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生き方

「あいつの態度が嫌だ」定年間近に文句ばかり言う社員の“迷惑な執着心”

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2023年01月27日 公開 2023年07月26日 更新

 

なぜ「ダメに決まっている」と言うのか

エネルギッシュな人は、何かに努力して結果が期待はずれでも、損したと思わない。それを経費と考える。エネルギッシュな人は、やった努力を無駄と考えない。成果の上がらなかった努力を、損したとは考えない。その努力は、長い将来まで考えれば無駄になっていないと感じている。

しかし執着性格者は、その努力が無駄になることが悔しい。その努力が、その場で成果を生み出すことに執着する。

エネルギーがないと、今日という日も、明日という日も、昨日という日も、意識できない。ただひたすらに、この瞬間に成果がほしい。

それは努力の過程が楽しくないから。関心と興味で動いている人は、すぐに成果を上げようとしていない。「こういう成果が今ほしい」というように欲張りではない。

執着性格者はすべてに欲張り。リスクをとらない。「やってみなければわからない」とは言わない。関心と興味で動いていないから。

たとえば、「やってみなければわからない」ことを「ダメに決まっている」と言う。それは、激しい愛情欲求があるから。愛情()()感に苦しんでいるから。

彼らがよく使う「ダメに決まっている」という表現は、自分にもっとよくしてくれない周囲の人を責めているのである。「ダメに決まっている」は「蓋をされた怒り」を間接的に表現している。

「できる訳ないじゃない。もうダメ」、そう周囲に叫んでいるのである。抑えられた怒りで消耗している。立ち上がる気力もない。

「皆は、もっと私のことを知るべきだ」と心の底では思っている。やってみれば、実は結果は「空」ではない。それなのに執着的傾向の強い人は、それを無駄と考える。執着性格者は、目に見える今の結果を重んじる。

しかし、これらのしたことを無駄と考えたら生きていけない。執着は悔しさと後悔と未練。人間、最後はすべてなくなる。執着性格者はそのことがわかっていない。

【著者紹介】加藤諦三(かとう・たいぞう)
1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

 

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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