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ディズニーのDNA ~ ゲストの不満をチャンスに変えるやり方



2014年05月14日 公開

ホリテーマサロン テーマパーク研究会

《『ディズニーランド成功のDNA』より

 

マイナスをプラスに転じるコンプレイン委員会

 ディズニーリゾートの中にコンプレイン委員会というものがあります。ゲストの不満想定委員会ですが、このコンプレイン委員会は、実は透明性のためにあるのです。現場にいるキャストは、ゲストはこういう不満を持っているかもしれないと思っていても、なかなか口に出して言えません。それを吸い上げるのがコンプレイン委員会です。

 顧客は、いつも企業に対して不満を持っているものです。顧客の不満がない企業はありません。大きな不満はなくても、小さな不満は必ずあります。ディズニーリゾートにもいろいろな小さな不満が寄せられます。

 小さな不満を改善していけば、大きなクレームにはなりません。そこでこの小さな不満に対して先に手を打っていこうというのが、コンプレイン委員会の役目です。この委員会を機能させるため、社員はゲストが不満に思うことを常にあげていきます。

 キャストは、「あそこで、こんなことを聞きました」「ここでは、あんな不満を聞きました」ということをあげ、それを委員会で検討して対処していくのです。

 ゲストに不満が出ることを想定できないのは、ディズニーリゾート側の問題ですから、いつもゲストの不満に対して、全従業員が目を光らせています。そしてあがってくる不満は、サービスの改善になるだけではなく、経営の改善にも大きく役立ちます。

 問題が表面化した時点で、誰かが「こうなるのではないかと思っていました」と言ったら、それは問題がブラックボックス化していたということですから、駄目です。小さな不満を吸い上げて、見える化することが非常に大切で、そこからいろいろな改革ができるようになるのです。

 

看板の設置より、人を増やすのがディズニー流

 事例を紹介しましょう。アドベンチャーランドの森の下のところにあるポップコーン売り場で、キャストがポップコーンを売っていると、トイレの場所を聞いてくるゲストがときおりいました。そのたびにキャストはポップコーンを売りながら、「あちらです」と指し示すだけでした。ポップコーン売り場のキャストは1人でしたから、売り場を離れるわけにはいかないので、そうするしかありませんでした。

 この話がコンプレイン委員会にあがってきました。ゲストが、トイレの場所がわからないと言っているのですから、これは非常に大きな問題です。

 そこで、コンプレイン委員会の委員長は、この問題を逆に利用できないかと考えます。この考え方こそ、コミュニケーションの基本です。問題があれば改善すればいい、と考えるのが今までのやり方です。ミスを少なくすることばかり考えて、そこで思考が終わっています。人と人とのコミュニケーションは、そこからどうやって信頼関係を回復し、プラスにするかが大事なのです。

 そこで出た結論は、まず1日の中でパーク内でトイレの場所を聞きにくるゲストが何人くらいいるか、男女別・時間帯別の表をキャストにつくってもらうことから始めました。すると、いつ、どこで、トイレの場所を聞かれたのかが、つぶさにわかってきたのです。

 それで、何をしたかというと、最初に声のあがったポップコーン売り場にはキャストをもう1人増やすことにしたのです。普通ならば、トイレの場所を示す表示を掲げるだけですませるところを、キャストを2人にするというのは、ディズニーランドがいかにコミュニケーションを大切にしているかの表れです。

 たしかに表示を掲げればミスは減りますが、ミスはなくて当たり前なので、苦情がなくなっただけで、誰も評価したり、感心したりしてくれることはありません。

 しかし、ポップコーン売り場で忙しく働いているキャストに「トイレはどこですか」と聞いたとき、1人のキャストが手を止めて売り場を離れ、トイレまで案内してくれたらどうでしょう? しかも、その案内の途中で、キャストがゲストにいろいろ話しかければ、看板1枚にはできないコミュニケーションをとることができます。

 ディズニーランドはゲストに幸せになってほしい場所ですし、心の豊かさを育てる場所です。ですから、その理念を考えていけば、そこでしなくてはならないことは自ずと見えてくるはずです。

 そのために、経営陣も現場のキャストの意見を吸い上げて、柔軟な判断ができるように頭を柔らかくすることが常に求められています。問題が起こったときに、場当たり的に対処して問題を解決するのではなく、もともとの理念までさかのぼって何をすべきか考えることが必要なのです。

 そのように考えると、どんなところでも、やれることはまだまだたくさんあるでしょう。ご自分の会社や組織、店舗を振り返ってみて、不満を吸い上げてみてください。不満の数がたくさんあるほうが、できることが多いのですから、もっともっとよくすることができるのです。

 そうやって考えると、今までのようにミスを少なくしよう、不満やクレームを少なくしようという考え方から、「この不満をどうやったらプラスに持っていけるか」と、考えを転換できれば、組織としては何歩も前進したことになります。

 ディズニーランドのやり方を見ていると、目からウロコが落ちるようなことがたくさんあります。常識と思っていることが本当に正しいことだったのか、場所がわからなければ道案内の表示を出せばいいというのが唯一の解答だったのか、もう一度、考えてみてください。

 

<書籍紹介>

ディズニーランド 成功のDNA

ホリテーマサロン テーマパーク研究会著

東京ディズニーランドの成功の秘密、そしてそのホスピタリティの源流は、日本への誘致・建設のコンセプトのなかにあった。

 

<著者紹介>

ホリテーマサロンテーマパーク研究会

ホリテーマサロンは、メディア関係者が東京ディズニーランドの総合プロデューサーを務めた堀貞一郎氏を招いて開催していた朝食会が発展してできた勉強会です。この会は、毎回1つのテーマについて講師から話を聞くことと、1業種1会員の異業種交流会であることが決められていました。後に帝国ホテルで毎月開催されるようになり、2月と8月を除いて、毎月1回ずつワインやビールを片手に、招いた講師の講演を聞いたあと、フリーディスカッション形式で知見を広めていきました。講師には。事業家・作家・芸術家・学者・アスリートなど、さまざまな方々が登場しました。ときには、堀氏自身が講師となって、「東京ディズニーランドを誘致した当時の話」や、「モーツァルトの楽しみ方」「長江とダム建設と西遊記」「歌舞伎はこう見ればもっと楽しい」など多彩な話が繰り広げられました。

2012年5月の記念講演を最後にホリテーマサロンは幕を閉じましたが、その後、株式会社プラネットの代表取締役・小池和人氏を中心に「テーマサロン」として引き継がれています。



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