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くらし

人間の本能? 「白線の上だけ歩くゲーム」をやりたくなる理由

石川幹人(明治大学教授)

2021年10月25日 公開 2024年12月16日 更新

 

安心感がわくわくにつながる

土管や押入れなどのせまい場所に入るとワクワクするのは、想像の世界で危険な敵をやり過ごせる安心感が得られるからです。「危険だ」と思うと、アドレナリンという興奮物質が脳内で分泌されます。「でも、隠れている自分は大丈夫」となると、安心感のほうが強くなります。

この安心できる興奮がワクワク感なのです。ただし、同じせまい場所でも「逃げられない危険」が予想される場合は、かえって恐怖の対象となります。たとえば乗っているエレベーターが動かなくなって閉じこめられると困ります。そのような場合は秘密基地にはなりません。

さて「秘密基地ごっこ」だけでなく、ちょっとしたワクワク感が得られる想像上の工夫を、多くの人が子ども時代に行っているようです。私が耳にしたところでは、横断歩道の白い部分を安全地帯に見立てて、その上だけを踏みしめて道路を渡る、です。

踏み外して黒いアスファルトの部分を踏んでしまうと「地獄の底まで落ちてしまうぞ」と思いながら慎重に道路を渡ると、渡るときにはワクワク感が、渡り切ったときには爽快感が得られます。

あるいは、寝ている布団は海に浮かぶイカダであって、周りの海(畳の上など)にはサメがうようよいると想像すると、ワクワク感とともに眠れるようです。

 

想像力はそのままにしておいていい

想像の中で練習することは、スポーツの練習方法としても効果が確認されており、「イメージトレーニング」として実践されています。子どもが「秘密基地ごっこ」に没頭し続けていると、「ありもしない空想にふけってばかりだけれど、大丈夫かな」と心配になってしまう大人もいます。

しかし、生物として本能的に行っている練習だと考えれば、空想の目的に思い当たることができるのです。この空想行動は、必要性が薄れてくれば、だんだんと消えていくので、それまでは自由に空想するのがいいのです。

最後に、個人差について触れておきましょう。危険の感じ方には、大きな個人差があります。危険をあまり感じない子どもは、危険回避の空想をする必要がないので、空想をする子どもが理解できず、ありもしないことを言う「ウソツキ」のように思います。

一方で、危険を強く感じる子どもは、その恐怖心を解消するために空想をしがちになります。その子は「ウソツキ」なのではなく、想像力をうまく発揮しているのです。

ところが「ウソツキ」呼ばわりされると、想像を控えてしまい、恐怖心が解消できずに不安が高まります。みんなが想像の役割を知って、理解しあえるようになるといいですね。

 

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