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伝わる書き方 3つの戦略 ~ 「伝えたい」を「伝わった!」に変える魔法

三谷宏治(金沢工業大学虎ノ門大学院教授)

2014年02月12日 公開 2022年12月08日 更新

《『伝わる書き方』まえがきより》

 

書き方3戦略へようこそ

 IT化が進んで、文章(書きモノ)は要らなくなったでしょうか。酒落た写真とコメントだけで、仕事は進むようになったでしょうか。むしろ逆です。情報の洪水の中で、上手に「伝わる」文章はますます重要になってきています。

 ではどうやったら、「伝わる書き方」が出来るのでしょう。私自身が10年かけて得た答えが「書き方3戦略」でした。 

 これは一般の文章術と違って、試行錯誤型です。とりあえず書いてから始めます。そして口語型です。プレゼンテーションでのトークのように書くやり方です。聴いてわかる文章こそが、読んでわかりやすいものだからです。

 相手に「伝わる」かどうかは、文才でもレトリックでもありません。単純な技の積み重ねなのです。ひとつひとつは簡単です。誰でも出来ます。みなさんは今、その技への扉の前にいるのです。

 それらが自分に合うものかどうか、まずは読みすすめてみてください。

 

「聴いてわかる書きモノ」への3つの戦略

 活字となった文章は、そもそもヒトにとってわかりにくいものなのです。「聴いてわかる書きモノ」にすることがそれを解決します。そのための「書き方3戦略」は、

・戦略(1)短く書く

・戦略(2)構造化する

・戦略(3)波をつくる

です。文章を読んでいるヒトが、「簡潔なプレゼンテーションを聴いている」ように感じられれば「勝ち」です。

 そして、いずれも「まず書いてみて、書き直す」試行錯誤を前提にしています。「こういう準備をしてから書こう」と言ってみても、なかなか読者にやってもらえないから、ということもありますが、なにより自分自身がそうしているからです。まずは手を動かしましょう。そうしたら、(意外なくらい)頭も動いてくれます。

 メール、ブログといった短めのものから、報告書、企画書、果ては1冊の本に至るまで、この戦略は変わりません。この3つの戦略を使うことで、必ず「伝わる」文章になります。まずはその中核である「短く書く」からです。

 

戦略(1)
短く書く→絞り込む

 伝えたいこと(の候補)が頭に浮かんだら、まずはいろいろパソコンに打ち込む(もしくは紙に書き散らす)ことからスタートです。もちろんちっともまとまっていないことでしょう。でもいきなり、起承転結とかにまとめ始めないこと。「伝えたいこと」が絞り込まれていないのに、まとめても仕方ありません。

 まずは、戦略(1)「短く書く」を徹底します。伝えることを、たった1行に絞り込む挑戦です。

 ・本当に伝えたいことを「重要思考」でひとつに絞る(重要思考の解説は後ほど)

・それを、数行かかってもいいので、1文で書き下してみる

・その文を推敲してシンプルにし、短く(できればー行に)する

 シンプルにする、とは、装飾をなくす、漢語などを減らす、定量化・具体化する、ことで文を短くすることです。目標は1行、38文字以内です。

 これらはすべて、「伝えることを絞り込む」作業です。主語・述語・目的語などが明確で、主張がはっきりした短い文(文章でなく)を書けるようになれば、相手への伝わり方は劇的に向上します。

 

戦略(2)
構造化する→迷わせない

 いろいろ書いたあと戦略(1)を使って、中心とするメッセージが決まり、短く書けたとします。そうしたら初めて、全体をつくっていきます。

 その中核の1行(メッセージ)を補強するために書くのですから、要らないものは捨て、足りないものは補うことになります。そして、その1行をどう支えているのかを明示していきます。

・2~3文で塊をつくる

・定型の構造パターンに当てはめて、捨てる・加える

・接続詞や見出しでアドレッシング(位置や方向を示す)する

 起承転結などの定型の構造パターンは、ヒトがこれまで生み出してきた叡智の結晶でもあります。それに従うことで、わかりやすくなることはもちろん、読むヒトは自然と笑ったり深く考えたりするのです。

 でも構造化することの第1の価値は、自分の考えが深まることにあります。何が足りないのか、論のどこが弱いのか、がわかります。そしてその構造を地図にして、住所や分岐点をカーナビのように示すことで、読み手は文章の森の中で迷うことがなくなります。構造は、自分と相手を結論に導く最強のツールなのです。

 

戦略(3)
波をつくる→寄り添う・揺らす

 いったん書いたら、しばらく寝かせてから読んでみましょう。読み手の気持ちになるためです。他人に読んでもらってもいいでしょう。私はたいていこの作戦です。そこで、わかりやすさとともに、言いたいことが強く伝わるかをチェックします。

 もし伝わっていなければ、それを強調するための方法を使います。読み手の心の動きを想像し、誘い導き、ひっくり返すのです。

・1人問答の形で誘導する

・あえて「書かない」ことで想像させる

・期待や常識と違う流れ(裏切りや驚き)にする

 ピラミッドはシンプルで美しいですが、石材一個一個を積み上げるのは退屈です。退屈は読み手の心を殺し、折角の主張をつまらなく見せます。だから、少し遊び心を出して、刺激をつくるのです。

 文を短く書き、文章を構造化することで、書きモノはわかりやすくなります。でも、相手に行動を促し、自然にどこまでも伝わっていく文章にしたいのならば、「波をつくる」に挑戦しましょう。でも気をつけて。刺激ばかりではまた麻痺するか、疲れるかになってしまいます。ここぞというところで、上手な波を!

 

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