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仕事

これから伸びる仕事、消滅する仕事

谷本真由美(作家/元国連職員/ツイッター界のご意見番)

2015年10月01日 公開 2023年03月31日 更新

 

人々から求められる仕事を選べ

将来も仕事をしていきたいのであれば、需要が減る仕事、つまり、人々から求められなくなる仕事は避けなければなりません。

例えば、40年前は、製造業で製図技師が大活躍していましたが、CADが普及するに従って、手で図形を書く仕事の需要はなくなり、その仕事は、ほぼ消滅してしまいました。当時は安定した技能職で、それなりに良い収入を得られた仕事で、まさか消滅するとは思っていない人が少なくなかったのです。

さて、仕事の未来を予測するのには何を参考にしたら良いでしょうか? 私がおすすめしたいのは、一定期間に渡って、仕事の需要と供給や、報酬の推移を定点観測している学術研究や企業による調査です。

例えば企業が実施した調査に関しては、「The Jobs Rated Almanac: The Best Jobs and How to Get Them」(iFocus Books)という書籍が参考になります。同書は、1988年から、仕事について、各種の評価を定点的に実施しています。アメリカにおける職業のトレンドを調査しています。報酬、ストレス、就労環境、将来性といった様々な側面から200の職業を調査し、就職するにはそんなスキルが必要か、といった就職情報も合わせて紹介しています。

この書籍の一番面白いところは、30年近くにわたって、定点観測しているため、時代の移り変わりにより、仕事の報酬や将来性の推移がわかることです。

データの中心はアメリカですが、しかしながら、同書が提示する変化は、決してアメリカ独自のものではありません。グローバルに起きている経済の変化ともリンクしています。

例えば、2002年には、編集者の仕事というのは、上から数えて31 番目に良い仕事でしたが、2015年には最下位の200位になってしまいました。編集者の報酬や職業安定性の凋落というのは、決してアメリカだけの話ではなく、ヨーロッパや日本、アジアでも起こっていることです。デジタル革命とインターネットの普及により、出版業界の収益構造は悪化し、編集者の仕事がどんどん減っており、その動きはいまやグローバルなのです。

 

グローバリゼーションが進む中で生き残れる仕事

同書の2015年の最高の仕事ランキングの上位30は、「数値やデータを扱う仕事」「IT関連の仕事」「医療関連の専門職」の3つのカテゴリーに独占されています。

1位のアクチュアリー(保険数理士)は高度な数学の能力が必要です。アメリカだけではなくヨーロッパでも人材不足の職業です。2位の聴覚診断士は医療系の仕事で大変専門性の高い仕事です。3位は数学専門家、4位は統計専門家です。どちらも様々な業界で需要がある仕事です。

その他、ランキングの上位を占めるのは、バイオメディカルエンジニア、データサイエンティスト、システムアナリストなど、専門性が高く、理数系の能力が要求される仕事です。

いずれの仕事も、アメリカだけではなく、ヨーロッパでも人材が不足しており、将来性のある仕事ばかりです。日本では地味な印象の「理系」の職業が少なくありませんが、グローバルな世界で脚光を浴びているのは、このような仕事なのです。

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生き残りたければ「会社名」ではなく「職業」を選べ

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