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「働く遺伝子をオン」にすれば、仕事が面白くなる!



2013年04月25日 公開

村上和雄 (筑波大学名誉教授)

《PHP文庫『そうだ、絶対うまくいく!』より》

常に働いている遺伝子は、ほんの2パーセント

 定年で会社を辞めたとき、「自分がいままで苦手で手を出せなかったものに挑戦する」と宣言して、絵とカラオケを習い始めた人がいました。

 何しろ、自他ともに認める音痴で、絵の宿題は、全部絵のうまい兄弟に頼んでいた人です。そのことを知る友人たちは、からかい半分で、その姿を見ていました。「まあ、やってごらんなさい」といったところだったのでしょう。

 ところが1年後、彼は、歌でも絵でも、決して上手とは言えないまでも、驚くほどの進歩を遂げ、周囲をびっくりさせたのでした。

 こういうとき、人は「人の可能性は無限のもの」と思うのかもしれません。

 しかし一方では、「カエルの子はカエル」で、それ以外のものにはなれないという事実もあります。つまり、人の能力や可能性は無限ではないという考え方です。

 確かに、遺伝子に書かれている情報には限りがありますから、そこに書かれている以上のことはできません。

 こんなことを言うと、自分の気に食わないところを、親からの遺伝のせいにする人がいるかもしれません。

 実際、「頭が悪いのは、お母さんのせいだ」「走るのが速いお父さんに似ればよかったのに、運動神経は、お母さんの遺伝子を受け継いでしまった」などと言った覚えのある人は、意外と多いのではないでしょうか。

 しかし、そういうふうに考えるのは、とんだお門違いです。

 人間の全DNAで常にたんぱく質をつくるために働いているのは、じつは2パーセント、多くても10パーセントにすぎません。つまり、細胞の中の全DNAは、30億もの膨大な遺伝情報を持ちながら、そのほとんどはオンになっていないのです。

 しかしごく最近、ヒトの全DNAのかなりの部分が働いているらしいことがわかりだしました。DNAの未知の機能が見つかるかもしれません。

 一方、大腸菌などの下等生物の場合は、オフ部分はきわめて少なく、ほとんど全開状態で活動しています。一般的に、高等動物になるほど、オフ部分が増えます。そういう意味で、人はもっともオフの部分が多い生物と言えます。

 これは、言い換えるならば、それだけ未知なる可能性を秘めているということです。これから、どんな可能性が花開くかわからないのですから、あることができなくても、けっして親のせいにして諦めてしまわないことです。

 

考え方次第で、いくらでも仕事は楽しくなる

 自分の仕事に意味を見出したことで意欲を増した人の実話が、医学博士の斎藤茂太さんの著書に載っていました。

 希望した企業に就職したにもかかわらず、毎日コピー取りばかりさせられ、不満たらたらたった若者の話です。

 もう我慢できないと、彼は上司に直接掛け合いました。すると上司は、「これは社外秘の大事な企画書の資料なのだからこそ、アルバイトではなく、大事な社員である君に任せている」と諭したといいます。

 そのうえで、「“コピーを取ること”を仕事だと思っているから、やりがいがないのだけであって、ざっと読みながらコピーを取れば、君も立派にプロジェクトに参加していることになる」と言ったそうなのです。

 以後、彼は常に目を通しながらコピーを取り、大いに勉強に役立てたといいます。

 日本語で言えば「仕事」と一括りにされても、英語にすると、「レイバー」と「ワーク」という、似て非なる言葉に分かれます。ひとことで言えば、「レイバー」は「労働」、つまり生活するための仕事であり、「ワーク」は、自分のためにする仕事と言えます。

 いまのコピーの彼で言えば、それまで、彼にとってコピー取りは単なる「レイバー」でした。しかし、この上司のひとことによって、それは、やりがいのある「ワーク」になったと言えるのです。

 世の中には、好きなことを仕事にしている人もいれば、つまらなくても仕事は食い扶持を得るためと割り切っている人もいます。さしずめ、前者は「ワーク」、後者は「レイバー」となりそうですが、そう簡単に言えるものでもありません。

 と言うのは、好きな研究を仕事にしている私からしても、いくら好きな職種とはいえ、現実の細かい仕事には地味でつまらないものも多いからです。

 コピー取りの男性も、希望した企業に就職したにもかかわらず、与えられた仕事は、一見するところ、やりがいの感じられないものでした。

 好きな仕事でも、いつも楽しいとは限らない。働いて日々の糧を得るとは、なかなかたいへんなことなのですが、どんな仕事であれ意欲的にできるに越したことはありません。

 そこで自分の仕事の意味を見出せれば、もっと楽しく働いて暮らせるはずなのです。

 

働く遺伝子をオンにするには

 「レイバー」を「ワーク」に変えるために、もっとも大切なのは「感動」です。

 たとえば、ちょっとした思いつきでやったことが、私の講義の人気を一気に高めたことがありました。

 筑波大学には、教養学部がないので、先生が手分けして新人生に講義をします。いくら進学を望み、つらい受験勉強を乗り越えて大学に入ったとはいえ、教養課程の授業は概論に終始することが多く、あまり面白くありません。

 そこで私は、形式的な講義ではなく、研究に携わる者としての実感を、現場の雰囲気も込めて伝えることにしました。

 遺伝子工学は、まさに日進月歩の勢いで研究が進んでおり、競争も激しいこと。

 私たちの研究チームがレニンの遺伝子暗号を解読し始めたとき、世界に冠たるパスツール研究所でも同じ研究を進めていることがわかり、しかも、形勢はかなり不利だったこと。

 しかし、そこで強力な助っ人が現れ、ついに世界初となるレニンの基本構造の解読に成功したこと。

 遺伝子の不思議。ヒトの遺伝子暗号は、幅1ミリの55万分の1という超極小の情報テープに書き込まれていることなど。

 こうした遺伝子工学の話は、哲学的、宗教的な話にまで発展します。すなわち、これだけ精密なことをやってのけたのは、人知を超えた何か偉大な力、神のような存在としか思えず、私はそれを「サムシング・グレート」と呼んでいるという話にまで及びます。

 学生たちは食い入るように私の話を聞きました。それが取っかかりとなったのでしょうか。次の宗教学の授業でも、かつてないほど、学生たちの反応がよかったと、宗教学の教授に聞かされました。

 そして翌年、翌々年と、私の講義の受講生は増える一方になっていったのです。

 このとき、学生を真剣にさせたものこそ、「感動」に他なりません。

 ですから、毎日が「レイバー」になってしまっているのなら、何かしら感動のタネを仕事に見出すことです。感動は好奇心となり、世界を広げていく原動力となります。

 こうして、「仕事」が「レイバー」ではなく「ワーク」になったときにこそ、働く遺伝子がオンになり、仕事をぐんぐん自分の血肉としていけるのです。

 

先を案じるより目の前のことに打ち込む

 私が、いっぱしの研究者として身を立てられるようになったのは、1つには、目の前に現れたチャンスにただ打ち込んできたからのように思えます。

 以前、医学博士の阿部博幸氏との対談集を出したときに、阿部氏が、がん細胞に対抗するために利用されてきた2種類の免疫系の細胞の話をしてくれました。いずれもがん細胞を攻撃する特徴がありますが、その性質は、かなり異なっているようです。

 1つは、T細胞(胸腺 thymus のTに由来)です。難しい説明は省くとして、このT細胞を中心とした免疫機構は、緻密なチームプレーで働くことが特徴で、いわば現代のハイテクくるま軍隊のようなものだといいます。

 もう1つはNK(ナチュラル・キラー)細胞と呼ばれるものですが、こちらは異物と見たらすぐに攻撃を仕掛けるという野生的な特徴があるそうです。T細胞が現代のハイテク軍隊なら、こちらは中世の甲冑部隊といったところでしょうか。

 最初に免疫学者が飛びついたのは、ハイテク軍隊のT細胞でした。しかし、高度に完成された連携プレーには、ちょっとした変化に対応できないという難点がありました。

 これは、大きな難点でした。というのも、がん細胞はなかなかの知恵者で、姑息な手段でハイテク軍隊の緻密な連携プレーを翻弄するからです。

 その点、がん細胞だろうが何だろうが、異物と見たら一気に攻撃するNK細胞は、がん細胞がいくら小細工をしようとも、がん細胞がそこにいる限り惑わされません。そういうわけで、現在のがん治療では、NK細胞が主流になっているとのことです。

 精巧であるがゆえに孕んでしまう弱さがT細胞の問題だと考えれば、猪突猛進型のNK細胞のほうが有益だというのもうなずける話です、私がT細胞よりNK細胞にある種の親近感を覚えたことは、言うまでもありません。

 物事を進めるうえで、先を読むことは大切ですが、それも度が過ぎれば、かえって足元をすくわれることになります、また、将来のビジョンを持つことは大切ですが、漠然と先のことを心配していても、前には進めません。

 考えすぎたり、心配しすぎたりするよりは、目の前のことに一生懸命打ち込んだほうが、はるかに成長の糧を得ることができるのです。

 

村上和雄

(むらかみ・かずお)

筑波大学名誉教授

米国オレゴン医科大学、京都大学農学部、米国バンダービルト大学医学部等を経て、1978年より筑波大学応用生物化学系教授。同大遺伝子実験センター長、先端学際領域研究センター長等を務め、1999年に退官。1983年に高血圧の黒幕である酵素「レニン」の遺伝子解読に初めて成功、世界的な注目を集める。1990年、マックス・プランク研究賞、1996年、日本学士院賞を受賞。
著書に『生命の暗号』『アホは神の望み』(以上、サンマーク出版)、『スイッチ・オンの生き方』『人を幸せにする「魂と遺伝子」の法則』(ともに致知出版社)、『奇跡を呼ぶ100万回の祈り』(ソフトバンククリエイティブ)、『科学者の責任』(PHP研究所)ほか多数。


<書籍紹介>

そうだ! 絶対うまくいく! 
幸せ遺伝子オンになる生き方

村上和雄 著

「早起きで自分の時間をつくる」「異種トモをつくる」など、人間の可能性を引き出す遺伝子を目覚めさせ明るく生きるための方法を紹介。

 



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