1. PHPオンライン
  2. 生き方
  3. 耐えて頑張る? ポジティブ思考? それがあなたを追い詰めている!

生き方

耐えて頑張る? ポジティブ思考? それがあなたを追い詰めている!

辻秀一(スポーツドクター、産業医)

2015年12月22日 公開 2015年12月22日 更新

「耐えて頑張る」式の生き方には限界がある

耐えてさえいれば、必ず良いことがあるのか?

「耐えて頑張る」。日本人はこの力を持っているように思いますし、実際にこれまでは、耐えてやってきました。

狩猟民族は能動的に活動することで生き残りますが、日本人のような農耕民族は、自然という、自らの力ではどうにもならないものを相手にしながら、耐えて生き延びていく宿命を背負っていたのかもしれません。

太古の日本人がどのような人たちだったのかはよくわかりませんが、風土的、民族的背景を踏まえて考えると、そんな歴史が見えてくるように思えます。

今の日本社会を担っている50~60代の人たちは、漫画『巨人の星』や、ドラマ『おしん』が生き方の象徴のようなもので、憧れであり模範でもありました。わたし自身もまさにその世代です。

しかし、「耐えることの美徳」を理解できる一方で、「果たして耐えてさえいれば、必ず良いことがあるのか?」という疑問もあります。

「何かを成し遂げるためには、耐えて我慢しなければならないことがある」ということはわかります。我慢してこそ手に入れられるものもあるはずです。

でも大事なことは、我慢しているとか耐えているという感覚ではなく、「するべきことをちゃんとしているか?」ということなのではないでしょうか?

我慢することや耐えることの感覚にただ浸っているだけでは、何も生まれないどころかどんどんエネルギーを消耗して疲弊してしまい、本当にするべきことを、高い質で継続することができなくなってしまいます。

そのような状態では、何も成し遂げられないのではないでしょうか?

 

大切なのは「人生の質」を高めること

大切なのは、状況に応じた“するべきこと”をきちんとすることです。

“するべきこと”は、状況によってさまざまに変化します。時には耐える姿勢も必要かもしれませんし、我慢しなければならないこともあるでしょう。昼寝をしていたり、鼻歌を歌ったりしていては、状況を打破できない局面も多々あるはずです。

だからこそ、何をするのかが大事であり、決して「耐える」とか「我慢する」といったことが状況を打破してくれるわけではない、ということに気づく必要があります。

「耐える」ことにエネルギーを使うのではなく、するべきことを行動することそのものにエネルギーを投下する必要があるのです。

『巨人の星』では、主人公の星飛雄馬が、これでもかというほどつらい思いを繰り返しながら、耐えに耐えて我慢し苦しむ姿が描かれています。

飛雄馬は、その我慢と苦しみに耐えた先にこそ「巨人の星」があると信じて突き進みますが、その先には家族の崩壊や負傷し健康を損ねる未来しかやってこなかったと記憶しています。

耐えることや我慢することだけでは、行動やパフォーマンスの質、人生の質は上がりません。それだけでは、つらいという思いだけが残り、結局は何も手にすることができないのです。

人生のゴールは「死ぬこと」と、人はすべて決められています。

ですから、生きている間の行動やパフォーマンスの質をいかに高くしていき、エネルギーをするべきことに注いでそれにふさわしい結果をいかに手にしていくか、ということが大切なのではないでしょうか。

それが「人生の質」を高めて、充実した人生を歩むことだと思います。

著者紹介

辻秀一著(つじ・しゅういち)

スポーツドクター、産業医、株式会社エミネクロス代表

1961年、東京都生まれ。北海道大学医学部卒業。スポーツ心理学を日常生活に応用した応用スポーツ心理学をベースに、パフォーマンスを最適化・最大化する心の状態「Flow」を生み出すための独自理論「辻メソッド」でメンタルトレーニングを展開。エネルギー溢れる講演と実践しやすいメソッドで、一流スポーツ選手や企業経営者から熱い支持を受けている。また、ドクターの視点を活かし、「健康経営」という考え方を取り入れた新しい企業の経営のあり方を「産業医」や「健康コンサルタント」として取り組み、フローカンパニー創りに大きな成果を上げている。「辻メソッド」の真髄を学べるワークショップは、一流アスリートやビジネスパーソン、コンサルタント、経営者から大学生や主婦まで、老若男女が参加。毎回大きな感動を呼び、受講者から「世界No.1」との声もあがっている。通信教育で学べるフローマインド・マネジメント資格も好評。さらに、「スポーツは文化だ」という理念のもとプロバスケットボールチーム「東京エクセレンス」を立ち上げ、代表を務める。2013年よりNBDLで2年連続優勝を果たす。著書は、37万部突破の『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)、『禅脳思考』(フォレスト出版)、『一生ブレない自分のつくり方』(大和出版)、『自分を敬え。超訳・自助論』(学研パブリッシング)など、約40冊。
辻 秀一 オフィシャルサイト
http://www.doctor-tsuji.com/

関連記事

アクセスランキングRanking