変化を促すには、まずは絶対視している現状に揺らぎを与えること
2011年04月26日 公開 2022年11月10日 更新
人は"現状に固執"する傾向がある。そのため、相手に何かを変えて欲しい時にいきなり変化を要求しても、受け入れてもらえないのは当然のことである。
企業変革コンサルタントの小笹芳央氏は、変化を生み出すには"3つのステップ"が必要だと主張する。そのステップとは何か、どのように実用していけばいいのか。詳しく解説していく。
※本稿は、小笹芳央 著『変化を生み出すモチベーション・マネジメント』(PHPビジネス新書) より、内容を一部抜粋・編集したものです。
変化を生む"3つ"のステップ
変化を生み出すためには、3つのステップが必要だと私たちは考えている。3つとは、「アンフリーズ (Unfreeze、解凍)」、次が「チェンジ(change、変化)」、そして最後が「リフリーズ(Refreeze、再凍結)」である。
すなわち変化に対して氷のように身を固くしている状態を溶かし、方向性を提示して変化を促し、変化が後戻りしないように再度固めるというステップである。
まどろっこしいと思われる読者もいるかもしれない。確かに、誰かを変えようとするときは「このように変わってほしい」という「チェンジ」のアプローチから入るのが普通だろう。
しかし換言すれば、それは「変化」と「現状維持」の2つの選択肢のうち、「変化」を選択することを迫っているということだ。そして繰り返しになるが、人は現状に固執する傾向がある。だとすれば変化という選択肢をいきなり提示しても、なかなか変わらないのが現実なのだ。
だからこそ、変化を促す「チェンジ」の前に、氷を溶かす「アンフリーズ」のアプローチが欠かせない。「アンフリーズ」 のためには、これまでの自分の考え方・やり方が最善であると絶対化している現状を、「他の考え方・やり方もあるよ」と別の方法を見せて相対化することである。
前掲のイラストを見てほしい。この選択が絶対だと思っている人に、「それはAというやり方ですね。であればBも、Cも、そしてDという選択肢もありますよ」というアプローチを行うことが「アンフリーズ」だ。
これによって、人はこれまで自分が好み選んできた方法や考え方だけでなく、他にも可能性があることに気付く。
そうなって初めて変化を促す「チェンジ」のステップに入ろう。望ましい選択を行うよう、その選択肢の魅力を伝えたり、変化によるリスクがないことを伝えたりして方向付けし背中を押すのだ。
そして最後のステップ「リフリーズ」で、その変化が正しかったと確信できる、あるいはその変化した行動を習慣化するような仕掛けを施していく。この3ステップを、多くの人が経験する部活動を例にとって考えてみよう。
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3つのステップで、"ピッチャーの投球フォーム"を変える