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実践 7つの習慣 パラダイムを変えれば結果も変わる



2015年03月10日 公開

佐々木常夫

《『実践7つの習慣 何を学び、いかに生きるか』より》

人はみんな「パラダイム」という眼鏡をかけて生活している

 『7つの習慣』の中に出てくる重要なキーワードの1つに、「パラダイム」という言葉があります。

 パラダイムとは、平たく言えば物事の見方や認識の仕方のことです。パラダイムは人によって異なります。コップの中に半分残っているジュースを見て、「もう半分しか残っていないのか」と思う人と、「まだ半分も残っているぞ」と思う人がいるのは、それぞれ異なるパラダイムを持っているからです。

 言ってみれば私たちは、パラダイムという眼鏡をかけて生活しています。ジュースが入っているコップを見て、「もう半分しか残っていないのか」と思う人は悲観的なパラダイムという眼鏡をかけ、「まだ半分も残っているぞ」と思う人は楽観的なパラダイムという眼鏡をかけています。

 ところが人は、自分が他人とは違うパラダイムの眼鏡をかけて世界を見ていることをほとんど意識していません。コヴィー博士も次のように述べています。

 誰しも、自分は物事をあるがままに、客観的に見ていると思いがちである。だが実際はそうではない。私たちは、世界をあるがままに見ているのではなく。私たちのあるがままの世界を見ているのであり、自分自身が条件づけされた状態で世界を見ているのである。何を見たか説明するとき、私たちが説明するのは、煎じ詰めれば自分自身のこと、自分のものの見方、自分のパラダイムなのである。(p22)

 コヴィー博士は、間違った地図を手にしても目的地にたどり着けないのと同じように、間違ったパラダイムのままでは、人はけっして成功を手に入れることはできないと言います。

 組織のリーダーでいえば、部下を見るときに短所ばかりに目が向くリーダーと、部下の長所を見つけようとするリーダーがいるとします。前者のリーダーは「人の短所に目を向ける」というパラダイムの持ち主であり、後者のリーダーは「人の長所に目を向ける」というパラダイムの持ち主です。どちらのリーダーが部下の能力を上手に引き出して成長を促すことができるかというと、断然、後者のリーダーです。逆に前者のリーダーは、相手の長所ではなく短所ばかりを見てしまうために、部下の可能性を潰してしまうことになりかねません。パラダイムの違いが、結果の違いを招くわけです。

 

パラダイムを知っておくと、意見が対立しても腹が立たない

 コヴィー博士が言うよりに、私たちは普段自分のパラダイムを意識できていません。「あなたのパラダイムはどんなものですか」と人から聞かれても返事に窮してしまうでしょう。そこで大切になるのは、「自分もまた人とは異なる偏ったパラダイムを持っている」ということをまずは自覚することです。そのうえで人と異なる判断を下すときの自分のモノの見方は偏りがなく、現実性のある妥当なものかどうかを、常に現実と擦り合わせながら検証してみる必要があります。また自分と意見が合わない人がいるときに、相手のほうが間違っていると決めつけずに、その人の意見に耳を傾けてみることも大事です。すると徐々に自分のパラダイムを偏りのないものへと修正していくことが可能になります。

 ちなみに私の場合はビジネスメールを送信するときには、仕事相手だけではなく、CC機能を使って必ず秘書にもメールを同報送信するようにしています。自分の考え方やメールの書き方が偏っているときに、秘書に指摘をしてもらうためです。

 また東レ時代、会議で司会を務めるときには、まず自分の意見を言ったあとに、次に自分の意見に一番異論を持っていそうな人物を指名して意見を述べてもらりようにしていました。チームの中では自分がリーダーだったとしても、必ずしも正しいパラダイムを持っているとはかぎりません。現実を間違って認識している可能性もあります。そこでまったく別の視点の持ち主の意見を聴くことで、認識の修正を図るわけです。事実、私は部下からの指摘で、物事の見方や考え方を改めさせられたことが何度もあります。

 こんなふうに日々のちょっとした心がけで、自分の中にある「偏ったパラダイム」を「バランスのとれたパラダイム」へと修正していくことが可能になります。

 また「自分のパラダイムと他者のパラダイムは違う」ことを自覚しておくと、自分の意見に反対意見を言う人が現れても。それほど腹が立たなくなります。そしてその人の反対意見に対してだけではなく、なぜその人がそういう意見を述べているのか、相手がベースとして持っているパラダイムにまで意識が向かうようになります。「この人はこういうパラダイムの持ち主だから、こんな意見を言っている」ということを理解できるようになるわけです。すると意見が対立したときでも、相手のパラダイムを受け入れたうえで、より良い解決案を探り出そうとするようになります。

 コヴィー博士が挙げている「7つの習慣」のうち、第5の習慣は「まず理解に徹し、そして理解される」というものですが、相手を理解するためには、人はそれぞれ自分とは違うパラダイムを持っていることを受け入れることが大前提となります。

 

原則中心のパラダイムヘと、パラダイムシフトを起こす

 これまで持っていたパラダイムが、まったく新しいパラダイムへと移行することを「パラダイムシフト」といいます。人々が天動説を信じていた時代に地動説を唱えたコペルニクスは、天文学の世界にパラダイムシフトを起こしました。またこれまで部下の短所ばかり見ていたリーダーが、部下の長所に目を向けられるよりになることも、一種のパラダイムシフトであるといえます。

 コヴィー博士は、幸せで充実した人生を手に入れたければ、今まで自分が持っていた偏りのあるパラダイムと決別し、新しいパラダイムにシフトすることが不可欠であると述べています。その新しいパラダイムとは、前項で解説した「人間社会の普遍的な原則」を中心にしたパラダイムです。

 「公正さ」や「誠実」「正直」といった普遍的な原則に則ったパラダイムを持つことは、より正確な地図で世界を見られるようになることを意味します。その地図は時代や国や文化を超えて共通するものですから、どんな世界で生きていくことになったとしても、どんな場面に直面にしたときでも通用します。正しい地図を手にすることは、「幸せで充実した人生を手に入れる」というゴールへの到達を確実にします。

 そしてパラダイムシフトによって物事の見方や認識の仕方が変わることは、自分自身のあり方が変わることにもなります。

 パラダイムと人格を切り離すことはできない。人間においては、あり方は見方に直結するのであり、どう見るかとどうあるかは強い相関関係で結ばれているからだ。あり方を変えずに見方を変えることはできない。その逆もまたしかりだ。(p27)

 パラダイムを変えることは、自分を変えることでもあるのです。
 

<書籍紹介>

実践 7つの習慣
何を学び、いかに生きるか

佐々木常夫著/フランクリン・コヴィー・ジャパン監修
本体価格1,300円
わかる、役立つ、できる! 世界的大ベストセラーを日本人の働き方、生き方に即して解説。人生が劇的に変わる一冊



著者紹介

佐々木常夫(ささき・つねお)

佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表取締役

1944年秋田市生まれ。6歳で父を亡くし、4人兄弟の次男として母の手ひとつで育つ。1969年東大経済学部卒業、同年東レ入社。30代前半に倒産しかけた会社に出向し再建。1987年社長のスタッフとして経営企画室で経営革新プログラムを担当。1989年繊維の営業でテグス(釣り糸)の流通改革を断行。1993年プラスチック事業企画管理部長。2001年取締役経営企画室長。2003年東レ経営研究所社長。2010年同社特別顧問。2013年より佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表取締役。著書に『会社で生きることを決めた君へ』(PHP研究所)などがある。

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