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生き方

パーフェクトでなくていい。80パーセントでいいじゃないか。

斎藤茂太(精神科医/随筆家)

2011年01月27日 公開 2022年09月28日 更新

 

「80パーセント」で自分の事が好きになる

今まで順調に進展していたものごとが、急に停滞してしまうということは、長い人生の中ではよくあることだ。こういう状態を、「スランプ」と呼ぶ人もいる。

スランプという言葉は、ちょっと調子が悪いといったぐらいの意味合いに使われるが、大きなノルマを抱えた営業マン、プロのスポーツ選手など、仕事の結果がダイレクトに数字に表されてしまうような場合、ことは深刻になる。

私の立場から、スランプの脱出法をあえて一言でいうとしたら、「堪(こら)える」「気分転換」の二つに尽きる。以前、巨人軍の監督だったときの王貞治さんと対談したことがある。

そのとき私は、「ホームランを打つときは、打とうと思って打つのですか? それとも自然と打てるものなのですか?」と聞いた。すると王さんは、「打とうと思うとボールが見えなくなるんですよ」と、淡々とした口調で言った。

現役時代に、ここでどうしてもホームランの一発が欲しいというような場面を何度も経験した王さん。球場にいるほとんどすべての人が、ホームランに期待する。

そこで気負って、ホームランだけに狙いを定めると、途端にボールが見えなくなり、ホームランはおろか、凡打になってしまう。むしろ、ヒットでもいいというぐらいのゆとりを持ってバッターボックスに向かったときに、ホームランになることが多かったという。

王さんは、スランプの脱出法についても同じようなことがいえると言った。何度かスランプに陥った経験から、焦らないで、少しずつもとに戻れればいいというぐらいの気持ちが持てたときが、一番立ち直りが早かったということだ。

パーフェクトを望めば、無理が出るものだ。心に余計な負担がかかるからである。いついかなるときでも、「80パーセントもできれば上出来」という気持ちでことに当たれば、思いのほかいい結果が出るものである。

 

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