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失敗しない単身赴任マニュアル <夕食の裏ワザ編 >

大庭夏男(電子コラムニスト/「単身赴任の達人」)

2013年02月26日 公開 2022年12月08日 更新

<著者からのメッセージ>

単身赴任生活の充実のために 大庭夏男

ある日突然、会社の上司から勤務地変更を伴う異動を命じられました。このような出来事はおそらく誰の身にも起こり得ますが、そう言い渡されたら心穏やかにはいられない気持ちになるでしょう。できれば家族一緒に新しい赴任先で暮らしたいけれど、新築したばかりの自宅があり、「転校してもいいか」と聞いたときの子供の泣き顔を思い出し、せっかくご近所さんと仲良くなれた妻の気持ちを考えると、重たい気分をふりきって単身赴任を選ぶこともあるでしょう。私も最初の単身赴任はそうでした。

会社勤めの目的はいくつもありますが、そのなかでもウェイトの大きな「会社から給料を受け取って家族の生活を続けられるようにすること」という目的があります。しかし、じつは単身赴任生活を開始すると、これが不安になる可能性が出てきます。単身赴任が決まると会社は手当を支給し、ざらに月1回程度は遠く離れた自宅に帰る旅費も出してくれるでしょう。贅沢をしなければ生活費は何とかなりそうです。しかし、帰省が月に1度では寂しくなって、自費で帰ることもしばしばです。

一方、妻や子供のいる自宅の生活費は、お父さんが別に住むのだから、その分浮くだろうと思っていたら、ほんのちょっとしか減りません。さらに単身赴任手当や帰省旅費補助で収入が上がった分、税と社会保険料も増額され、単身赴任生活で出費も給与からの天引き額も増えて、家計が苦しくなってしまいがちなのです。

「会社の方針に従って頑張って単身赴任しよう」とせっかく決意したのに、結果は家計が苦しくなるのでは困ってしまいます。これを何とかするためには、生活を切り詰めるという発想だけでなく、住む場所や暮らし方全体にわたって、良い考えを盛り込んでいかなければなりません。本書では部屋選びの留意点や節約生活のコツを披露します。

お金以外では「会社は自分の夢を実現させるための場所」であるし、「同僚や関連会社などの知人と、ビジネスを通じて会社生活を楽しむ」という目的もあるでしょう。これらは単身赴任をすると、より積極的に取り組みやすくなります。その理由は、自宅通勤より会社の仕事を優先して柔軟な働き方ができるからです。夜遅い帰宅でも、部屋で仕事をしていても、家庭生活に及ぼす影響はありませんから、思いきって仕事に打ち込むことが可能になります。しかしそのかげで、自宅に残された家族とのコミュニケーションは薄くなり、その弊害が出ることもあります。また家族から離れて暮らすことで、自分や家族の一大事にすぐ対応できないというリスクも芽生えているのです。

それらは目に見えるようになるまで気づきません。本書では、私の経験などなどから知り得た単身赴任生活のリスクと対処方法も解説します。

もうひとつ、単身赴任生活は、誰にも文句をいわれない自分だけの部屋をもつという滅多にないチャンスがあることも忘れてはなりません。ここを拠点に、いままで自分がやりたかった「夢」を実現できる可能性が生まれたのです。

自分の夢は、会社の仕事を通して叶えられるものもあります。さらにもうひとつ、会社の仕事以外の夢を醸成させるための作業場が単身赴任で生まれました。このチャンスを見逃す手はありません。これを活かすためには、どうやって可能なかぎり忙しい会社勤めの生活をやりくりし、自分の自由時間を稼ぎ出すかが勝負になります。

単身赴任者の多くはバリバリのビジネスマンなので、ふだんの会社の仕事は忙しいです。その忙しい時間を何とか割いて、自分のための時間をつくりだす方法を、私は試行錯誤してきました。その多くを本書に列挙しましたが、一見して滑稽に見えるかもしれません。しかしどれも創意工夫しながら大まじめに試行錯誤した結果、忙しいながらも会社と自分の生活を両立させる方法だと自信をもって紹介いたします。

各項目は単身赴任生活のハウツーとしても読めるように書きましたが、ご自身の場合に照らし合わせて、そのまま参考になる場合のほかに、書かれた内容から連想してご自身流の新たなやり方を発見するようにお読みいただければ幸いです。

手にとって読んでくださった方々の単身赴任生活が上手く進むことを願っております。

 

大庭夏男

(おおにわ・なつお)

本名:松尾俊介。1958年、東京都生まれ。日本大学理工学部卒業。自動車メーカーに入社後、結婚して京都市に定住。生産技術や開発部門など技術職に専念するも、突然に労働組合執行役員に推薦され、本部役員就任のため初回2年間の単身赴任を行う。労組役員から会社へ復帰したのち、勤める会社の外資提携を機会ととらえ、外国人駐在社員が多く働くIT部門へ異動を志願。2回目3年間の東京での単身赴任を開始し、業務プロセス改善の担当マネージャーを経て独立。東京でコンサルタント業を開業。外国人社員と日本人社員間のコミュニケーションの橋渡しや、新たな業務手順などを社員へ教育・説明する仕事を始めるが、この仕事をきっかけに外資系IT企業にスカウトされ、東京で再就職となる。それら一連の仕事のため3回目4年間の単身赴任を行い、通算の単身赴任期間は9年間となる。その後、会社を51歳で早期退職。「仕事と収入のある自由な生活」を実践すべく、アーリーセミリタイヤメントとしてライフスタイル関連の執筆活動を開始する。主な著書に、本名で出版した『「君は明日から単身赴任だ!」と言われた時、読む本』(文芸社)がある。

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