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パワハラの境界線はどこ? 若手が望む「上司の厳しい指導」とは

加藤芳久(株式会社ファイブベイ取締役・副社長 )

2023年08月29日 公開

 

相手の許可を取ってから改善案を伝える

②改善のフィードバック

承認のフィードバックをしてから改善のフィードバックをします。

改善のフィードバックは相手に「気になったことがあるんだけど、アドバイスしていいかな?」と許可を取ってから伝えるのがポイントです。許可もないのにアドバイスをしたら、単なる小言になってしまいます。

そして、短く伝えること。小一時間も問い詰めてしまったらパワハラのようなものなので、「その場で短く」を心がけましょう。

承認までなら、相手も喜んで聞きますが、改善は相手にとって耳が痛い話になります。そのため、ここから成長する人と成長しない人とに分かれます。

成長する人は自分のどこに問題があったのかを素直に受け入れて、次回に同じ失敗を繰り返さないようにします。

成長しない人は、自分に問題があることを認めません。反論したり、反発したり、抵抗を示してアドバイスを受け入れようとしないのです。

ここで、「そういう人、うちの部下にもいるいる」で終わらせないように。成長しない人に手を差し伸べるのがリーダーの役割です。

「自分には問題なかったと思うのはどうして?」「何か一つでも改善できるところはない?」と掘り下げていくと、「何か、自分が仕事ができないヤツのように思われたくなくて」のように、本音が出てきたりします。

なかには、それでも心の痛みを拒絶する人もいます。

そういう場合は、「これはあなたが成長するチャンスだよ。成長には痛みを伴うから、筋肉と一緒なんだよ。心にもメンタルマッスルというのがあって、心の筋肉痛が起きないと心は成長しないんだ」と伝えます。

すると、そのときは受け入れられなくても、何かの拍子に「あのときは、やっぱり自分に問題があったな」と思えるようになるものです。

 

部下の成長を上司がどこまで手助けできるかがカギ

改善のフィードバックにもマジックワードはあります。

それは「〇〇さんらしくないね」の一言。

これは相手のことを認めたうえで、「もっとできるよね」と暗に求めている言葉です。この一言を言われたら、「あっ、認めてもらえてるんだ」「そっか、確かに自分らしくない行動だったかも」と相手は厳しい意見でも受け止められるようになります。

逆に、NGワードは「なんでできなかったの?」とネガティブな聞き方をすること。

「どうすればよくなると思う?」という聞き方に変えれば、途端に未来に意識が向きます。私はこういう質問を「未来質問」と呼んでいます。人は自分で発見したものは忘れません。だから相手が発見するように導くのが最上のリーダーです。

人を育てるのは、本当に大変です。

リーダーは「ここまでしないといけないのか?」と何度もくじけそうになるでしょう。それでも、部下が成長した姿を見たら、きっと「やってよかった」と思う日が来るはずです。

禅宗の教えで「啐啄同時(そったくどうじ)」という言葉があります。これは、卵の中のヒナが殻を破って外に出ようと卵をつついているとき、親鳥も外側から卵をつついて手助けをすることを意味しています。

啐啄同時は「またとない好機」という意味もあります。つまり、部下が成長できる好機に上司がどこまで手助けできるかがカギなのです。

まずは部下が自分の殻を破れる日を待つこと。殻を破るのはリーダーではなく部下自身です。そのうえで、殻を破るタイミングでリーダーがフィードバックしたら、部下は見事に成長できるでしょう。

上司は部下の成長を諦めずに、卵の外でねばり強く待って欲しいと思います。

 

【加藤芳久 (かとう・よしひさ) 】
株式会社ファイブベイ 取締役 副社長 。情報経営イノベーション専門職大学 客員教授 リーダー育成と組織変革を得意とする経営コンサルタント。情報経営イノベーション専門職大学客員教授。 大学卒業後、大手旅行会社、コンサルティング会社を経て、2016年に株式会社加藤経営を設立。日本ハム、三井ホームなどの大手企業を中心に、これまで200社以上に対して人財育成の体系化・組織風土変革を支援。台湾、シンガポールなど海外にも活躍の場を広げている。 2022年には、株式会社ファイブベイ(FiveVai)設立、取締役副社長兼CHO(チーフハピネスオフィサー)に就任。著書に『売上を追わずに結果を出すリーダーが見つけた20の法則』(かんき出版)などがある。

 

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