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AIで作業を減らしても「多忙感」が消えない理由 7つ当てはまったら危険信号

菅原洋平(作業療法士)

2026年09月15日 公開

AIで作業を減らしても「多忙感」が消えない理由 7つ当てはまったら危険信号

仕事や家事などをこなす中で、「忙しい」と感じている人は多いはず。でもその「多忙感」は、もしかしたら自らが作り出しているのかもしれません。作業療法士の菅原洋平さんが、多忙感から抜け出す方法を教えてくれました。

※本稿は、『PHPスペシャル』2026年10月号より内容を抜粋・編集したものです。

 

脳に必要なのは「余白」

近年、急速にAIが進化して生活に浸透したこともあり、仕事も家事も劇的に効率化されたと言われています。それにもかかわらず、「忙しいという感覚」から、なかなか解放されない――。あなたは、そんなふうに感じていませんか?

じつは今、多くの人が同じ違和感を抱えています。前より「多忙」ではない、もしくはやることがそんなに変わっていないはずなのに忙しいと感じる状態=「多忙感」に陥ってしまっているのです。

その原因は、脳という臓器の仕組みにあります。「メールが届けば確認する」「通知が鳴ればスマホを見る」「誰かに呼ばれたら対応する」といったことから、「脳とは刺激に反応する臓器」だと、私たちは思いがちです。

しかし、脳は本来、「予測する臓器」です。脳は過去の経験をもとに、「次はこうなるだろう」と先の展開を予測し、それに必要な準備を整えていきます。つまり、脳が本来の力を発揮するには、「予測する間」が必要なのです。

ところが現代人は、「効率化」の名のもとに、その時間を削り続けています。たとえば料理をするときも、食材を眺めながら「どんなふうに作ろうか」と考えるより前に、AIにレシピを提案させ、その指示に従いながら作ったりすることが増えたのではないでしょうか。こうなると脳は、予測する間もなく目の前の情報に反応するだけになってしまいます。

そもそも反応というのは、予想外の出来事への緊急対応。いきなり敵に襲われるのと同じですから、無意識のうちに心拍や血圧が上がって、余計なエネルギーを使うことになってしまうのです。

時間を節約しているはずなのに、なぜか疲れる、焦りを感じる。その背景には、効率化のせいで脳が予測する余白を失い、ひたすら反応ばかりしているという実態があります。

これこそが、やることが多いという物理的な「多忙」とは別の忙しいという感覚――すなわち「多忙感」の正体なのです。

【「忙しさ」には2種類ある!】
・多忙…実際にやることが多い状態
・多忙感…実際の業務量や時間の制約以上に、「忙しい」「疲れる」「時間に追われている」と感じてしまう状態

→「多忙感」に陥っていると、やることを減らしたり、効率的に作業をこなしたりしても、「頭の中の忙しさ」は残り続けます。

 

自分の状態をチェック!

まずは、あなたの「多忙感」のレベルを確認してみましょう。以下の中で、当てはまると思う項目にチェックを入れ、数えてみてください。

□「いつも時間に追われている」と思う
□メールに返事を出して数秒後に、メールをチェックすることがある
□メッセージやメールの通知が来たら、即反応する
□やるべきことがわかっているのに、ついボーッとしてしまうことがある
□タスクを片づけても「やりきった感」がない
□休んでいると罪悪感にとらわれる
□仕事の用語や相手の名前を思い出せないことがある
□予定を詰め込みすぎて、1日の終わりにぐったりしている
□会議や打ち合わせのあと、頭をうまく切り替えられない
□休んでいたわけではないのに、「今日は何もしていなかった」と感じることがある

・0もしくは1つ~2つ
今のところ、「多忙感」の症状は出ていないようです。少し気をつければ、今後もこの状態をキープできるでしょう。

・3つ~4つ
「多忙感」の兆候が出始めています。このレベルならリセットもしやすいので、早めに対処することが大切です。

・5つ~6つ
脳にかなりの負荷がかかり、「多忙感」が定着し始めています。ここで立て直さないと、心身に悪影響を及ぼす危険性があります。

・7つ以上
すでに深刻な「多忙感」に陥っている可能性大。最後で紹介している「多忙感」から抜け出す方法を、すぐに実践してください。

 

多忙感の3大症状

「多忙感」は段階を経て強まり、最終段階まで進むと、記憶力や集中力、時間感覚などを司る脳の機能が低下し、次のような症状が現れます。

多忙感がもたらす症状① 物忘れ
一時的に記憶を保持してすぐに取り出す「ワーキングメモリ」の働きが低下し、さっきまで考えていたことや、やろうとしていたことを思い出せなくなります。「何をしようとしていたんだっけ?」という場面が増えたら要注意です。

多忙感がもたらす症状② ボーッとする
会議や会話の最中なのに話が頭に入らない、資料を読んでいても内容がなかなか理解できないなど、集中力が阻害された状態です。集中しているつもりが、気づくと別のことを考えている場合も。

多忙感がもたらす症状③ あっという間に時間が過ぎる
時間を管理する脳内の時間細胞がうまく働かなくなり、時間感覚が狂ってしまいます。少し作業したつもりが、気づけば数時間経っていることも。それが、「いくら時間があっても足りない」という焦りにつながります。

 

【予兆に気づこう】
無自覚のうちに生まれ、気づけば上に挙げたような症状が現れるのが「多忙感」の怖いところ。次のことを無意識にしていたら、「多忙感」の初期段階です。体からのサインに敏感になって、最終段階に進まないように早めの対処を心がけましょう。

・会話中にアクセサリーや髪を触る
・指を鳴らす
・机を指で叩く
・座っているときに靴をコツコツ鳴らす
・貧乏ゆすりをする
・スマホなどの操作中に息を止める
・食事以外で上下の歯が噛み合う
・口が開いて口呼吸になる
・瞬きが減り、目が疲れる

 

多忙感を生む2大要因

「多忙感」が生まれるのは、脳の予測が邪魔されて、ひたすら反応に追われてしまうから。その大きな要因となっているのが、「脳疲労」と「外乱」です。

①脳疲労:エネルギーの消耗

脳が使えるエネルギーは限られています。そのため、大量の情報に触れ続け、複数のことを同時にこなし、判断作業を何度も続けて行なっていれば、すぐにキャパオーバーに。こうして「脳疲労」に陥った脳は、同じ量のタスクでも重たく感じ、うまく処理できなくなります。本来行なうべき予測もうまくできず、「多忙感」へとつながります。

②外乱:注意力を奪う刺激

メールやチャット、SNSの通知など、こちらが意図しないタイミングで脳の注意を奪いにくるのが「外乱」です。こうした刺激が入るたびに脳は反応しなければならず、やっていた作業に対する予測の流れも途切れてしまいます。もともと脳疲労が起きているところにこうした外乱が押し寄せれば、脳はさらにエネルギーを消耗し、予測する余裕をますます失うことになるのです。

 

多忙感から抜け出す方法

脳の仕組みを活かして忙しさから解放されるための方法を覚えておきましょう。

ここまでお話ししてきたように、私たち現代人は、表面的な効率化を優先するあまり、「予測する臓器」である脳の働きを無意識のうちに邪魔しています。そして、次々と押し寄せる刺激に反応し続けることで、強い「多忙感」に悩まされているのです。

「多忙感」から抜け出すために大切なのは、「反応モード」から本来の「予測モード」へと脳を戻していくことです。脳に予測する余裕を与え、脳の予測を邪魔するものを減らし、脳の予測をうまくあと押しする工夫をしましょう。

そうして脳が本来の働きを取り戻せば、「多忙感」は自然と解消されていくはずです。

 

●通知設定をオフにする

メールやチャットの受信を知らせる通知機能は、脳にとっては予測していない刺激以外の何物でもなく、そのたびに反応を強いられることになります。

通知設定の中でも、とくに通知音はオフにして、必要なときに自分の意思でチェックする癖をつけましょう。たったこれだけでも脳が刺激に振り回されにくくなり、「多忙感」の軽減につながります。

●「どうやってやろうかな」とつぶやく

脳が予測するのは、「何をやるか」ではなく、「どうやってやるか」です。そのため、何かをやろうとするときは、「どうやってやろうかな」と口にしてみてください。その言葉があと押しとなり、脳は、どのように行動するかを勝手にイメージし始めます。さっきまで漠然としていたタスクが、実行可能な小さなタスクへと変わるでしょう。

予定を書く場合も簡単でいいので、「買うものをリストアップする」「参加者名簿をエクセルにまとめる」など、「どんなふうにやるか」までを書いておくのがおすすめです。

●やるべきことに少しだけ手をつける

脳は、4つ以上のタスクは覚えられないと言われています。「やらなきゃ」と思っているだけでも、脳はそれをやるべきタスクの1つとしてカウントしてしまうため、すぐに容量がいっぱいに。

脳の容量を空けるために、ほんの少しでいいので「やらなきゃ」と思っている作業に手をつけてみましょう。たとえば「企画書を書く」という仕事なら、資料を開く、タイトルだけ決めるなどしてみてください。それだけで脳がスッキリして脳内で予測が進みます。すぐにできない場合は、いつするか決めればタスクを脳から外せます。

●脳の予測タイムを挟む

一気にまとめてやってしまおうと思って同じ作業をやり続けることも、脳の予測する間を奪ってしまいます。15分ごとを目安に「ちょっと疲れたな」「飽きてきたな」と感じたら、一度作業から離れ、少し歩いたり、ファイリングなどの単純作業をしたりしてみましょう。

脳はその間に予測を進めてくれるので、戻ったあとの作業がぐっとラクになるはずです。

●15分間、1つの作業に没頭する

「今日はこれをやる」と決めたら、15分でいいのでテレビやスマホ、ゲーム機など注意が向くものを一切排除した環境で、決めた1つの作業だけを行なうようにしてみてください。難しければ、10分、5分だけでもいいです。

そうすることで、脳が慣れきってしまった「反応モード」から解放され、本来の「予測モード」に戻りやすくなります。

 

【多忙感だけでなく充足感を手に入れよう】

時間やタスクに振り回される「多忙感」の対極にあるのは、「自分がやりたいことを思うようにやれている」という「充足感」です。次々と反応するだけの毎日では「多忙感」が積み重なるだけですが、やることが多くて物理的には忙しくても、自分で考え、自分で選び、自分の意思で行動できているとき、人はそれほど疲れません。だからこそ大事なのは、脳を本来の使い方に戻し、自分はこうすると決めて動くこと。

「朝起きたらカーテンを開けて、気持ちよく伸びをする」など、やろうと決めたことから1日を始めるだけでも、「充足感」を感じやすくなりますよ。

プロフィール

菅原洋平(すがわら・ようへい)

作業療法士/ユークロニア〔株〕代表取締役社長

ユークロニア株式会社代表。国際医療福祉大学卒業後、作業療法士の免許を取得。国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事したのち、現在は、ベスリクリニックで臨床を行なう傍ら、生体リズムや脳の仕組みを活かした企業研修などを全国で行なう。『多忙感』(サンマーク出版)など著書多数。

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