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ケンブリッジ大学の学生はどう休む? 世界最高峰の学びを支える「休暇の過ごし方」

飯田史也(ケンブリッジ大学工学部教授)

2026年03月26日 公開

ケンブリッジ大学の学生はどう休む? 世界最高峰の学びを支える「休暇の過ごし方」

ニュートンやダーウィンをはじめ、数々のノーベル賞受賞者や世界的リーダーを輩出してきたケンブリッジ大学。800年にわたり「学びとは何か」を追究してきた世界最高峰の教育機関です。

卓越した学びには、「休むこと」もまた重要です。ケンブリッジの学生たちは、どのように休暇を過ごしているのでしょうか。書籍『あなたの一生を支える 世界最高峰の学び』より、その実態を紹介します。

※本稿は飯田史也著『あなたの一生を支える 世界最高峰の学び』(日経BP)より一部を抜粋・再構成したものです。

 

障害にぶつかったとき、あるいはぶつからないための自由時間の活かし方

学びという無限ゲームの中では、スランプに陥ることは避けられません。しかし、そのような状況に直面したときにどのように立ち直り、学び続けることができるかが真価を問われる瞬間です。どのような状況に陥っても、しぶとく学びを続けられるセーフティーネットはいろいろな方法でつくることができます。

ここでは、どのように学びを意識した自由時間やリクリエーションを実現できるか考えてみましょう。ケンブリッジ大学でも、学生たちはとても多くの困難やストレスに見舞われるので、自由時間や余暇の過ごし方にも、とても気を使います。

 

・試験の後は充電期間に充てる

まず、一番大切なのが、大きな試験やストレスを感じる時期の後に充電期間を設定することです。どんな超人でも永遠にマラソンを走り続けることができませんし、充電期間が無ければ、いざというときに速く走れません。適当な充電期間は、「最高峰の学び」の一番大切な要素のひとつです。

 

・チームビルディングを意識したリクリエーション

一緒に気分転換を楽しめる仲間づくりも大切です。気の合う友人との自由時間は一番効果的な時間になります。

 

・あえて長期休暇を取って人生を俯瞰してみる

もし必要であれば、長期休暇を取るのも大切です。どうしてもスランプから抜け出せないときや、大きな迷いがあるときは思い切って長い休暇を取ることも必要です。

 

・新しいことに挑戦してみる

時間的、精神的に余裕があるときには、積極的に新しいことに挑戦してみましょう。新しい言語を学んだり、異分野体験をしたり、体を動かす活動に積極的に参加したり、自由研究などをしてみるのがよいでしょう。

特に、優秀で、本気の学生ほど、ひとつのことに集中しがちです。集中できるのはとても大切な能力ですが、障害にぶつかって、スランプに落ちいったときには、どこかに気分転換や、視点を変える方法を準備しておく必要があります。

 

ケンブリッジ、休みの過ごし方

ケンブリッジ大学の学生も教員も、いつも忙しく全速力で走り回っています。個人指導、宿題や予習復習に加え、フォーマルディナー、部活動や課外活動まで、「よくこれだけのことを1日24時間、週7日の中でこなせるものだ」と感心するほどです。

しかし、この嵐のような日々が1年中続いているわけではありません。

実際には、このような活動期は年間の半分ほどです。ケンブリッジは3学期制で、1学期は8週間と決まっています。つまり、1年間52週のうち、学期中の忙しい期間は24週間。残りの28週間は休暇期間、つまり自由時間です。なんと、1年の半分以上が休みというわけです。

内訳としては、冬休みが約7週間、春休みが約7週間、そして夏休みはおよそ14週間に及びます。長い休みがあるからこそ、学期中は全力で走り続けることができるとも言えますし、逆に、休みが長いからこそ、短期間に多くのことを詰め込む必要があるという側面もあります。この「学期中の集中」と「休暇中のゆとり」のコントラストもまた、ケンブリッジの学びを支える大きなしかけのひとつと言えます。

 

長期休暇中に学生は何をするのか?

では、この長い休みの間、学生たちはどのように過ごしているのでしょうか?

休暇中にやるべきことは大きく2つあります。

まずひとつ目は、しっかり休むことです。8週間の嵐のような学期を終えた学生たちは、文字通り疲れ切っています。

ほとんどの学生は、カレッジという"缶詰"の場から解放され、家族のもとへ戻ります。休みの最初の1、2週間は、実家で家族とゆっくり過ごし、心身を回復させます。

しかし大切なのはここからです。遅かれ早かれ、この心地よい自由時間から現実に戻り、再び勉強モードへ切り替えなければなりません。

楽しい休みから、自らの意志で勉強に戻るのは誰にとっても大変なことです。だからこそ、学生一人ひとりが自分なりの方法で勉強モードをつくり出すよう指導されます。

指導教官にとって重要な、「腕の見せ所」は、この「切り替え」の手助けです。学期末には、休みを前に浮き足立つ学生たちに、どうすれば休み期間中にスムーズに学びを再開できるかを話し合います。

具体的には、休み明けに模擬試験を用意し、そこに向けて学習計画を立てさせます。特に自制心が揺らぎがちな学生には、あらかじめ詳細な学習計画を立てさせて指導教官がチェックします。

多くの場合、学生の計画はあいまいで、「この辺で勉強を始める」といった漠然としたものになりがちです。そこで重要なのは、どれだけ具体的で、成果や進捗がわかる計画を立てさせるかという点です。

試験が控える冬休みや春休みは、十分な勉強時間が割り当てられますが、その一方で、試験が終わり、新学年に備える夏休みは少し様子が異なります。

夏休みには、できるだけ普段の生活とは異なる経験を積むことが奨励されています。長期の旅行に出かけたり、多くの学科では企業でのインターンシップやボランティア活動が義務づけられていたりします。

こうした勉強以外の活動も、厳しい学びのモチベーションを高め、その意味をより豊かにしてくれます。

夏休みは「学びの外」に飛び出す貴重な時間です。

 

プロフィール

飯田史也(いいだ・ふみや)

ケンブリッジ大学教授

1974年、東京生まれ。ケンブリッジ大学工学部教授、ケンブリッジ大学コーパスクリスティカレッジフェロー、東京大学大学院工学系研究科教授。理学博士。小中・高・大・院と日本で教育を受けたのちに海外留学生活を始める。2006年にスイス・チューリヒ大学博士課程修了後、ドイツ・イエナ大学と米国・マサチューセッツ工科大学で研究員、スイス連邦工科大学チューリヒ校の教員を経て2014年より現職。研究の専門分野はロボット工学で、スイスと英国で16年間教壇に立ち、200人以上の教え子を世界中に輩出してきた。

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