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ドコモの参入で注目の「銀行ビジネス」 そもそも信用金庫・信用組合との違いって何?

菊地敏明(金融エディター)

2025年10月24日 公開

ドコモの参入で注目の「銀行ビジネス」 そもそも信用金庫・信用組合との違いって何?

2025年10月、NTTドコモが住信SBIネット銀行を子会社化しました。大手通信会社ではすでにau、ソフトバンクもグループに銀行を抱えていますから、異業種からの参入は珍しくなくなってきているものの、銀行ビジネス が今まさに過渡期にあるのは明らかです。 そうした変化の原動力となっているのが例えば 「フィンテック」であり、さらに10年も経てば、銀行は現在と全く異なるものになってい るのかもしれません。

本稿では、銀行ビジネスの基本「そもそも銀行と信用金庫、信用組合の違いとは?」について、金融エディターの菊地敏明氏の書籍『銀行ビジネス』より解説します。

※本稿は、菊地敏明著『銀行ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

銀行であって銀行でない信金・信組

皆さんの自宅の近所にも、信用金庫や信用組合があるのではないでしょうか。略称である信金、信組のほうが、耳なじみがあるかもしれませんね。何といっても信金は全国に254、信組は143もあり(2024年3月末時点)、地銀と第二地銀行を合わせた数よりもはるかに多いわけですから、最も身近な金融機関の1つだといっていいでしょう。

ただし金融機関とはいっても、信金・信組は銀行法の規定による免許を受けた「銀行」ではありません。けれども、銀行の3大業務といわれる「預金」「貸出」「為替」を行っているため、「広い意味での銀行」として捉えられる場合が多いのです。

では、何が違うのかといえば、都市銀行や地方銀行などの根拠法が「銀行法」なのに対し、信金は「信用金庫法」、信組が「中小企業等協同組合法・協同組合による金融事業に関する法律(協金法)」となっています。また、都市銀行や地方銀行などが株式会社なのに対して、信金は会員の出資による協同組織、信組は組合員の出資による協同組織であり、いずれも非営利法人です。

この会員・組合員には資格があり、会員・組合員になるにはそれぞれの地区内に居住、または勤務しているなどの条件があります。法人や団体などの事業者の場合も、その地区内に事業所を有するといった制限が設けられ、従業員数や資本金などにも条件があるため、対象は基本的に中小企業となります。また、信金の場合、預金は会員以外でも対象となりますが、融資については信金・信組ともに原則として会員・組合員に限定されます。

このように、会員・組合員には条件があり、そもそも定款に「地区」を自ら定めなければならないため、信金・信組は営業エリアが制限されているのが特徴です。他方、同じく地域密着のイメージがある地方銀行には営業エリアの制限はなく、どちらかといえば効率の観点からエリアを絞っているという面が強そうです。つまり、信金・信組は地方銀行以上に地域に密着し、主に地域の中小企業を対象にした金融機関であるわけです。

 

その数は減る一方で、増してきた存在感

もっとも、営業エリアが限られているということは、言い方を変えるとその地域からは逃げられないことになります。「失われた20年」とも「失われた30年」ともいわれてきた中で地域経済は厳しさを増し、シャッター通りに象徴されるように、信金・信組の主要な顧客である中小企業や個人事業主は苦境に立たされてきました。当然のことながら、信金・信組もその影響をダイレクトに受け、2004年3月末時点の信用金庫数は306、信用組合数は181だったのに対し、前述の通り2024年3月末時点が信金254、信組143ですから、この20年だけでも再編によって数が大きく減少していることがわかります。

ただし一方で、帝国データバンクが2023年10月末時点の企業概要データベースをもとに行った「全国企業『メインバンク』動向調査(2023)」によると、信金をメインバンクとする企業のシェアは5年連続で拡大しています。信組についても、貸出金が2018年3月末時点の約11兆円から2024年3月末時点には14兆円にまで増加しているなど、特にここ数年は前向きなデータも見受けられるのです。

その背景には、私たちの生活に大きな影響を与えたコロナ禍という未曽有の危機があります。コロナ禍で疲弊した中小企業などに対し、政府は実質無利子・無担保で融資を行う、いわゆる「ゼロゼロ融資」を打ち出しましたが、その担い手として、信金・信組が存在感を増してきたわけです。

さらに信金には信金中央金庫、信組には全国信用協同組合連合会という系統中央機関と呼ばれる組織があります。それぞれのいわば中央銀行の役割を果たしていて、資金を運用したり、コンサルティングを提供したりと、さまざまなサポートを行っているのです。都市銀行や地方銀行にはない、この系統中央機関という存在も、信金・信組の強みの1つになっています。

「地方創生」が叫ばれ、地域経済の活性化が喫緊の課題になっている日本。そうした中で、地域の中小企業、住民を支える信用金庫、信用組合の役割は、ますます重要になっていくはずです。

 

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