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仕事

指導のつもりが自慢話に...煙たがられる上司の致命的な思い違い

渋谷昌三(目白大学名誉教授)

2023年01月13日 公開

 

おしゃべりだけで不満は解消する

仕事の配分や役割分担、評価の結果などによって、不満を持つ部下もいると思います。ポストの数は決まっていますし、全員に良い評価をつけるわけにはいきませんので、部下の誰もが処遇に満足する職場を作ることは難しいものです。

もし、何人かの部下が不満を持っているような様子のときには、不満をどの程度解消してもらえるかはわかりませんが、個別に話だけは聞いてあげましょう。

人は、おしゃべりをすると、問題自体は解決されていないのに、スッキリした気分になることがあります。

精神分析医のフロイトは、患者に自分の心の内を自由に話させる方法で治療をすすめました。「おしゃべり療法」という言葉がありますが、その療法には、「浄化」と「洞察」という2つの効果があることがわかっています。

「浄化」は、心の中にたまっていた気持ちや、モヤモヤしたものを話して吐き出してしまうと、それだけでスッキリしてしまうという効果です。

「洞察」というのは、相手の人にわかってもらおうと思って、さまざまな表現方法で相手に伝えていくことによって、自分の中で気持ちが整理されてきて、解決のヒントに気づくという効果です。

「浄化」と「洞察」の効果を生むために、リーダーは不満の聞き役に徹してみましょう。

近年、リーダーにとって最も嫌な仕事の一つは、「扱いにくい部下」が反発するような説明をしなければいけない面談場面です。これはリーダーにとって大きなプレッシャーであり、うまくやり遂げられるかどうか不安になるものです。

このような場面では、「部下を説得しよう」とか「当たり障りのないことを言って穏便にすませよう」と考えないことです。何を言っても「扱いにくい部下」を満足させることはできないと考え、聞き役に徹しましょう。そうすることで、その部下の不満も明らかになり、自分のストレスも軽減されるはずです。

 

部下の失敗を積極的にゆるす

部下が失敗したときには、その責任を問うことも、ある程度は必要です。しかし、責任追及だけに終始しているようでは、部下は失敗を恐れるようになり、二度とチャレンジをしない人間になってしまいます。

そもそも部下の失敗は、その仕事を命じたリーダーの責任なのですから、部下に対する責任追及よりも「失敗の原因を分析し、次に生かしていく」ということにエネルギーを注ぐべきではないでしょうか。

失敗は誰にでも起こりうることですが、それをどう捉えるかによって、将来が違ってきます。失敗を生かすことのできる人は成長を遂げ、失敗を生かせない人は、なかなか成長することができません。

部下が失敗をしたときにリーダーのすべきことは、失敗を次に生かして、成長できるように支援してあげることです。

心理学に「原因の帰属理論」というものがありますが、これは、失敗した原因を「内的帰属」と「外的帰属」に分けて考えるというものです。

内的帰属とは、「能力がなかった」「努力が足りなかった」など自分自身に原因を求めることです。一方、外的帰属は「運が悪かった」「課題が難しかった」など外部に対して原因を求めることです。

原因を内的なものに求めるか、外的なものに求めるかは、部下の性格にもよります。反省をするためには、内的なものに原因を求めることが必要ですが、それが過剰になってしまうと、気持ちが沈んだまま、いつまで経っても立ち直ることができなくなります。

自分を責める傾向のある部下に対しては、「タイミングが悪かった」というような外的要因にも目を向けさせるようにしたほうがいいでしょう。

重要なことは、「変えられるもの」と「変えられないもの」に分けて考えることです。そのうえで、「変えられるもの」を具体的にどう変えていくかを部下と話し合ってみましょう。

 

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