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自分の仕事は10年後どうなる? 「成長する業界・衰退する業界」を見抜く方法

グロービス経営大学院

2024年12月17日 公開

自分の仕事は10年後どうなる? 「成長する業界・衰退する業界」を見抜く方法

成長する業界と、衰退する業界...どちらになるか見抜くには? 本稿では、市場規模、トレンド、専門家の予測という、業界の成長性を見極めるための3つの基本的な視点について、書籍『ビジネススクールで教えている武器としてのAI×TECHスキル』より解説します。

※本稿は、グロービス経営大学院『ビジネススクールで教えている武器としてのAI×TECHスキル』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。

 

成長/衰退する業界を見分ける「基本のキ」

グロービス

まず一般論として、「基本のキ」とも言える3つの視点について解説します。

第1は実際の市場規模の成長率を見ることです。たとえば最近5年から10年、もしくはそれ以上のスパンで市場規模が成長/衰退している場合、そのトレンドは続くことが多いと言えます。たとえばファクシミリやフィーチャーフォン(ガラケー)の市場が今後伸びることは考えにくいでしょう。

ただ、これは衰退産業を見極めるうえでは効果的ですが、成長産業を見極める場合は落とし穴があることがあります。

たとえばGoogle Glassに代表されるウェアラブルは、一時期は成長しましたが、高価な価格や限定的な機能などが理由となって成長しきれていません。10年ほど前に各社がこぞって出した3Dテレビなども多くのメーカーが撤退してしまいました。これらは、ハードルさえ解消されればまた成長モードに入っていくと思われますが、ある技術がいつ市場に一定レベル浸透するか、そのタイミングを正確に知ることは容易ではないのです。

さらに言えば、いつ急に特定の技術の衰退期がやってくるかを正確に見極めるのも容易ではありません。たとえばポケットベルは、携帯電話の低額化によって、予想以上に一気に衰退期を迎え、現在ではほぼ消えてしまいました。パスワードによる認証などもそのうち衰退すると言われてはいますが、その時期を正確に読むのは容易ではありません。

第2は、不可避のトレンドや既定の路線を知ることです。

たとえば日本の少子高齢化は今後も続く可能性が圧倒的に高いと言っていいでしょう。それに関連する産業、たとえば高齢者向けサービスが伸びるのはまず間違いありません。

あるいは、半導体の性能に関する「ムーアの法則」(半導体の集積率は18カ月で2倍になるという経験則)は、あと十数年は続くでしょう。それゆえ、半導体メーカーのみならずその製造装置企業なども、ムーアの法則をコンセンサスとして共有しつつロードマップを描き、時には協業しながら技術開発や投資を行っています。

数年後に通信の規格が5Gから6Gになることも既定路線です。6Gゆえに実現するビジネスも成長が期待されます。気候変動に対応するための温暖化ガスの削減なども、世界レベルで目標が立てられています。これらはスケジュールが国や関連団体を巻き込んで公式・半公式にある程度示されているため、比較的予想も立てやすいです。ぜひ自社に関係がありそうな重要なロードマップやマイルストーンなどは知っておきましょう。

第3に、一般のビジネスパーソンにとっては、専門家の予測も非常に参考になります。

たとえば官庁や大手の総合研究所、コンサルティングファームなどが出しているレポートは比較的信頼性が高いです。ただし、レポートの作成者が自らのビジネスを拡大するためのマーケティングツールにしたり、官庁が予算獲得のために作成したりしているという側面もあります。信頼度の高いレポートであっても、作成者の意図を理解しておくことが必要です。

 

海外に学ぶ

日本企業の場合、海外の動向を調査することも非常に有効です。もともと日本には「タイムマシン経営」という言葉がありました。欧米で流行っているものは、そのうち日本にも導入されるという発想です。コンビニエンスストアやピザのデリバリー、宅配便などもすべて海外で先行したビジネスです。

ITビジネスにおいてはアメリカや中国が先行しがちであり、そこでの先行事例を見ておくことが有効です。特にユニコーン(設立10年以内で時価総額10億ドル以上の未上場ベンチャー企業)やデカコーン(設立10年以内で時価総額100億ドル以上の未上場ベンチャー企業)を調べることは、これから伸びる業界のヒントを得られるとともに、新事業のヒントともなります。

たとえば日本のECサイト作成プラットフォームのBASEは、Shopifyのビジネスモデルを参考にしていると思われます。少子高齢化や地球温暖化、交通といった、ヨーロッパが日本と似たような課題を抱えている分野においては、アメリカよりもヨーロッパの事例の方が参考になるかもしれません。

こうした先行事例の調査は、検索で行うことも可能です。導入期の技術の場合、ベンチャーキャピタル(VC)、特にシリコンバレーの著名なVCや、MAAMAなどの大手IT企業がどのような技術テーマに投資をしたり、どのような企業を買収したりしているかの情報を知ることも効果的です。そうした技術は、数年後に大きく化ける可能性があります。

たとえば昨今ではAI関連はもちろん、ディープテック(ロボティクスや材料科学など、より物理化学領域のテクノロジーの比重が高い分野)やSDGs関連の課題をITの力で解決しようとする分野への投資、あるいはエッジコンピューティング(演算をクラウド上などではなく、センサーなどデータの発生源に近い場所で行う技術)への投資などが増えています。メタバース関連なども当然投資が増えています。

ただし、VCや大手IT企業は「外れるかもしれないが、当たった際にリターンが巨大だから」あるいは「ライバルも投資を大きくしているから(ライバルの後手に回るとまずいから)」という理由で、決して確度が高くない案件にも投資を行うことがあります。それゆえ、往々にして一過性の投資ブームで終わることもあるという点には注意が必要です。

 

著者紹介

グロービス経営大学院(ぐろーびすけいえいだいがくいん)

社会に創造と変革をもたらすビジネスリーダーを育成するとともに、グロービスがさまざまな活動を通じて蓄積した知見に基づく、実践的な経営ノウハウの研究・開発・発信を行っている。
https://mba.globis.ac.jp/

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