「老後は女友達とシェアハウスで暮らしたい」――そんな理想を思い描いている女性が多いようです。
気の合う友人同士なら、協力し合って楽しく暮らしていけそうなイメージがありますが、「9割方うまくいかない」とのこと。なぜ、大人のシェアハウスは破綻してしまうのでしょうか。メンタルコーチのワタナベ薫さんが、自身の経験をひも解きながら、独居に不安を感じている「おひとりさま」へ、ストレスの少ない「近居」のスタイルを提案します。
※本稿は、ワタナベ薫著『おひとりさまの生存戦略 人生100年時代をご機嫌に生きるスキル』(扶桑社)より一部抜粋・編集したものです。
憧れだけで突っ走ると火傷する
「老後は気の合う女友達と、大きな家を借りて楽しく暮らしたい」「美味しいご飯を一緒に食べて、何かあったら助け合って......」そんな妄想をしている女性たちも多いようです。
最近は「孤独死」という言葉をニュースで頻繁に耳にするようになり、その恐れからか、私の周りの50代、60代の女性たちからもこうした声をよく聞くようになりました。テレビドラマや映画で描かれるような、楽しそうな共同生活への憧れもあるのでしょう。
でも、あえて現実を申し上げますと、「友人との同居(シェアハウス)」は、9割方うまくいきません。今回は、憧れだけで突っ走ると火傷をする「大人のシェアハウス」の現実と、私たちが本当に目指すべき「スープの冷めない距離」についてお話しします。
大人だからこそ、「生活のリズム」は譲れない
学生時代ならいざ知らず、私たちはもう何十年も「自分流の生活スタイル」を確立してきてしまいました。
・朝はカーテンを全開にしたい派vs遮光カーテンで昼まで寝たい派
・トイレの蓋は閉める派vs開けっ放しでも気にしない派
・お風呂の湯加減、冷蔵庫の中身、テレビの音量......
・マーガリンは、上から削っていく派vs掘っていく派(笑)
昔、私の気の合う友人二人が、家賃を節約するために一緒に住み始めました。最初はとても楽しそうだったのですが、ある日、なんと「マーガリンの使い方」がきっかけで大ゲンカになり、それぞれから「同居を解消したい」と相談されたことがあります(上から綺麗に削っていくタイプか、真ん中から無造作に掘っていくタイプかの違いで!笑)。冗談のような本当の話ですが、マーガリンはただのトリガーだっただけで、それをきっかけにお互いの我慢していたことが一気に爆発してしまったのです。「そんな細かいこと?」と思われるかもしれませんが、他人の些細な生活音が、毎日積み重なると巨大なストレスになります。
私自身の経験ですが、離婚してから数年間、自由に暮らしていたのですが、その後、付き合っていた彼と同棲したことがありました。彼が私の家に住む形になりましたが、彼の生活音やリズム、部屋を散らかすことなどの細かいことが気になってしまい、同棲解消をお願いしたのは私の方です。無理でした。色々と......(笑)。
私にとって家は「完全なるサンクチュアリ(聖域)」。玄関を開けた瞬間、誰かの気配を感じて「おかえり」と言われる温かさもそれはそれで素敵ですが、それ以上に「誰にも気兼ねなく、ヨレヨレの部屋着でソファに寝っ転がる自由」こそが、私にとっての最高の贅沢なのです。
「仲が良い」と「一緒に住める」は別次元
以前、友人とこんな話になりました。「旅行は最高に楽しいけれど、誰かとの旅行は1週間が限界よね」と。なんかわかる!(笑)
実は弊社では、お客様を海外にお連れするツアー業(研修)もしていますが、その時改めて感じました。素晴らしい仲間たちと共有する感動体験は何物にも代えがたい。しかし、ホテルの部屋に戻って一人になれる時間があるからこそ、翌日もまた笑顔で会えるのです。
友人とのお喋りは、カフェで2時間会うから楽しいのです。「また会いたいな」と名残惜しく別れるくらいが、人間関係の鮮度を保つ秘訣です(ここ重要!)。これが、キッチンの流しの汚れを指摘し合う関係になった瞬間、長年温めた友情があっけなく壊れてしまう。そんな悲しいケースをいくつも見てきました。
目指すべきは「同居」ではなく「近居」
では、私たちは孤独に耐えるしかないのでしょうか?いいえ、違います。私が提案したい最強の解決策は、シェアハウスではなく「スープの冷めない距離の近居(きんきょ)」です。
シェアハウスのように「同じ屋根の下」に住むのではなく、
・同じマンションの別の階
・歩いて5分以内の近所
この距離感こそが、大人の最も望ましい着地点です。これなら、生活リズムの違いで揉めることはありません。プライバシーは完全に守られます。でも、「熱が出た」「醤油買い忘れた」「作りすぎた煮物をお裾分けしたい」という時には、すぐに駆けつけられる。
何かあれば助け合える安心感がありながら、干渉はしない。鍵はかけ合うけれど、心は開いておく。これこそが、自立した大人の女性が目指すべき、真のセーフティネット!
実際のところ、お客様から「ワタナベさん、マンションを1棟買って、独身女性専用の住居を作ってくださいよ!」とよく言われます。それくらい将来に不安を抱えている女性が多いということですが、大人の関係において何より大切なのは「プライバシーが完全に守られること」です。同じマンションで階や部屋が違う「近居」であれば、それを実現することは十分に可能かもしれませんね。
友情を長続きさせるための「賢い距離感」
私たち世代に必要なのは、ドラマのようなベタベタした共同生活ではなく、お互いの「個」を尊重した上での連帯です。
もし今、将来の不安から「誰かと住みたい」と考えているなら、一度立ち止まってみてください。その不安は、同居でしか解消できないものでしょうか?近くに住んで、たまにお茶を飲み、困った時だけ助け合う。そんな「スープの冷めない距離」の友人を一人でも作っておくことの方が、無理に他人と暮らすよりも、ずっと豊かで永続的な安心をくれるはずです。
大人の友情を守るのは、近すぎない距離感。自立した私たちだからこそ選べる、賢い選択をしていきましょう。
まとめ
生活リズムが確立した大人同士の「同居(シェアハウス)」は、些細なストレスから関係が破綻しがちです。目指すべきは、プライバシーを守りつつ助け合える「スープの冷めない距離での近居」。近すぎない距離感こそが、友情を長続きさせる秘訣です。









