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相手を気持ちよく納得させ、いい結果を導く“説明”

小宮一慶(経営コンサルタント)

2012年06月14日 公開 2022年12月27日 更新

相手を気持ちよく納得させ、いい結果を導く“説明”

会社員であれば多くの人が経験するプレゼンテーション。上手くいかず頭を抱えることもあるのではないか。経営コンサルタントの小宮一慶氏は、プレゼンの最初の10分間で説明の全体像、概略を伝えられるようにしておくべきだと語る。

その説明の手法や、準備しておくべきことについて詳細に紹介する。

※小宮一慶 著『一番役立つ!ロジカルシンキング』(PHPビジネス新書)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

最初の10分で概略を説明できるようにする

プレゼンテーションに臨むにあたっては、事前にその流れを自分のなかで論理的に組み立てておかなければなりません。しかし、相手が非常に忙しい人などの場合は、いくら論理が緻密に積み上げられていて分かりやすくとも、長時間の説明にはイライラすることでしょう。

そこで、プレゼンテーションでは、最初の10分間で説明の全体像、概略を伝えられるようにしておくべきです。

本当に忙しい人というのは、場合によっては途中で抜けなければならないこともありますし、ほかの突発的な用事が入ってくることもあります。ですから、最初の10分間で、資料1枚程度にまとめた概略を説明するのです。

10分間であれば、どんな人でも長いとは感じません。資料1枚にまとめて、10分間で伝えきるトレーニングをすることをお薦めします。

10分間で伝えられることは、あくまでも概略にすぎません。当然、相手のなかにはいくつも疑問が浮かぶはずです。そこで、その疑問に答えるという形で、あるいは補足で1つひとつを説明するのです。つまり、説明にも、段階的な階層構造を入れるということです。

具体的には、ステップ1で結論とその根拠などの概略、ステップ2で概略のすぐ下にくる大きな柱、ステップ3でその大きな柱のなかの項目といったようになります。

とにかく、最初の10分間は、結論とその根拠の概略を説明することだけに集中します。新聞の見出しと数行のリード文のようなものと考えてもらえば分かりやすいかもしれません。それで全体像が見えれば、相手も安心するわけです。

例えば、「マレーシアに進出する」というのが結論であれば、まず「マレーシアに進出することを提案したいと思います」と結論を言って、その根拠の概略を10分間の説明のなかに入れこんでしまいます。

もちろん、10分間しかありませんから、細かいところまで、すべてを説明することはできません。そこで、ステップ2でそれぞれについてくわしくお話ししていきます、とするのです。

このように進めれば、何らかの事情で途中退席したとしても、相手は結論を理解してくれます。資料をきちんと用意しておけば、くわしいことは、あとでお読みくださいということですませられるかもしれません。

ただし、1つ気をつけてください。10分間の説明であっても、論理的にしっかり組み立てられたものでなければなりません。論理的におかしなところがあれば、途端に相手はプレゼンテーションそのものや、それによって導き出される結論に、不信感、不安を抱くことでしょう。

したがって、10分間の説明においては、論理的な整合性に注意を払い、より深い部分の説明に関してはステップ2に任せれば良いということになります。

 

嘘をつかない

人に説明するときには、相手が反論できない、しにくい、相手が納得しやすいことをしっかりと話すことが大事です。

例えば、日本経済に閉塞感があるということは、誰もが否定しにくいことです。そうした事実をきちんと積み重ねていかなければなりません。

 「だから、海外進出をするべきです」
 「海外進出をしたほうが良いと思います」
 と話を持っていけば、相手は逃げられなくなります。

そうはいっても、「本当に大丈夫なのか」という意見は必ずと言っていいほど出てきます。もちろん絶対に大丈夫などということはありませんから、進出した同業他社などの成功例や失敗例、それぞれの確率などが分かる資料をきちんとそろえておくべきです。

ここで気をつけなければならないことは、絶対に嘘をつかないようにするということです。

「過去、70パーセント程度の企業が成功しています」
「成功した企業のリターンはこれぐらいの数字です」
というように、必ず事実を伝えるようにします。

官僚や政治家がよくやるような、こじつけの数字を持ち出してくるのは厳禁です。なぜなら、プロジェクトを実現させたいがために、都合の良いデータをひっぱりだしてくると、あとでひどいしっぺ返しをくらうこともあるからです。

現に、今、年金がたいへんなことになっているのは、10年前、15年前の非常に甘い人口推計を使ったからです。当時、国民を納得させるには、そのほうが都合が良かったからだと思いますが、見こみ通りになっていないことは明らかでしょう。

自分に都合の良い前提で話をしていると、相手の論理的思考力が高い場合、そこで疑義をはさまれて、相手はすべてに対して疑いを持つようになります。

前にも述べましたが、特に、日本人は、「この人が言うことは、確からしい」「あいつの言うことは信じられない」といったように、話の内容よりも、誰が言ったかで判断する傾向があります。

1つでも「こいつの言っていることは嘘だ」と思われたら、それ以降のほかのことすべてについて、疑わしいと思われてしまうのです。こんな状態では、当然、相手は納得しません。

 

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