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なぜ“日記を書くこと”が心を救う? 『さみしい夜にはペンを持て』著者が語る理由

古賀史健(株式会社バトンズ代表取締役社長)

2025年01月22日 公開

なぜ“日記を書くこと”が心を救う? 『さみしい夜にはペンを持て』著者が語る理由

『嫌われる勇気』の共著者としても知られる古賀史健氏が、はじめて13歳に向けて書き下ろした「自分を好きになる」書き方の寓話『さみしい夜にはペンを持て』。本書で日記を書くことを推奨した理由とは? 古賀氏に話を聞いた。 聞き手:編集部(田口佳歩)

※本稿は、『Voice』2024年2月号より抜粋・編集した内容をお届けします。

【古賀史健(こが・ふみたけ)】
株式会社バトンズ代表取締役社長。1973年生まれ。出版社勤務を経て、1998年フリーランスに。著書に『取材・執筆・推敲』、『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』(以上、共著・岸見一郎)、『20歳の自分に受けさせたい文章講義』、その他構成に『16歳の教科書』シリーズ、『ゼロ』(堀江貴文著)など約100冊があり、累計1500万部を数える。2014年、ビジネス書ライターの地位向上に寄与したとして「ビジネス書大賞・審査員特別賞」受賞。

 

「書くこと」で救われてきた

――本書は、日記を書くことを推奨する本です。なぜ、このテーマで執筆されたのでしょうか。

【古賀】もともとは中高生に本を読むことの楽しさを伝えたいと思っていたんです。でも自分のことをよく振り返ったときに、本を読むこと以上に「書くこと」によって救われてきたことに気付きました。

僕は、何かにムシャクシャしたり嫌なことがあったりしたときは、文章に書き出すことで処理してきました。また、10年以上続けているブログは、執筆を通して頭の整理をしたり、自分が生きている実感を得られたりしている場です。

文章の書き方については、これまで何冊も本を出しました。そこで本書では、そもそも人間にとって書くとはどういうことか、書くとどんな良いことがあるかについて、やはり中高生に伝えたいと考えました。

――本書の内容は高度で、大人が読んでも頷かされる箇所が少なくありませんでした。それでも、とくに届けたいのは中高生なのですね。

【古賀】小学生から中学生、さらに高校生に上がると、他者との人間関係だけでなく「自分とは何か」「なぜ僕は生きているんだろう」など自分との関係に悩み始めますよね。少なくとも僕はそうでした。人生で初めてそんな悩みに直面した人たちに向けて、自分なりにメッセージを送りたいと思ったのです。

ちなみに、大人であれば、一般書を手にとるかどうかは、自分に直接役立つかどうかで判断しがちでしょう。誰もが多かれ少なかれ、自分と向き合うことの重要性は認識していると思うのですが、それでも「日記を書きましょう」と言われたところで、日々の仕事や子育てでそんな余裕はないかもしれない。ならば、お金はなくとも時間はあり、さまざまな悩みを抱えはじめる中高生と、本を通じて向き合いたかったのです。

――反響はいかがですか。

【古賀】有難いことに、中高生からたくさん感想をいただきました。ちょうど今日も、15歳の読者から手書きのハガキが届きました。じつは執筆中にも、原稿を中学生の方に読んでいただき、その感想をもとに何度も書き直したんです。

――古賀さんは、相談相手がいないときには「自分に声をかける」ことが大事で、それが「書くこと」だと書かれていますね。古賀さん自身、普段からご自身に声をかけているのでしょうか。

【古賀】じつは癖として「自分インタビュー」をやっているんです。たとえば、あるスポーツ選手の記者会見がテレビで流れていたら、自分がその場にいたら何を質問するか、その質問を投げかけられたらどう答えるか、瞬時に立場を入れ替えながら考える。その選手が僕には思いつかない答えを話していたら、「この人凄いな」と思ったり。

――じつは私も時々「自分インタビュー」をしています(笑)。

【古賀】そうでしたか(笑)。「自分インタビュー」をすることで、「聞く」「答える」という対話がシミュレーションできますよね。それがきっと、僕にとっては自分が何を考えているかを言語化するための手段になっている気がします。

――本書の構成としても主人公の「タコジロー」と「ヤドカリのおじさん」の対話が中心です。対話形式で執筆した狙いは何でしょうか。

【古賀】たとえば、講演会では最初に登壇者が数十分スピーチして、最後に質疑応答の時間が設けられることが多いですよね。僕も登壇者の側に招かれるのでわかりますが、皆さん、最初のスピーチは退屈そうにされているんですよね(笑)。でも質疑応答の時間になると、打って変わったように真剣に聞いてくれる。

ですから本書も、一人称で語り続けるより、対話を楽しんでもらおうと思い至りました。タコジローやヤドカリのおじさんを身近に感じて、自分もそこに加わってるような感覚で読み進めてもらえれば面白く感じてもらえると考えたんです。

 

「面倒くさい」への対処法

――本書では「ことばの暴力」について「丁寧に説明するのが面倒くさい」ときに振るってしまうと書かれています。SNSでの誹謗中傷の問題をどう見ていますか。

【古賀】誹謗中傷は「暴力」以外の何物でもありません。しかも、普通の喧嘩ならば相手に殴り返されるかもしれないところ、匿名のアカウントならばその心配もない。安全地帯から他人を傷つけているのです。

残念ながら、そうした「暴力」はSNSという装置があるかぎりは存在するでしょう。だから、攻撃されたときに誰に頼り、どう対処するかという防御の方法をしっかり考え、広めるべきだと思います。

僕が本書に書いた「誰にも言えない自分の気持ちを言葉にして、まずは自分に語りかけてみる」ことも、一つの解決策だと伝えたいですね。

――自分の気持ちと向き合ったり語りかけたりすることは容易なことではないと思いますが、日記を書く以外に方法はありますか。

【古賀】若い人は「若者言葉」を使いますよね。少し前に流行った言葉だと「マジ卍」とか(笑)。

――ありましたね(笑)。明確な意味はなく、喜怒哀楽を表していたように思います。

【古賀】彼らにとっての「若者言葉」は、あらゆる気持ちを表すうえで気軽に使える万能の言葉です。LINEのスタンプも近いかもしれない。既存の言葉では言い表せない微妙な気分を表現してくれる便利な表現方法です。

しかし、その便利さに頼りすぎると、自分の気持ちを考える力が弱くなってしまいます。

ところが面白いことに、若者でも文章を書くときは、「マジ卍」などの言葉はなかなか使いません。つまり、日本語で何かを書くことは、頭を働かせて自分の気持ちと向き合うことでもあるんです。

もちろん、書くことさえ「面倒くさい」と思う人もいるでしょう。その場合は、まずは「若者言葉」を使おうとしたときに立ち止まり、普通の日本語ならばどう表現するか、考えてみてほしいですね。

――いまのお話は「自分を客観的に見つめる」ことの大切さにもつながるように思えます。

【古賀】たとえば、哲学とは「世界とは何か」「なぜ私はここにいるのか」を考える学問ですよね。でも犬や猫は、そんなことを考えて生きていないはずです。「私」という一人称を存在させて思考することは、非常に人間的な営みと言えるのではないでしょうか。そうして自分と向き合うことは、むしろ人として生きる苦しみを引き受けることにもつながるかもしれませんが、僕は人間だけが追求できる楽しみではないか、と考えています。

――「日記」の醍醐味を、最後にあらためて教えていただけますか。

【古賀】日記を書くことは、「心の鏡」をつくる作業に近いかもしれません。たとえば、自分の顔色や髪形は、鏡を見ないとわかりませんよね。それと同じで、自分の心や気持ちだって鏡がないとわからないはず。その鏡が日記であると、僕は思うのです。日記を書いて読み返すと、「自分はこんな人間なんだ」「あのとき、こんなこと考えていたんだな」などとわかりますから。

もちろん、鏡をもたなくても生きることはできます。でも、少なくとも僕は日記をつけることで自分の現在地を知り、次のステップに進みやすくなっているような気がします。自分を見つめ直すために、心を映してくれる鏡をつくる。そのために日記を書くと、これまでと違う発見があるかもしれません。

 


『さみしい夜にはペンを持て』

『嫌われる勇気』古賀史健が、はじめて13歳に向けて書き下ろした「自分を好きになる」書き方の寓話。
うみのなか中学校に通うタコジローは、学校にも居場所がなく、自分のことが大嫌い。ある日、不思議なヤドカリおじさんと出会ったタコジローはその日から、どんどん変わっていく...
・考えるとは「答え」を出そうとすること
・その作文、嘘が混じってない?
・みんなと一緒にいると、自分ではいられなくなる
・考えないのって、そんなに悪いこと?
SNSで常時だれかとつながっている時代。だからこそ、積極的に「ひとり」の時間をつくろう。
ポプラ社/定価1,650円(10%税込)

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