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サルコペニア肥満はメタボより怖い!

久野譜也(筑波大学教授)

2014年01月30日 公開 2024年12月16日 更新

《『病気にならない背筋と腹筋の鍛え方』より》

筋肉量の低下は「サルコペニア肥満」もまねく

 

サルコペニアは誰にでも起こる

 「サルコペニア」という言葉をご存じですか。ラテン語でサルコ(Sarco)は筋肉、ペニア(Penia)は減少という意味の言葉で、加齢とともに筋肉が減少していくことを意味しています。

 加齢は誰にでも訪れるものなので、サルコペニアも誰にでも起こります。サルコペニアは、コントロールすることはできません。寿命が短かった時代には発生しなかった問題でしたが、寿命が延びたために表れてきたといえます。

 現在メタボ(メタボリックシンドローム)の人は、今はメタボだけかもしれませんが、歳を重ねるとサルコペニアにもなります。サルコペニアは、60歳以降に起こりやすいことがわかっています。寿命が延びたために、これからどんどん増えることが予想されています。
   

サルコペニアより怖いサルコペニア肥満

 サルコペニアよりさらに怖いのが、「サルコペニア肥満」です。サルコペニアに肥満が合併した状態を指します。

 若いうちから肥満があり、加齢によって筋肉が落ちてサルコペニア肥満になる場合もありますが、加齢によって筋肉が落ちたところに脂肪が蓄積する場合もあります。筋肉が落ちてくると、その多くを筋肉で消費する基礎代謝が落ち、肥満が加速します。すると、これまでと同じ食事をしても、エネルギーとして消費されなかったぶんが脂肪としてたまってしまうことになります。これがサルコペニア肥満です。サルコペニア肥満は、メタボよりも糖尿病や高血圧などの生活習慣病になりやすいといわれています。また、転倒すると、骨折してそのまま寝たきりになる可能性がおおいにあるため、メタボよりも怖いと警鐘を鳴らしています。

 40~80歳代の男女約6000人を調査したところ、男女とも60歳代でサルコペニア肥満が増え始め、なんと70歳代以上では約3割の人がサルコペニア肥満に該当しました。

 傾向としては、男性より女性のほうが多くみられることがわかりました。女性は閉経すると内臓脂肪がつきやすくなり、筋肉量が減るためになりやすいと考えられます。
   

サルコペニア肥満はBMIと筋​肉量でわかる

 サルコペニアやサルコペニア肥満の判定法はまだ確立されていませんが、私たちはこれまでの研究から、次のような条件を満たすとサルコペニア肥満と判定しています。

・男性の筋肉率 27.3%未満*

・女性の筋肉率 22.0%未満*

  *体組成計による測定値(オムロンヘルスケアHBF-354ITを使用)

・BMI(ボディ・マス・インデックス) 25以上 (BMIの計算方法は図参照)

 

 つまり、上記以上の筋肉があれば、そして70歳でも80歳でも筋肉量が増えれば、サルコペニアを防ぐことができます。

 筋肉量が増えれば、立ち上がる能力、歩行能力が維持できるため、サルコペニア肥満を防ぎ、いつまでも元気でいられます。

 

サルコペニア肥満はさまざまな症状や病気を引き起こす

 

筋肉が減ってくると体にさまざまな支障が出てくる

 筋肉が減ってくると、基礎代謝が落ちるだけでなく、体にさまざまな支障が出てきます。

 なんでもないところでつまずきやすくなったり、つまずいて転び、骨折することもあるでしょう。

 筋肉が減ると疲れやすくなり、立っていられず、すぐに座りたくなったり、靴下を片足立ちではくこともできなくなったりします。起き上がるのも、ひと苦労です。

 つまり、日常生活のあらゆる場面で不便を感じることになります。そのため、少しずつ生活しにくくなってくるのを感じるはずです。

サルコペニア肥満だと病気になる確率は上がる

 それがサルコペニア肥満になると、生活しにくいだけでなく、病気になる確率がぐっと上がります。

 このグラフは、寝たきりになる確率をグラフにしたものです。低体力は寝たきりになりやすい状態のことですが、標準と比較すると、男女とも、肥満よりサルコペニアやサルコペニア肥満のほうが寝たきりになる確率が高いことがわかります。

 高血圧にも同じことがいえます。サルコペニア肥満だと、男性なら1.7倍、女性なら2.2倍の確率で高血圧になります。

 

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