「意味不明で草」前代未聞のExcel実用書×異世界ファンタジー小説に上がった歓声
2020年06月26日 公開 2020年06月29日 更新
その先進性と共有性の高さからExcelを超えるとも言われる次世代表計算ツール「Googleスプレッドシート」とライトノベルの一大ジャンル「異世界転生」を融合させた奇書、『転生したらスプレッドシートだった件』がネットを中心に話題になっている。
同書は、Googleスプレッドシートの世界に転生したExcel職人と関数との死闘を描く「表計算冒険活劇」。
いざ発売が公表されると「意味わからなすぎて草」「どこからツッコめばいいのかわからない」「異世界転生もここまできたか」など、そのカオスな世界観にどよめきの声が殺到する事態となった。
本稿では、そんな"謎の書"の第1章より、モンスターと化したVLOOKUP関数に立ち向かう一幕「蠢くVLOOKUP」の抜粋し紹介する。
蠢くVLOOKUP
「ひやああああ、さわらないでええええええ!!!!」
ヘルプで呼ばれた部屋、というかシートはおそろしくも少しだけエロい状態だった。大量の手の形をした関数が人差し指と中指を足にして動き回っている。完全にハンドだ(注 映画『アダムス・ファミリー』1991年公開。ハンドは手だけのキャラクターだがせわしなく動き活動的)。ハンドたちはExcelスーツを着たメガネの女性を取り囲んでいる。
「な、なんですかアレは?」
「紹介しよう。我が家の執事、ハンドだ」
「あれって執事なんでしたっけ? いや、そんなことより早く助けないと……」
「え? 違うの? 執事じゃねえの?」
「執事は別にフランケンシュタインみたいなやつがいたはずですよ。ところで助けないと……」
「あ、そっか。よく見てんなお前、若えのに偉いよ」
サイトウは余裕そうだが、例の女性は余裕ゼロで叫んでいる。
「はやくたすけてぇええええええええええ!!!!!」
「イノウエ、うるせえよ。VLOOKUPぐらいで死にはしねえだろ、ちょっと黙ってろ」
え、あれVLOOKUPなの? まじで? キモすぎる。
「タカハシ、お前、例の神学論争どっち派だ?」
「へ? VLOOKUPですけど」
「好都合じゃねえか。そうだな、おめえはいったんイノウエを助けてこい。邪魔なVLOOKUPは処理しとけ。おれはちょっと道具取ってくるから」
そう言ってサイトウは車に戻っていった。
処理される無数のVLOOKUP
さて初日から厳しいことになった。さっきの研修現場で見た感じ、関数ってオブジェみたいなもんだと思っていたけど、あれは完全にモンスターだ。動いてるし、襲いかかってるし。そんなところに1人で放置されるとは。
「まあいけるっしょ、VLOOKUPなんて慣れたもんだし!」
おれは自分に言い聞かせるようにそう言って、おそるおそるイノウエと呼ばれた女性に近づいていった。
VLOOKUPたちはどことなく威嚇するような動きをしつつ、おれが近づくとじりじりと後退して道を開ける。イノウエの前までくると1匹が手首で立ち上がり、体というか指を広げて立ちはだかり、体を震わせてくる。キモい、かなり。これに触れないといけないのか。
「く、くそ……、もうしらん! ブ、ブイルックアップ!」
立ちはだかるVLOOKUPの人差し指を握って唱えると、VLOOKUPは元いたのであろうセルまで飛んでいった。無事処理できたようだ。イノウエの周りのVLOOKUPたちは恐れを感じたのかたじろいだように見えた。いける。いけるぞ。