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生き方

脳科学者が分析する「運がいい人」の2つの特徴

中野信子(医学博士)

2023年10月27日 公開

 

運を生かせる人の共通点

生まれ持った運、途中で舞い込んでくる運......。ここまでに説明してきたように、人生にはさまざまな運がありますが、具体的に、運を生かし、「幸運」に恵まれるのは、どのような人なのでしょうか。そこには2つの共通点があります。

・自分の目標に向けて努力している

特定の境遇に置かれたとき、それを幸運とするか不運とするかは、人によって違います。たとえば、野球をしている人が大谷翔平選手と対戦するとなったとき、普段から「誰にも打たれない球を投げられるように」と練習に取り組んできたなら「力を試すチャンスだ!」と思うでしょう。

でも、自分で納得できるほど努力をしていない人は、「大谷選手に当たるなんて、絶対負ける。運が悪い」と思うかもしれません。「自分はこうなりたい」と心から望み、できることを精一杯やっているか。そう振り返ってみることが、運をよくすることの第一歩なのです。

・新しいものを受け入れる習慣がある

「運がいい人」を思い浮かべるとき、彼らに共通しているのは、「新しい人や物、やり方を排除しない」ということ。心理学の研究からも「配慮範囲が広い人ほど運がいい」ということが明らかになっています。

自分のことだけでなく家族や友人、さらには他人や社会全体の将来についてまで配慮できる人は、結果として、よい人間関係を築くことができ、それが運のよさにつながるということのようです。

つまり、運に恵まれた人生を送るためには、自分自身の考えや目先の利益に固執せず、広い視野を持ち、多くのものを受け入れることが大切だと言えるでしょう。

 

「運」に振り回される前に知っておいてほしいこと

一般的に「成功者」とされる人が、「自分は運がよかっただけです」と言うのを耳にしたことはありませんか? 私は、このセリフには2つの目的があると思っています。

1つは、「自分の成功は運がよかっただけ」と謙遜することで、他人から妬まれるのを防止する目的。「運のせい」と言われれば、誰も何も言えないですからね。

もう1つは、後ろから追いかけてこようとする人の足元に投げるバナナの皮。つまり、自分の成功は努力の賜物であり、そんなに簡単に手の内を明かせるものではないぞということ。

成功者のみなさんの真意はわかりませんが、いずれにせよ、運のよさというのは、その人の努力や工夫があってこそ、もたらされるものだと思うのです。彼らが語る「運がよかっただけ」という言葉を鵜呑みにせず、その裏にある汗と涙を読み取って、そこから学びを得られる人のところに、幸運は訪れるのではないでしょうか。

ちなみに私自身は、「運がいい」です。東大に受かったのも、受験会場で昼休みに復習した過去問が実際の試験に出たから。「私、なんてラッキーなの!」と思いました(笑)。

でも、それだって裏を返せば、日頃から勉強に励み、当日の休み時間まで粘り強く問題を見ていたからこそ。やはり、幸運を掴つかむには、相応の努力が必要なのです。

 

著者紹介

中野信子(なかの・のぶこ)

脳科学者

1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所に博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。現在、東日本国際大学教授。

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