日本の国家予算107兆円は妥当か...統計学で探る「大きすぎる数字」の真意
2023年03月27日 公開
巨大なトヨタ自動車を「もっと身近」に
続いて、トヨタ自動車の売上27兆円です。これはトヨタ自動車の社員数で@変換してみることにしましょう。
この27兆円という数字は連結決算、つまりトヨタ自動車本体だけでなくそのグループ会社も含めた決算数字です。そこで、社員数も連結で見てみると、約36万人。さすが日本一の売上を誇る企業だけに、従業員もかなりの数です。
これを1人当たりに直してみると、7500万円になります。
27兆円÷36万人=7500万円
とても大きな数字ではありますが、「圧倒的」というほどではありません。たとえばオフィス文具でおなじみのアスクルは売上が約4200億円なのに対し、従業員数は約3300名。1人当たりに直すと1億円を超えています。一般に卸売業は製造業より1人当たり売上高は高くなる傾向があります。
あなたも自社の売上と社員数で「1人当たり売上高」を出してみてください。こうして感覚をつかむことができれば、大企業の数字も自分事としてとらえることができるようになるはずです。
アベノマスクの何が問題だったのか
さて、再び国家の話に戻り、以下の問いについて考えてみてください。
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Q.「アベノマスクの予算に466億円」という記事を読んで、お父さんが激怒しています。
「こんなものに460億円以上もかけるなんて、とんでもない!」
確かに自分もおかしいと思いつつ、どのくらいの無駄なのかピンときません。あなたならどのように説明しますか。
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2020年のコロナ禍で発生したマスク不足は、皆さんの記憶にも新しいことと思います。そんな中行われた国からのマスク支給は、当時の安倍晋三首相の名前から通称「アベノマスク」などと呼ばれましたが、その対応の遅さやマスクの枚数や品質について数々の非難が巻き起こり、「税金の無駄遣い」と揶揄されました。
ただ、コロナ禍の先が見えない中での判断を、後の視点から印象論で批評するのはフェアではありません。そこで、ここでも「数字」に換算してみましょう。
日本の人口約1億2000万人で、マスク予算466億円を@変換してみると、約390円。つまり、この値段で国民にマスクを配った、ということになります。送料も込みとはいえ、正直、マスクの値段としては少々高いというのが正直なところでしょう。
しかし、マスク不足が本格化している最中、街中ではかなりの高値でマスクが売られていました。その後すぐに暴落したとはいえ、普段は1箱500円くらいのマスクが3000円くらいで売られていたこともありました。
そんな状況ならば、アベノマスクのコストはそれほどおかしなものでもないように思えます。
しかもその後、かかった費用は結局260億円になったとの発表がありました。これだと1人当たり約220円です。
結局、アベノマスクの問題はコストというよりも「スピード」だったのではないかと、私には思えます。民間各社が思いの他早く量産体制を整えたことでタイミングを逸してしまったことが、批判につながったということです。
諸外国と比べて日本人は、国家予算や貿易収支のような話題を避けたがる傾向があるように思えてなりません。そのため、政策を評価したり批判したりするにしても、どうも感情的、感覚的な話に終始してしまっているように感じます。
だからこそ、数字と直面してほしいと思うのです。その際、「@変換」はとても大きな武器になるはずです。