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仕事

仕事はすべて「逆発想」で行け!

川北義則(生活経済評論家/出版プロデューサー)

2015年03月12日 公開 2024年12月16日 更新

 

本当は「英語力」なんて必要ない

 「日本語の読み書きも不十分なのに、英語を勉強してどうする?」

 小学校で英語が必修になると聞いて、こんなふうに感じていたのだが、いよいよ実施されることになった。また、企業では楽天やユニクロが、英語の社内公用語化を強力に推し進めている。これに連動する企業もけっこうあるらしい。

 いよいよ日本のビジネス界もついに英語が不可欠に……と思いきや、意外に意外なデータがもたらされた。どう意外かというと、「日本で働く限り、英語はまったくいらない」という内容なのである。

 リクルートの調査によれば、2010年、国内で転職に成功した人に「英語の実力」を聞いたところ、「まったくなし」と答えた人が46%もいた。英語の実力が「必要だった」と答えたのは3割未満。つまり、転職者10人のうち7人は英語なんか関係なく転職が可能なのである。

 もっともこのことは「英語が必要とされない」ということではない。外資系をはじめ英語力が必須な企業も多数存在する。ただ、そういう企業が求める英語力はハイレベルなので、必要な部署には転職者とは別に専門家が配されている。したがって、転職で入社してくる人間は、特に英語力を求められない。

 こうした傾向は今後も続くだろう。つまり、評論家などが盛んに言ってきた「これからは英語ができなければ働き場所も見つからない」などということはない。大げさなのだ。そういう会社も増えてくるとは思うが、就職戦線を根底から覆すようなことにはならないだろう。

 その代わり、ほかのスキルは高いレベルがいっそう求められる。これは避けられないことだろう。だが、業務遂行能力が一流なら、英語がダメでも雇ってもらえるというのは、日本の特殊事情かもしれないが、朗報であると思う。

 かねてより日本人にとって英語は頭痛の種だった。中学から教わるのに、少しも上達しない。原因は教育方法にあるといわれているが、改善される見通しはない。おかげで、日本人の英語力は、東南アジア諸国で最低レベル。タイにもフィリピンにも負けている。

 これをもって、これからの時代、日本のビジネスの停滞を心配する向きもあるが、私はそれはどのダメージはないと思う。個人的に言えば、中国もヨーロッパ諸国も「もっと日本語を覚えろよ」と言いたいくらいだ。

 日本がタイやフィリピンにまで英語で負けているのは、教え方以外にも理由がある。夕イやフィリピンの言葉には、先進国の専門用語に匹敵する語彙がもともとない。だから英語以外に伝達手段がないのだ。

 日本語はどうか。どんなに難しい先進国の専門用語が出てこようが、それに匹敵する日本語がちゃんと存在する。だから、日本語で国際会議ができる。つまり、日本は言語文化レベルが高いから、英語が苦手でも済んできた。こんな国は日本以外にない。日本人が英語力の低い理由は、こういうところにもある。

 いまでも私は、ユニクロや楽天のとった英語の社内公用語化には首をかしげざるをえない。日本人同士の会議まで英語だという。

 語学はあくまでスキルの一環。それを強制して、企業文化が失うものはないのだろうか。いったい、どんな結果が出るのか注意深く見守りたい。

 

<書籍紹介>

できる男は「常識」を信じない

川北義則著

本体価格620円

「皆がうなずくときは疑ってかかれ」「明日できることを今日のうちにするな」など、世の中の常識を覆す「逆転の人生法則」を説く。

<著者紹介>

川北義則(かわきた・よしのり)

1935年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。東京スポーツ新聞社に入社し、文化部長、出版部長を歴任。77年に退社後、独立して日本クリエート社を設立する。出版プロデューサーとして活躍するとともに、生活経済評論家として新聞、雑誌などさまざまなメディアに執筆。講演も多い。
おもな著書は『「20代」でやっておきたいこと』(三笠書房)、『男の品格』『男の生き方』『みっともない老い方』(以上、PHP研究所)など100冊を超える。

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