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社会

岡田斗司夫 今の若者が「大事なのはお金じゃない」と語る理由

岡田斗司夫(社会評論家)

2014年11月19日 公開 2023年01月12日 更新

最高のお米はタダで出まわっている

専門誌がこぞって興味を抱き、読み解こうとしている「評価経済」とはいったい何なのか?

話がちょっと難しくなってきましたから、少し具体的な例をあげて説明しましょう。

たとえば、お米。

お米って、じつは農家でつくっている総量の20パーセントから30パーセントは、世の中にタダで流通しています。知り合いに農家の方がいる人は、思い当たるふしがあるかもしれません。農家は自分のところで獲れたお米の一部を、親戚とか知り合いにタダで配っているのです。

これを「縁故米」とか「贈答米」と呼びます。

つまり、「お米の2~3割は、お金を払わないでも食べられる」ことになります。

お米だけではありません。農家と漁師さんはむかしからお米と魚を交換している。多くの人が「買って当然」と思っているものが、第一次産業で働く人たちのあいだでは、無料でやりとりされていたりするんです。

このやりとりこそ、評価経済の基本です。

貨幣経済から評価経済への移行について語るとき、「お金を使わずに、どうやってモノをやりとりするのか」というツッコミがたいてい入ります。が、表面化していないだけで、現に世の中の何割かの人は、お米を手に入れるためにお金を払っていません。

日本産のお米をすべて日本人全員が同程度に食べると仮定すれば、理論的には、日本人のうち4000万人は、お米を「ベーシックインカム」として支給されているのと同じなのです。

そして、そのベーシックインカムの出資元は、「お米を手に入れるためには貨幣経済しかない」と思い込んで、消費税やら手間賃やらを含めたお金を払ってお米を手に入れている「僕たち」です。

しかも、タダで出まわっているのは「いちばんいいお米」。

売られているのは「次にいいお米」。

だれでも、身内に配るものにいちばんいいものをまわします。

お米でも牛乳でも、たいていは農家から農協が一括して買い上げる。そして、品質を一定に保つために、すべてを混ぜてから出荷します。だから、一軒一軒の酪農家が「おいしい牛乳をつくろう」とこだわりをもって完成したいちばんおいしい牛乳は、自分たちで飲んだり親戚に配られたりしている。貨幣経済に乗っかる以前に「贈与」されているんです。

その贈与のための経費や生産費、輸送料を「2番目のお米」をお金で買っている僕たちが払っていて、それをお米や牛乳の「定価」だと思い込んでいるのです。

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「お金がない世界」の足音

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