初対面の相手に、好印象を与え、距離を縮めるにはどのようなコミュニケーションをとればよいのでしょうか。清水克彦氏が報道現場で培った、「相手との距離を一気に縮める」会話術を紹介します。
※ 本稿は、清水克彦著『「ものの言い方」「文章の書き方」を知らずに大人になった人へ』(PHP研究所)より、内容の一部を抜粋・編集したものです。
初対面で印象を良くするには...
相手との距離を縮めるには、初対面で相手にどんな印象を植えつけるかが重要になります。
A「○○社△△部の佐藤です」
B「○○社△△部の佐藤と申します。どうぞよろしくお願いします」
C「○○社△△部の佐藤と申します。お目にかかれて光栄です」
初対面の相手と名刺交換などをする際、もっとも基本パターンとなるのがAです。しかし、これではあまりにシンプルで、相手の印象に残りません。
Bは、「佐藤と申します」と謙譲語で名乗っている分、大人の言い回しになりますが、これも基本パターンの域を出ていません。
おすすめしたいのはCです。相手が多忙な中、わざわざ時間を割いて会ってくれたことに感謝の意を込めた表現で、相手とは初対面ではあるものの、相手の名前がすでに業界内で知れ渡っているようなケースにも使えます。
相手の目を見ながら、明るく張った声で最初のひと言を言うのは、いくつになっても照れくささなどもあって難しいものです。
しかし、これまで政治家や文化人、トップアスリートなど多くの著名人と初対面を繰り返してきた私の経験則から申し上げれば、これさえできれば、相手が目上の人であれ著名人であれ、距離を一気に縮めることができます。
【初対面で相手との距離を縮める表現】
・「○○と申します。一度、お目にかかりたいと思っておりました」
・「○○と申します。お運びいただきありがとうございます。お待ちしておりました」
・「○○と申します。本日はご一緒できて大変光栄です」
・「申し遅れましたが〇〇と申します。ご多忙の中、お時間をいただいて恐縮です」
こうしたフレーズのあとに、相手と自分との間に何か共通項を発見し、それに触れることができれば、初対面での印象は強固になります。そのコツについて詳しく見ていきましょう。
何気ないやり取りから「共通項」を探る
私が務めてきた番組チーフプロデューサーや報道記者という職種は、ひと言で言えば、人に会うのが仕事です。
その目的は、インタビューで相手から本音を聞き出すことですから、短い時間で相手の懐に飛び込み、事件や出来事にまつわる思いや背景を引き出さなくてはなりません。
そのようなケースで重要になるのが、共通項を探す、話題の種を見つけるということです。相手が初対面の場合、必ずと言っていいほど行われるのが名刺交換です。ここで、できる限り、相手との共通項を見つけるのです。
・「資源管理部の村上です。はじめまして」
A「○○放送の清水です。本日はよろしくお願いします」
・「資源管理部の村上です。はじめまして」
B「○○放送の清水です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。ご多忙の中、お時間を割いていただきありがとうございます」
・「資源管理部の村上です。はじめまして」
C「○○放送の清水です。本日はご多忙の中、ありがとうございます。こちらの『村上』という姓は、私の故郷に多い姓なのですが、ご出身はどちらですか?」
BはAよりも丁寧な言い方です。ただ、ビジネストークの域を出ていません。しかし、Cは、「村上」という姓に注目して共通項を探そうとするパターンです。仮に、私と同じ愛媛県出身ということになれば、「愛媛県のどちらですか?」などと会話が弾むことになります。
逆にそうでなくても、「私は福井県ですが、清水さんはどちらのご出身ですか?」と聞いてくるはずですから、「福井でしたか? 何度かうかがったことがあります」などと返せば、円滑なコミュニケーションがしやすくなります。
仮に何も思いつかなければ、「福井って何が美味しいのですか」などと付け加えてみましょう。
初対面の相手とは、次のような点をチェックしておきましょう。
・「自分の出身地に多い名前かどうか」
・「変わった名前かどうか」
・「相手のオフィスの住所に話の種になる要素はないか」
・「日に焼けていればゴルフが趣味とかではないか」
・「会話の中で家族の話が出れば、似たような悩みはないか」