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仕事はすべて「逆発想」で行け!

2015年03月12日 公開

川北義則 (出版プロデューサー、生活経済評論家)

《PHP文庫『できる男は「常識」を信じない』より》

できる男は常識を信じない

 

 

皆が「そうだ!」とうなずくときは、疑ってみる

 「全員が賛成したら、その計画は危ない」

 戦前に活躍した実業家・堤康次郎氏の残した名言である。

 この言葉はいまでも通用する。新しい試みというものは、だいたいそうである。だが、わかっているようで、このワナにはまってしまうことが多い。

 会社の会議などで、みんなが賛成すると「うまくいかないはずがない」と思ってしまう。これはなぜなのだろうか。

 雰囲気に惑わされて、冷静な判断ができなくなってしまうのか。それほど単純なことではない。このことを理解するには、社会現象の盛衰パターンを知る必要がある。

 アメリカの社会学者エベレット・M・ロジャーズによれば、流行のような社会現象が伝播していくのは、次の5つの人間の登場によるという。

 まず革新者が現れて、何か新しいことを始める。

 それを見てすぐに取り入れるのが初期適応者である。しかし、この段階ではその現象はまだ大衆化されない。次の前期追従者の登場で一気に社会現象化する。

 続いて後期追従者が大量に現れる。このー群が現れる時期が大流行期に当たる。そして最後に遅滞者が現れると、流行現象は一巡して終息する。

 皆が「そうだ、そうだ」とうなずくのは、後期追従者が現れた時期。したがって流行はまもなく終わるという段階なのだ。

 ここからわかるのは、皆が賛成することは疑ってかかったほうがいいということ。ところが、なかなかそれに気づかない。皆が賛成すると、それが正しいように思えて、逆らえなくなる。選挙のときに吹く風というのがそうだ。

 小泉政権時の郵政解散でも、民主党への政権交代選挙でも、いわゆる風が吹いて、それに乗ったほうが圧勝した。こういうとき、大衆は熱に浮かされたように1つの方向を向き、自ら風をつくってしまうのだ。

 だが、そのような現象は長続きしない。しかも、もう終わりに近い。だから新しい試みで異論が出ないようなものは、実のところ新しくも何ともない。つまらないアイデアであることが多いのだ。

 だからといって皆が賛成することに、1人だけ反対するというのも勇気がいる。では、どうすればいいか。

 とりあえず「疑ってみる」ことだ。眉につばをつけるとは、そういう意味である。疑いの目を持っていれば、雰囲気に巻き込まれることなく、冷静な判断ができる。

 日本人には、何かを決めるとき「全会一致」を何かよいことのように受け止める傾向があるが、これは改めたほうがいい。

 例えば出版の企画会議などでも、10人のうち8、9人が賛成するような企画は面白くない。誰でも考えそうな企画だからだ。それより、1人か2人くらいの賛成者がいる企画のほうがユニークなはず。もっとも誰も賛成しないような企画は。まったくのマト外れか、あまりにも先を行き過ぎた企画なのだろう。

 ヒットを飛ばした新商品とか、後になって「大英断だった」と評価されるような決断は、だいたい猛反対の中から生まれている。先のロジャーズの理論で言えば、革新者か初期適応者の段階である。

 あなたもデキる人間になりたいなら、皆と同じレベルで発想し、行動していてはダメだ。革新者か、せめて初期適応者になる必要がある。

 ちなみに新しい社会現象が起きたとき、最も大きな果実を手にするのは、最初に始めた革新者ではなく、初期適応者であるという。サラリーマンの生き方として、このことは参考になるのではないか。

 

明日できることは今日しなくていい

 「今日できることを明日に延ばすな」

 すぐやればできることを、明日、明日と一日延ばしにしていると、いつまでたってもできない。できることはさっさとやってしまえ一一有名な格言である。

 この心構えでいると、慌てることもなく、人生は順調に運ぶというのだが、どんなよいことも過ぎれば弊害も出てくる。現代人は少し「急ぎ過ぎではないか」と私は思っている。時には逆に考えてみるのもいいのではないか。

 昔の人が「できることをさっさとやれ」と言ったのには、それなりの理由があったのだろう。例えば洗濯物がたまっている。着替えはあるから。「今日しなくてもいい」のだが、昔は洗濯機がない。乾燥機もない。

 となれば。天気のいい日にさっさとしておかないと雨が降ったら困る。一事が万事、こんな理由があったのだ。この種の不便さを克服するために、いろいろな文明の利器が生まれた。いま、そういうものに囲まれて暮らす現代人は、もっとゆとりを持っていいはず。そんなに気ぜわしくする必要はないのではないか。

 明日やればいいことまで、なぜ今日やらなければいけないのか。もう「できるときにやっておかなくては……」「食えるときに食っておかなくては……」という時代ではない。「一日の苦労は一日で足れり」でいいではないか。明日のことは明日考えればいい。それくらいの心の余裕が欲しい。

 心に余裕がないからストレスがたまる。ともあれ、いま日本人にいちばん必要なのは、ストレス軽減ということだと思う。働く人間の間で、これだけ「うつ」がはやっているのだ。 GDP (国内総生産)で中国に抜かれたことをきっかけに、国全体がスローライフに徹してみるのもいいではないか。

 経済的には多少の落ち込みは避けられないだろうが、日本はまだまだ世界有数の金持ち国である。それくらいのことをしても罰は当たらない。日本は政治家をはじめ、マスコミ、知識人、文化人、みんな貧乏性過ぎる。

 イギリスの心理学者が世界32都市を対象に、歩行者の歩く速度を計測した面白い調査結果がある。繁華街の平らな場所で、大きな荷物を持たない人々が、60フィートを何秒で歩くか、気づかれないよう測ったら、10数年前に行われた同種調査よりも平均で1秒以上速くなっていたそうだ(2007年実績)。

 いちばん速かったのはシンガポール。以下、ベルリン、ニューヨーク、ロンドン、パリなど世界の大都市が続いて、東京は19位と予想外に下位だった。とはいえ、地方からたまに東京へ来た人は「東京の人は歩くのが速いねえ」と驚く。

 私も若い頃は早足だった。いまは年齢もあるのだろうが、努めてゆったり歩くようにしている。別に急ぐ必要がないからだ。世界的に人の歩行速度が速くなっているのは、それが必要だからだろう。

 日本は世界に一歩先んじて、高度成長を遂げスピード社会をつくり上げた。やっとみんなが追いついてきたのだ。その日本が彼らの後を追う必要はない。今度はスローライフを日本が提示すればいい。それが、世界で最も早く高齢社会を迎えた国の果たすべきことだろう。

 「金ができてかえって馬鹿にされたりするは、金の使い方が馬鹿げているのである」(三宅雪嶺)。時間も同じである。「今日できることを明日に延ばすな」はもう古い。これからは「明日できることは今日のうちにするな」でいくべきだ。

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