自分はどのような未来を願っていて、そのために何が必要なのか。自力では客観的に考えることが難しいこういった悩みも、マトリクス思考は明確に映し出す。本記事では、適切な転職判断を手助けする「転職判断マトリクス」のポイントを、書籍『マトリクス思考 2軸で切る、視える、決める』から紹介する。
※本稿は、グロービス経営大学院, 嶋田毅著『マトリクス思考 2軸で切る、視える、決める』(東洋経済新報社)より一部抜粋・編集したものです。
転職を検討する際に用いるマトリクス
転職は近年では特別なものではなくなりつつあり、目的も人それぞれです。待遇がより良い会社に行きたい、リモートワークができる環境が欲しい、キャリアアップなど、人によって求めるものは様々です。転職を検討する際に、今が転職のタイミングであるのかを客観的に判断するために、このマトリクスが活用できます。
このマトリクスは、転職を検討する際に関わる要素をマトリクスにプロットしたり新たに書き込むことで、現時点での転職の是非を客観的に判断するために使用します。このマトリクスを使うことで、自分自身の意識や志向の棚卸しができます。また、仕事に対して何を優先しているのかを改めて考え直すきっかけとしても役立ちます。
まずは今の会社について分析

横軸は「物理的・金銭的/心理的」、縦軸は「今の会社にないもの/あるもの」に設定しました。
「今の会社にないもの、あるもの」を思い浮かべ、それが「心理的」なものなのか、「物理的・金銭的」なものなのか判断しながらマトリクスに配置していきます。よく検討される項目は上記の図のようにあらかじめラベルとして用意しておくといいでしょう。もちろん、ゼロベースで考え書き込んでいく、あるいは両者を併用するという方法もあります。
最終的に「今の会社にないもの」に配置される項目が多い場合は、転職を本格的に検討するタイミングであることを示唆しています。逆に「今の会社にあるもの」に配置される項目が多い場合には、転職への判断をもう一度冷静になって考えるべきと言えます。
活用事例と留意点
具体的事例として製造業で働く、開発職30代男性の例を見てみましょう。
悩み事:数年前に部署異動があり、これまでとは違う分野を担当することになった。これまでの専門分野の知見が通用しない。一方で管理職登用の打診も受けている状態。
重視するポイント:今よりも上流工程の仕事を経験し、成長すること。
転職判断マトリクスにキーワードを埋めたところ、現在の待遇や地理的な条件は今の会社にもあり、比較的ワークライフバランスがとれていることがわかりました。ただし、心理的にはスキルマッチの点や組織との親和性において合致していないことから不安があるようです。
この結果を受けて、今すぐ転職を行うことはせず、現職でより上流工程の仕事ができるように自社でのキャリアアップを目指しつつ、一方で自身のキャリアアップにつながる転職案件がないかを継続してチェックしていくことにしました。
仕事をする上で、重視する項目は人それぞれです。そのため、このマトリクスで今の会社にないもののほうに項目が偏った場合であっても、すぐに転職に踏み切る必要はありません。このマトリクスを通して自分自身を俯瞰し、内省することで気付いていなかった重視ポイントに気付くことが大切です。また、転職ではなく、社内異動によるキャリアチェンジを目指すという方法も検討すべきです。
ちなみに転職理由の上位に来るものに「現在の人間関係の悪さ」がありますが、全員との関係が悪いということは稀なものです。人間は往々にして目の前の印象深い事柄に目を奪われがちなので、それも意識して客観的にプロットすると有効です。








