうでないケースが生じるからです。
報告や連絡であれば、
「きのうの会議での結果をご報告させてください」
「作業の現状をお伝えします」
などの言い方で構いませんし、折り入って上司などに伝えておきたいことであれば、
「お耳に入れておきたいことがあるのですが」
「すでにお聞きおよびのことと存じますが」
「ご覧に入れたいものがございます」
このような前置きで話を始めればいいでしょう。
しかし、相談は、相手の機嫌を損ねることなく協力してもらう必要があるため、言葉を選びたいものです。
A「相談に乗ってください」
B「すみません、相談に乗っていただけませんか」
C「少々、お時間をいただけないでしょうか」
Aは、相手の都合に配慮せず、ぶしつけな言い方になります。友人同士なら「相談に乗ってよ」で済むかもしれませんが、大人の表現としては物足りません。
Bは、Aを丁寧にした言い方。Cであれば、相手の都合に配慮した大人の表現ということになります。
【相談を持ちかけるときの表現】
・「少しお時間を頂戴してよろしいでしょうか」
・「実は私、〇〇の点で悩んでおりまして」
・「お時間があれば、是非、お知恵をお借りしたいのですが」
・「どうも私の手には余る問題がございまして」
結果を左右する「頼み方」
誰かに相談を持ちかける機会と同様、お願いごとをする機会も多々あるものです。これもやはり、頼み方ひとつで結果が大きく違ってくることがありますから、大人のもの言いが問われます。
A「よろしくお願いします」
B「なにとぞよろしくお願いします」
C「ご検討のほど、切にお願い申し上げます」
Aでは、やや真剣度が足りません。相手が多忙であれば、あなたからの依頼を忘れてしまったり、優先順位を低くされたりする可能性もあります。
Bは、「なにとぞ」を付け加えたことで切迫感が出ています。「なんとか聞き届けてほしい」という思いが伝わる分、Aよりは印象度が強い表現になります。
CはBをさらに切羽詰まった言い方にしたものです。「切に」という普段はあまり口語では使わない言葉が、かえって「なんとかしてあげなければ」という思いにさせる効果があります。
ただ、お願いごとは、あなたにとってはどうにかして実現したいことであっても、お願いされる側の負担にならないよう配慮しなければなりません。そのバランスに気をつけ、相手への配慮は忘れないようにしましょう。
【お願いをするときの表現】
・「○○願えませんでしょうか」
・「お手すきの折にでも、〇〇していただけませんでしょうか」
・「ご検討いただけませんか」
・「○○していただけると助かるのですが」
【強くお願いするときの表現】
・「まことに勝手なお願いですが、お骨折りいただけませんでしょうか」
・「○○の件、なにとぞお力添えください」
・「ご配慮いただけたら幸いです」
・「お取りなしのほど、よろしくお願いいたします」