感染者が急増する「梅毒」 知っておくべき症状、早期受診の大切さ
2020年01月25日 公開 2020年01月25日 更新
梅毒の進行は4分類される
梅毒は感染からの時間や症状によって4段階に分類されるが、一般的な所見と取材結果を交えてまとめてみた。
【第1期】
感染後3週間から3か月までの期間を第1期といい、リンパ節が腫れたり感染した部位に小さなしこりが現れる。このしこりに痛みはなく、治療を施さなくてもやがて消え、その後しばらく無症状の時期(潜伏期)が続くため、感染に気づかないことも多い。
【第2期】
感染後3か月から3年までを言う。この時期の特徴的な症状として「バラ疹」と呼ばれる赤い花びらのような発疹が現れる。身体のどこにでも出現するが特に手のひらや足の裏に多発する。
蕁麻疹やアレルギー、あるいはヘルペスといった他の皮膚炎と間違えることも多い。
バラ疹以外にもさまざまな皮疹が現れるが、患者自身が気づいていないこともよくあり、105名の患者のうち20%以上に本人が認識していない皮疹を認めたという研究データもある。
これらの皮疹も自然消失するが、もちろん治ったわけではなくトレポネーマは体内に残ったまま長い潜伏期に入る。
第2期の症状の現れ方には個人差が大きく、発熱や関節痛などの全身症状を訴えるケースもある。
この第1期~2期は感染力が強く、この時期に他者にうつすことが多い。
同時に、この時期までに治療を開始すれば梅毒は治癒する。
【第3期】
感染後3年から10年までの状態。この頃になると皮膚や筋肉、骨、内臓にゴムのような瘤(ゴム腫)ができる。この腫瘍は増殖しながら進行し、周辺組織を破壊していく。かつて「鼻が落ちる」などと恐れられた容貌の変化が起こるのがこの時期である。
【第4期】
いわゆる末期梅毒。感染から10年以上経過した段階を言う。脳や血管、神経にトレポネーマが侵入し、さまざまな機能障害や認知障害、進行麻痺などを引き起こす。万能感を持ち、誇大妄想や人格の変化が見られることも多い。また大動脈瘤等もできやすく、これが破裂すると突然死を起こす。
第3期から4期の時期は、周囲の衛生状態や自身の身だしなみにまったく無頓着になることが多く、その外見の変化に驚かされることも珍しくない。
が、前述したように現在では第3期~4期まで進行するケースは極めて稀である。
早期の受診・治療を
以上が病期による分類だが、梅毒は感染から発症までのバリエーションが非常に多く、期を跨いで症状が出現することもある。複雑な進行形態を取るのが梅毒という病気の特徴だ。
特に第2期とその前後の潜伏期には、同じ症状が現れたり消えたりの再発を繰り返す。活動期でも、特に皮膚の病変は他の疾患と酷似する形態も多く、梅毒が「偽装の達人」と呼ばれる由縁である。
そして潜伏期はあらゆる段階に存在し、まったく症状が出ないまま進行する無症候性梅毒の症例も報告されている。
また、現在特に懸念されているのが先天性梅毒だ。
妊娠している女性が梅毒にかかると胎盤を通して胎児に感染し、死産や早産、また新生児の死亡や奇形のリスクが高まる。
妊娠年齢である20~30代の女性の感染増加に伴って先天性梅毒も増加すると推測され、改めて定期的な妊婦健診の徹底が最重要課題となっている。
さらに国立感染症研究所は妊娠中の性感染症の予防知識の重要性を啓発することを医療従事者に呼びかけており、先に紹介した「梅毒診療ガイド」もそれを踏まえて発刊された。
重ねて言うが、梅毒は早期に対処すれば治療できる病気である。
少しでも思い当たる症状や不安があれば、手遅れになる前に検査を受け、治療を開始してほしい。
検査は血液採取でおこなうが、通常の血液検査ではなく「梅毒血清反応検査」であり代表的なものが「ワッセルマン氏反応検査」と呼ばれるものだ。
基本的にはどの医療機関でも受けられるが、皮膚科や性病科、泌尿器科、女性なら婦人科や産婦人科で実施していることが多い。
特殊なケースを除き健康保険も適用されるので自費扱いになることはない。
自治体によっては保健所や保健センターで無料かつ匿名で受けることもできる。
予防(コンドーム使用)と検査(血液検査)と治療(ペニシリン系抗菌薬の内服)を適切におこなえば梅毒は怖い病気ではない。
ただし感染が発覚したら必ずパートナーも同時に受診し、ピンポン感染を防ぐことが不可欠だ。
※参考サイト
東京都感染症センター
東京都感染症情報センター
国立感染症研究所「感染症発生動向調査」
厚生労働省ホームページ