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生き方

ドタキャンされても怒らない...「イライラに振り回されない人」の一つの習慣

井上裕之(歯学博士)

2023年12月26日 公開

ドタキャンされても怒らない...「イライラに振り回されない人」の一つの習慣

職場での部下のミスや、礼儀を欠いた知人の態度...仕方ないと思いつつも、つい頭に血が上ってしまったという経験はありませんか? そうしたイライラに振り回されず、心地よく生きるにはどうしたらいいのでしょうか? 井上裕之さんが幸せに生きるための3つの習慣を紹介します。

※本稿は、井上裕之著「なぜかすべてうまくいく 1%の人だけが実行している45の習慣」(PHP文庫)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

怒りはソントクで抑え込む

「一瞬、怒りを爆発させてしまったばかりに、これまでうまくいっていた人間関係を台無しにしてしまった」

誰でも一度や二度は、そんな経験があるのではないでしょうか。

実は、私は、滅多なことでは怒りません。怒らないと決めてしまっているからです。もちろん、怒りの種がないわけではありません。交通渋滞に巻き込まれればイラッとするし、スタッフに対して、言いたいことがある場合もあります。相談者のなかにも、まれにですが、突然アポをキャンセルする人や、連絡なしで大幅に遅刻する人もいます。

でも、そんなときも怒りません。

怒りはすさまじい破壊力を持つ感情で、ひとたび怒りを点火させてしまうと、人間関係、信頼感、仕事の評価など、それまで積み上げてきたものいっさいが崩壊してしまうことがよくあります。ゼロベースに戻るならまだしも、すべてが崩れて一気にマイナスに転化してしまうことさえあるのです。

そうは言っても、怒りは人が根源的に持つ感情の一つです。古来、宗教者などが厳しい自己修練を重ねた目的の一つは怒りをコントロールする技を身につけるためだったと言われているくらいです。

宗教的な修行をしたわけでも、解脱したわけでもない私がなぜ、滅多に怒らないか。実は、私はもっと人間的な方法で怒りと向かい合い、怒りに打ち勝つ方法を見つけているからです。

「どっちがトクか、考えてみよう」。つまり、怒ってしまった場合と、怒りを抑え込んだ場合とどっちがトクか。自問するのです。

他者の幸せを第一義に考える利他主義的な考え方は崇高で、尊敬すべきものだと言えるでしょう。でも、人間の本性を深く掘り下げていくと、行き着く先は自利。自利の発展形として利他があり、自利と利他は分かちがたい関係にある。私はこう考えています。

怒りの最大の損失は激しい自己嫌悪感情に襲われることでしょう。自分が嫌いになることほどつらいことはありません。自己嫌悪は人生を前向きに生きていこうという気力まで奪ってしまいます。いったん気力を失うと、そこから復活するにはものすごいエネルギーが必要になります。

こうして考えると、イラついたり、ムカッときてもぐいとブレーキを踏み込み、怒りを抑えてしまうほうがずっといいと思うようになり、自然に、滅多に怒らない自分になれるのです。

怒りの火種は多くの場合、立場の違いからくる見解の相違がほとんどです。頭を冷やして客観的に全体を見回すと、「なるほど、そういう考え方もあるだろうな」と相手の立場や気持ちが見えてきます。こうなれば調整点も見えてくるので問題はもう解決したようなもの。怒りを爆発させさえしなければ、調整はいくらでもできるのです。

「負けて勝つ」。これもうまい怒りの対処法です。ここのところは相手の言い分を受け入れる。ただし、これはビジネスだから譲るのだとしっかり認識する。

譲歩は敗北でも、自己欺瞞でもありません。感情の波に翻弄されることなく、そのときどきでいちばんよい解決法を選べる人こそ、怒りを超越した、器の大きな人間と言えるでしょう。

滅多に怒らない人間になると自己評価も高くなり、自分に対して誇りまで持てるようになります。これも、かなりおトクです。

 

行間まで聞く気持ちで聞く

コミュニケーション上手になる秘訣は、相手の話をひたすら聞くこと。

「そんなことはもう何回となく聞いています」という声も聞こえてくるようです。おっしゃるとおり、何度となく聞いていながら、多くの人がコミュニケーションに自信を持てないでいるのが実情だと言ってよいでしょう。

「聞く」ことは、簡単に見えて、実は相当にむずかしいことなのですね。人間には誰にでも、自分を主張したい、自分を分かってほしいという、本能と言ってもいい気持ちがあるものです。

「聞く」ことよりも「話したくなる」気持ちが先んじてしまうのも、この本能を考えれば、いわば自然なことだと言えます。

私も、コーチングを始めたころは、相手のお話を十分聞いているつもりなのに、録音を聞き返すと、「まだまだ聞き足りなかった」「相手はもっと話したかったんだ」と気がつくことがよくありました。

そこで最近は、コーチングのように一対一で向かい合ってお話しするときには、相手の話が終わるまで、できるだけ黙って"聞く"ことに徹するようにしています。

人は話しながら考えを整理していくことがよくあります。全部話し終わるまでできるだけ口をはさまないようにしているのはそれを妨げないため。コーチングの役割は、心からの愛情を込めて相手が思いを整理する行程を見守ることだと、私は考えています。

もう一つ、大事な役割は、相手が言葉にできない、言葉と言葉の間にある思いを感じ取ること。行間の思いを感じ取るように聞くことです。

一緒になって話し込むのではなく、黙って聞くことに徹していると、こちらにも余裕が生まれ、そのうちに、相手の言葉にはなっていないけれど、本当はこれを言いたいのだなという"行間の言葉"が聞けるようになっていくものです。これは、ふだんの会話でも、きっと応用できると思います。

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抱きしめるように、相手のすべてを受け入れる

著者紹介

井上裕之(いのうえ・ひろゆき)

歯学博士/経営学博士

医療法人社団いのうえ歯科医院理事長。東京歯科大学大学院修了後、ニューヨーク大学に留学。国内外で研鑽を積み、故郷の北海道・帯広で開業。『たった“ひと言”の影響力』(フォレスト出版)、『好かれる人がやっている 人を惹きつける習慣』(すばる舎)など、著書を86冊出版。累計140万部を突破。

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