「なんとなく体が重い」「最近イライラしがち」......その不調、実は自律神経が乱れているサインかもしれません。職場での昇進や環境の変化、仕事への責任感など、一見ポジティブな要素が、自分でも気づかないうちにストレスとなり、自律神経のバランスを狂わせる原因となることも。アスリートや著名人の事例を交え、深刻な病につながる前に知っておきたい自律神経の仕組みと、心身が発するサインの正体を解説します。
※本稿は、小林弘幸著『科学的に証明された 自律神経を整える習慣』(アスコム)より一部抜粋・編集したものです。
自律神経を乱す大きな原因は「ストレス」「不規則な生活習慣」「加齢」の3つ
自律神経(正確には自律神経系)は、「交感神経(系)」と「交感神経(系)」に分けられます。自律神経の乱れによって引き起こされる代表的な症状のひとつに「自律神経失調症」が挙げられますが、失調とは、アクティブな状態で高まる交感神経と、リラックスした状態で高まる副交感神経の「バランスが崩れること」だと思われがちです。
交感神経が優位なときには副交感神経が優位ではなくなり、反対に副交感神経が優位なときには交感神経が優位ではなくなる、と捉えても間違いではありませんが、実際は、どちらかがつねに大きく優位でいるかのような、スイッチングをしているかのような動きをしているわけではありません。
自律神経が整った、体がもっともよい状態は、交感神経も副交感神経も、両方高いレベルで活動していることが重要です。
つまり、優位といっても、「少しだけ優位」といった程度なのです。
症状が現れてしまうくらい自律神経が失調している状況の多くは、本来、両方高いレベルで活動しているべき交感神経と副交感神経のうち、交感神経のレベルだけが異常に高く、副交感神経のレベルが異常に低い状況が起きてしまっているケースです。
反対に、副交感神経が異常に高く交感神経が異常に低いケースはうつ病の傾向にあり、両方のレベルが下がっている場合は何もする気が起きないような状態になります。
かつての私や、ニュースなどで漏れ聞く著名人の方々の症例、そして、慢性的に体に不調を抱えていらっしゃる方々も、おそらくはどちらかの、あるいは両方の神経が低レベルなのだと考えられます。
なぜそうなってしまうのでしょうか。
原因はさまざまですが、ここではまず、代表的な「大物」の原因を3つ挙げておきましょう。
それは、
●ストレス
●不規則な生活習慣
●加齢
です。
ストレスは、言い換えればつねに興奮状態にある状況であり、過剰に交感神経を優位にしてしまいます。
不規則な生活習慣も同じで、睡眠不足や生活リズムの乱れが、本来、副交感神経が優位になるはずの時間を短くしてしまいます。
そして、誰も避けられないのが、ずばり「加齢」です。個人差はありますが、男性は30代、女性は40代に差しかかったあたりから、いわゆる「体力の衰え」を自覚することが多くなります。
振り返れば、私も最初の不調を感じたのは、30代でした。データをとってみると、男性は30代、女性は40代から、副交感神経だけが急に低下する時期があります。反面、交感神経はそこまで急激な低下が見られません。
つまりは、副交感神経をなるべく下げないようにすれば、健康でいられるはずなのです。
昇進に伴って体調を崩してしまう例が少なくない
職場での昇進は、基本的におめでたく、喜ばしいことのはずです。
肩書きも立派なものになり、責任感も生まれます。もちろん、お給料もよくなるでしょう。何より、それまでの仕事ぶりが認められたことは素直にうれしいですし、部下や後輩を指導することを誇らしく感じる瞬間が多々あるはずです。
ところが、です。おめでたいはずの昇進に伴って、体調を崩してしまう例が、じつは少なくないのです。
疲れやすくなった、なんとなく体が重い、睡眠が浅い、すぐにイライラしてしまう......、こんな状態が、散発的に起きるようになります。そうなると、昇進を喜ぶどころか、むしろ、もとの気楽な立場に戻してほしいと思ってしまうこともあるでしょう。
自分だけではありません。配偶者やパートナーがこのような状態になってしまえば、プライベートにもよくない影響が及んでしまうかもしれません。
日本は、ほかの先進国に比べて、「指導的地位(一定の管理職、役員など)」に占める女性の割合が少ない国です。そこで、官民をあげて女性比率を30%まで引き上げようと目標を掲げていますが、残念ながらなかなかうまくいっていないようです。
最近では、とくに若い世代の方々は、そもそも出世なんてしたくない、管理職にはなりたくないと考える人が増えていると聞きます。責任が増える、ストレスが増す、そして女性の場合では、仕事と家庭の両立が難しくなる、などの理由が挙がるようです。
自律神経の面からこの状況を考えると、昇進する、管理する立場になる、というのは、社会人としての自分にとって、大きな環境の変化そのものです。そして、変化は自律神経を乱す大きな原因のひとつになりえます。
ということは、結果的に、出世や昇進が自律神経失調症の原因となってしまった、という状況は、案外簡単に成立してしまうことになります。私たちもそうした患者さんを診ることは少なくありません。
変化に伴うストレスは、悪い面だけでなく、適切でさえあれば、自分を人間として成長させてくれるスパイスにもなります。
あらかじめその点をわかっていて、自律神経の整え方を知っていれば、昇進に伴う変化を、いい形にだけ生かして自分を伸ばしていけることでしょう。
がんばっている人ほど要注意?急に体が動かなくなることも
最近、芸能人やスポーツ選手といった有名人が、「休養のためしばらく活動を休止します」といった発表を行なって、私たちを驚かせることが増えたと思いませんか?
「急にどうしたんだろう?あんなにキラキラ輝きながら活躍していたのに」
「元気そうに見えたのに、じつは体調が悪かったのかな」
そんな感想が、SNSやネットニュースを飛び交います。
そんなときに目にするキーワードが、「自律神経失調症」です。
自律神経とは、私たちの生命活動を支えてくれている大切な「自動運転」のシステムで、いちいち命令を出さなくても意識とは無関係に働いています。
心臓が全身に血液を送ったり、食べたものが胃腸で消化・吸収されたりするのも、すべて自律神経の働きのおかげです。
ところが、このシステムが壊れると、思わぬ現象が起きることもあります。
普段、みなさんの前で元気な姿を見せている著名人の方々のなかにも、不規則な生活が続いたり、緊張やプレッシャーにさらされる日々が続いたりすることで、自律神経を乱されるケースがあります。
めまいや吐き気が続くといった症状や、歌手の方で声が出なくなってしまったという深刻な症例もあります。
日米のプロ野球で活躍し、いまも現役を続けている川崎宗則選手は、元気で明るいキャラクターでも知られています。そんな川崎選手が2018年、自ら申し出て当時所属していたチームを退団した理由もまた、自律神経の不調でした。頭痛や体の痛みが続き、体が動かなくなってしまったといいます。
芸能人やアスリートのみなさんは、ファンの方々に元気で活躍している姿を見せることを使命に感じ、日々努力を続けられている方が多いのだと思いますが、じつはがんばっている人ほど自分に厳しく、自身の体調不良に気づかないことも少なくありません。また、著名人に限らずとも、「弱音を吐かない」ことを美学とする日本の文化はいい面もたくさんありますが、それで体を壊してしまっては元も子もありません。
長く続けてきた仕事や活動でも、いつの間にか自律神経のバランスを崩してしまうことは多々あります。
「自律神経失調症」は、誰もがかかる可能性のある病気なのです。
肩こりや便秘、不安やイライラは、自律神経からのサインかも
自律神経が乱れてしまうと、どのような症状が起こるのでしょうか。
ここまで見てきた著名人や私自身の例だけでもいくつか具体的な症状がありましたが、実際はそれだけではありません。
というより、あれもこれも、「えっ!こんなものまで!?」といいたくなるくらい、じつにさまざまな症状が、自律神経の乱れによって起きる「自律神経失調症」の範疇だと考えられるのです。
「病院に行くほどではないけど、なんだか最近調子悪いな」といった慢性的な不調については、まずは自律神経を疑ったほうがよさそうです。
自律神経が乱れると、体には、大きく分けてふたつの「よくないこと」が起こります。
ひとつは「血管の収縮」。血液の流れが悪くなり、いわゆる「ドロドロ」の血液になりやすくなります。
ひとつは「脳と内臓のダメージ」です。これらは自律神経を逆説的にコントロールしていますから、当然といえば当然ですよね。
その結果、どのような症状が起きるのでしょうか。
症状は、「精神的」な不調と、「身体的」な不調に分けられます。
【精神的不調】
不安、不眠、情緒不安定、イライラ、集中力の低下など
【身体的不調】頭痛、動悸、息切れ、めまい、肩こり、便秘、肌荒れ、疲れやすくなる、倦怠感、冷え、息苦しい、手足のしびれなど
これらすべてが、自律神経の不調から来ていると考えられます。
まあこの程度なら我慢できるかも...というのはよくない考え方です。これらの症状は、自律神経がうまく働かなくなっているサインだと考えてください。アラームが鳴っているのにそのまま放置しておけば、もっと深刻な症状を招く恐れが高くなります。
動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞など、生死に直結する危険な病気につながる場合もあります。まずは自律神経からのサインをしっかりと認識しましょう。








