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ビジネス数学教育家が「誰の人生においても数学は必要」と断言する理由

深沢真太郎(ビジネス数学教育家)

2023年02月16日 公開 2024年12月16日 更新

ビジネス数学教育家が「誰の人生においても数学は必要」と断言する理由

「先行きがまったく読めない」「成功法則がすぐに陳腐化してしまう」――。そんな現代に求められるのは、「自ら深く考え、答えを出していく」こと。そしてそのために不可欠なのが「数学的思考」です。

なぜ数学的に考えることが、生きる上で必要になるのでしょうか。ビジネス数学教育家の深沢真太郎氏が解説します。

※本稿は、深沢真太郎著『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)を一部抜粋・編集したものです。

 

「数学的思考」を定義する

ところで数学の特徴とはなんでしょうか。もちろん様々な答えがあります。正解か不正解かなど気にせず、あなたも考えてみてください。私が今まで学生やビジネスパーソンにこの質問をしたときの答えを、いくつか列挙します。

「とにかく計算する」
「必ず正解がある」
「ちょっとでもミスしたら不正解になってしまう」
「一度どこかでつまずくと脱落せざるを得ない」
「公式を覚えればどうにかなる(意外と暗記科目の一面がある)」
「わかる人にはわかるけど、わからない人にはサッパリわからない」

私も頷く答えばかりです。そういう意味で世の中の皆さんは数学というものをよくご存知だなと思います。これらすべて正解です。それを前提に、私の答えを示すことにしましょう。

「定義をしないと始められない」

数学の最大の特徴は何かと問われたら、私は間違いなくこのように答えます。私の記憶では、同じ答えをおっしゃった学生あるいはビジネスパーソンはこれまで一人もいませんでした。定義とは定めること。「○○とは〜〜である」と言語化する行為です。

もしあなたが私の答えに「?」と思ったなら、今までこのような視点や発想がまったくなかったとしたら、きっと本稿はあなたに何かをもたらすはずです。

なぜなら、視点や発想がまったく違う人間と一緒に楽しくトレーニングをすることになるからです。まったく同じ思考回路の人間の書いた本を読んでも、得るものがあるとは思えませんよね。

さて、話を先に進めましょう。数学は定義をしないと始められません。例えば「三角形の面積を求めなさい」という問題があったとします。あなたはすぐに「底辺×高さ÷2」という計算式を連想したでしょう。でもちょっと待ってください。

「そもそも、三角形とはなんですか?」

あなたはこの問いにどう答えますか。三角形とは何か。サンカクの形をした図形? ではサンカクとはなんですか?

日常生活では、こんなことを言うタイプは間違いなく嫌われます。しかし、数学においてはここが生命線です。三角形の正体がはっきり言語化できていないのに、三角形の面積を求められるわけがないからです。

この問いに対する数学の一般的な正解は、「同一直線上にない3点と、それらを結ぶ3つの線分から成る多角形」です。三角形という図形の説明に「3つの角」という表現は要らないのです。実際、三角形の面積を求める計算式は「底辺×高さ÷2」でした。角度という数値は使いません。

ここで申し上げたいことはたったひとつ。数学は定義をしないと始められないものだということ。ゆえに本書においても、まずは「数学的思考」を定義しなければなりません。そうでないと"始められない"のです。次の1行が私の定義です。

数学的思考とは「数学をするときに頭の中でする行為」である。

当たり前の内容に感じると思いますが、どうか軽視しないでください。

頭の中でする行為ということは、基本的に足の小指は使いませんし、あなたのデスクに置いてある電卓そのものは数学的思考ができない物体であることを意味します。曖昧な状態を許さず言語化する。定義するとはこのようなものなのです。

もしよかったら「面積」を定義してみてください。意外と難しいのではないでしょうか。「面積」を定義する前に、そもそも「面」とはいったい何でしょうかね。

 

「数学をする」とはどういうことか

本稿の読者の中には学生の方もいるかもしれません。おそらくアルバイトの経験が一度や二度はあるのではないでしょうか。そこでこんな問いを立ててみましょう(ここでもまた「問い」から始まることに気づいてください)。

【演習問題】

「アルバイトの給与」とは何か、数学的に説明してください。

あなたが学生であれビジネスパーソンであれ、おそらくこのような答えを想像したのではないでしょうか。

時給(額)と勤務時間を掛け算したもの

もちろん正解だと思います。私自身これ以外の答えはほぼ想定していません。ここで重要なのは、あなたがいかにしてこの答えを導いたかです。あまりに簡単すぎる問題ゆえに瞬間的に答えを出したかもしれません。

しかし実はその間、あなたは頭の中で数学的思考をしていたのです。私が実際にした行為を解説しましょう。

「アルバイトの給与」とは何か、という問いがある

・STEP1  まず「アルバイトの給与」を定義する
 「アルバイトの給与」とはアルバイトをすることで得られる報酬である (定義)

・STEP2 「アルバイトをすることで得られる報酬」を分析する
それを決めるものは「時給」と「勤務時間」の2つであると理解する (分解)

・STEP3 どんなアルバイトでも同じように説明できるように体系化する
一般的に「アルバイトの給与」をY、「時給」をA、「勤務時間」をXとすると、YはAとXの掛け算という構造をしている。Y=AX (構造化)

あるいはこのような行為をしたとも言えます。

「アルバイトの給与」とは何か、という問いがある

・STEP1 まず「アルバイトの給与」を定義する
「アルバイトの給与」とはアルバイトをすることで得られる報酬である (定義)

・STEP2 「アルバイトをすることで得られる報酬」を分析する
それは勤務時間が短いよりも長いほうが金額は大きいものだと理解する (比較)

・STEP3 どんなアルバイトでも同じように説明できるように体系化する
一般的に「アルバイトの給与」をY、「時給」をA、「勤務時間」をXとすると、XとYは比例の関係にあり、Y=AXという型(モデル)で表現できる (モデル化)

おそらくあなたもこのような思考プロセスを踏んでいます。だから私と同じような答えを出すことができたのです。

このように数学とは定義し、分析し、体系化する行為を指します。より具体的には「定義」「分解」「比較」「構造化」「モデル化」を組み合わせることで答えを出す行為です。

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数学をするときの「頭の使い方」は様々な場面で必要となる

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