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社会

「業務時間外の相談はNG」東京都のガチ監修で描く漫画『消費生活者ターさん』のリアル

はんざき朝未(漫画家)

2026年07月17日 公開

「業務時間外の相談はNG」東京都のガチ監修で描く漫画『消費生活者ターさん』のリアル


(C)はんざき朝未/講談社(『消費生活者ターさん』1巻「犬と話す男」より)

ジャングル育ちのターザン似男性・ターさんが、消費生活センターの相談員として働く姿を描いたコメディ漫画『消費生活者ターさん』(コミックDAYS)。本作は東京都消費生活総合センター監修のもと描かれています。

作者・はんざき朝未さんへのインタビュー第3回は、現場のリアルに焦点を当てます。はんざきさんが実際に3箇所の消費生活センターに足を運んで見えてきた相談員たちの知られざる苦労や、日々巧妙化するネット詐欺の現状について話を伺いました。

 

3つの消費生活センターを取材して見えたこと

(C)はんざき朝未/講談社(『消費生活者ターさん』1巻「消費生活王に、俺はなる」より)(C)はんざき朝未/講談社(『消費生活者ターさん』1巻「消費生活王に、俺はなる」より)

――『消費生活者ターさん』では3つの消費生活センターを取材されたそうですね。複数のセンターに足を運ばれた理由は何だったのでしょうか。

【はんざき】規模感の違いを見るためですね。東京都消費生活総合センター、文京区消費生活センター、武蔵野市消費生活センターに行きました。

【担当編集】国全体としては消費者庁が所轄する「国民生活センター」という施設があり、各都道府県・市区町村にもそれぞれ消費生活センターがあります(※全ての市区町村にセンターが設置されているわけではありません)。 東京都だと「東京都消費生活総合センター」という都の組織があって、それとは別に、武蔵野市なら武蔵野市、文京区なら文京区といった、市区町村に紐付いた身近な組織があるという位置づけですね。

――なるほど。取材の中で、何か発見はありましたか?

【はんざき】基本的に相談者と電話でやり取りをするので、まずトラブルの全体像を聞き出すだけでも大変ということが分かりました。皆さんパニックになって電話をかけてこられるので、順序立てて話してくれるわけではありません。流れや要点を辛抱強く聞き出すこと自体が難しいのです。相談を受ける技術を学ぶための研修も、都の消費生活総合センターや、国民生活センターなどで行われているようです。

――実際に消費生活センターへ足を運ぶ相談者は少ないのですね。

【はんざき】漫画で描いているほど多くはなくて、都の総合センターでも実際に来るのは1日に2、3人ほどのようです。基本は電話での相談がメインですね。また、相談のテーマが多岐にわたるので、受ける側もいろいろな知識を持っていなければなりません。生活力が試される仕事だなと思いました。

――作中では、保東さんが「電磁のチカラ」という怪しいマッサージ店に潜入捜査のようなことをするシーンもありました。実際にああいったことも行われているのでしょうか。

【はんざき】相談員の方々は、「プライベートはプライベートで割り切ることで、ストレスを溜めないようにしています」とおっしゃっていました。なので、保東さんのようなタイプは実際にはいないと思います(笑)。

 

ますます巧妙になっている手口

(C)はんざき朝未/講談社(『消費生活者ターさん』1巻「消費生活王に、俺はなる」より)
(C)はんざき朝未/講談社(『消費生活者ターさん』1巻「消費生活王に、俺はなる」より)

――取材や調査の中で、驚いた事例や印象に残っているものはありますか。

【はんざき】東京都消費生活総合センターで、ネット・Webトラブルや投資、副業関連の相談を担当する専門分野の方に伺ったお話が印象に残っています。

最近はインターネット上の詐欺が増えていて、特に投資や「お金を増やせる」といった副業・サイドビジネスをうたう勧誘が目立つそうです。LINEなどで「短時間でこれだけ儲かる」と誘い、専用アプリを入れさせたうえで、遠隔操作で操る、といった手口もあると聞きました。技術の進歩についていかなければならないので、めちゃくちゃ大変だなと思います。

――作中では保東さんが「なんで変に思わないんだ」と口にするシーンがありましたが、今は誰でも騙されてしまいそうな巧妙なものが増えているということなのでしょうか。

【はんざき】相談者は老若男女満遍なくいらっしゃるそうです。騙されないと思っていても騙されてしまう巧妙なものが蔓延しているのかなと思います。なぜいかにも怪しいものにも騙されてしまう人がいるのかについては、まだ掴みかねている部分でもあります。

――はんざきさんご自身は、騙されてしまった経験はありますか。

【はんざき】騙されそうになったことはあります。メルカリでブランドのコピー品を買いそうになって、「これはコピー品だ!」と勘が働きました。新品なのに安すぎるな、と。

――それは、気づかずに騙されてしまう人も多そうですね...。この作品を描くようになって、消費社会についての考え方も変わったのでは?

【はんざき】自分はめちゃくちゃぼんやり生きていたんだなと気づきました。

5話「お前が食べているもの」で食品表示について深く扱っているのですが、ぼんやり生きていても大きなトラブルに見舞われないのは、先人たちが問題を提起して、法整備などを頑張ってくれた結果なんだな...と、感謝の気持ちが湧きましたね。

――これまでの積み重ねがあってこそなんですね。

【はんざき】そうですね。それに消費生活問題のニュースにも敏感になりました。最近だと、ソーラーパネル設置の悪質な業者が高額請求してくるトラブルなどが問題になっているようです。

 

監修で反映される現場のリアル

『消費生活者ターさん』

――これだけ漫画で大きく取り上げられたら、消費生活センターの職員の皆さんも喜んでいらっしゃるのではないでしょうか?

【担当編集】非常に好評をいただいています。東京都消費生活総合センターさんには本当にお世話になっていて、監修も一部協力していただいているんです。

――監修の中で、修正が入ったディテールなどはありますか。

【はんざき】細かいところでいろいろと直していただいて助かっています。

例えば「相談を受けるタイミング」ですね。漫画の演出として、外を歩いているときに業務時間外で相談を受けるシーンにしようとしたら、「業務時間外に相談を受けるとまずいので、一回センターに戻ってから受けた体にしてください」という指摘をいただきました(笑)。

――リアルな職場環境が反映されているのですね! ファンタジーな設定と、とても現実的な描写が組み合わさっているところも面白いです。

 

プロフィール

はんざき朝未

漫画家

ハツキス10号(2019年3月刊)でデビュー。Kiss掲載の初連載作品『無能の鷹』(全8巻)がヒットし、TVドラマ化もされた。

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