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生き方

ツチヤ教授の人生相談「ものは考えよう」

土屋賢二(お茶の水女子大学名誉教授)

2012年11月12日 公開 2022年08月08日 更新

 

アリとキリギリス、どちらがトクか

わたしは何をするにもギリギリにならないと動き出せない性格です。夏休みの宿題は8月31日、高校受験のための勉強は入試10日前、新婚旅行のための荷作りは出発当日の朝にようやく手をつけるといったギリギリ具合です。

いつも「もっと前からやっておけばよかった」と自分でも思うのですが、"喉元過ぎれば熱さを忘れる"で、なかなか反省を次に活かすことができません。

でも、最近はこの疲れる性格から卒業したいと真剣に考えています。この性格をなおすにはどうすればいいでしょうか。(愛媛県・会社員・41歳・男性)

41歳にもなってこういう反省をするようでは遅すぎます。わたしは20代のときなおそうと決心し、血のにじむ努力の結果、まだなおすことができていません。もうお分かりでしょう。20代に決心しても遅すぎるのです。

世の中には、ギリギリまで先延ばしにしては反省する人と、ギリギリまで先延ばしにしても反省しない人の2種類があります。どちらの人も結果は同じです。どんなに反省しても先延ばしにする習慣はなおりません。

おそらくあなたは、どんなに反省してもなおらないと知って、ホッとしたのではないでしょうか。「もうこれで反省もしなくていい」と思って。わたしも同じタイプだからよく分かるのです。

しかし、ここが考えどころです。なぜ、ギリギリまで延ばしてはいけないのでしょうか。ギリギリになっても間に合うのであれば、何の問題もないはずです。

むしろ、夏休みに毎日コツコツ宿題をするよりも、ひたすら遊んで過ごし、8月31日になってから親に泣きついてやってもらうほうがはるかにラクです。1日泣くだけですむからです。

ちょうど、毎日少しずつドリルで歯を削られるより、短時間で一気に削られたほうが苦痛は少ないのと同じです。

たとえギリギリまで遊んでいて間に合わなかったとしても、まず悲惨な結果にはなりません。たいていは叱られて謝罪すればすむものです。

謝罪も、慣れれば簡単にできるようになりますから、地道に努力するよりもはるかにラクです。小学校時代を思い出してください。宿題をするより、宿題を忘れて立たされるほうがずっとラクだったはずです。

むろん、間に合わないと重大な結果を招く場合もあります(言われた期日までに仕事を仕上げないとクビになるとか、一刻も早く子どもを病院に連れて行かなくてはいけないとか、妻に言われた時間までに帰宅しなくてはならないとか)。

もしほんとうに重大だと思えば、どんなことがあっても絶対に間に合わせるものです。わたしもそうだから分かりますが、あなたも、重大な結果になるかどうかを慎重に見きわめ、いつまでサボっていられるかを冷静に計算してサボっているはずです。

サボる人はそれだけの手間をかけるものです。だから、夏休みの宿題であわてて親に泣きつくのは、ギリギリの8月31日ぴったりだったのではありませんか?

あなたは「疲れる性格」だとおっしゃいますが、あなたの尻ぬぐいをさせられる他人は疲れても、あなた自身は疲れないはずです。

きちんと間に合うよう課題を仕上げるほうがはるかに疲れるのです(嘘だと思うなら、一度やってみてください。わたしは一度もやってみたことがありませんが)。

わたし自身が到達した結論はこうです。期限ギリギリまですべてを忘れて遊びましょう。

[格言]
明日に延ばせるなら今日はサボれ。
明後日まで延ばしてもたぶん問題ない。

 

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