残業を削減し自由時間を確保しよう
学び続けるためには、仕事にばかり時間をかけすぎない=残業を減らすことも重要だ。出口氏がそのことに気づかされたのもまた、40代での体験だったという。
「43歳から3年間、ロンドン現地法人の社長を務めたときのことです。あるとき、聞きたいことがあって、下階の運用チームのフロアに行ったら、真っ暗で誰もいないのです。チームごと他社に引き抜かれたのかと思って慌てました(笑)。
実際、ロンドンではそういうことがあるのです。でも、実は定時になったから、全員帰っていただけでした。といっても、定時を10分すぎていただけですから、日本の常識で言えば、みんな残っている時間です。
日本では残業が当たり前で、僕もそのほうが成績が上がると思い込んでいました。しかし、ロンドンの運用チームは定時で全員が帰る。それでいて、成績は社内の他のチームと比べてまったく遜色がありませんでした」
残業をしなくても成績は上げられることを目の当たりにした出口氏は、帰国後、自分が率いるチームで残業削減に取り組んだ。
「残業をなくすポイントは『無減代』。つまり、『その仕事は無くせないか』『無くせないのなら、減らせないか』『他のやり方に代えられないか』。『無減代』を考えれば、残業が減ったからといって業績が下がることはありません」
人が学びを得るのは「人・本・旅」からだ、というのが出口氏の持論。「旅」とは、遠くに行くことだけではなく、現場に足を運ぶこと。
人の話を聞き、本をよく読むことはもちろんだが、さらに現場に行って体験してみることで、「百聞は一見に如かず」となるからだ。このロンドンでの体験も、まさにそうだった。
「日本の正社員は年間約2,000時間働いていますが、約1,500時間しか働いていないユーロ圏よりも成長率が低い。長時間労働が価値を生む時代ではないからです。短い時間で成果を出し、浮いた時間で人生を楽しむ英国人を見て、その思いを強くしました。
今は体力よりもアイデアが勝負の時代。ムダな残業を削減し、『人・本・旅』から大いに学んでほしいと思います」