鈴木明子のフィギュア観戦術(1)細かいルールを知らなくても楽しめる!?
2015年12月18日 公開 2024年12月16日 更新
『プロのフィギュア観戦術』(PHP新書)より
スポーツとして、芸術として
スポーツとして観るか、芸術としてみるか、大きく分ければ、フィギュアにはこのふたつの見方があります。そのタイプによって、お勧めするポイントが違ってきます。
「細かいルールを知らなくてもフィギュアを楽しめるのでは?」
私はそんなふうに思っています。
乱暴すぎる言い方かもしれませんが、得点ばかりがフィギュアスケートのおもしろさではありません。採点はあくまで訓練されたジャッジの仕事。「3回転か、2.65回転なのか」を見極めることはなかなか難しいと思います。
その部分はジャッジに任せて、演技を観ることを楽しんでほしいのです。ルールに縛られすぎると、競技本来の醍醐味やすばらしさを見逃してしまうことになるかもしれません。
ジャッジによって採点にばらつきがあるのも、フィギュアの特性です。機械で判定しているわけではありませんから、ファンの方が納得できない事態も起こることがあるでしょう。
そこは、少しおおらかにみていただければと思います。
フィギュアスケートはスピードや強さを争うものではありません。スケートの技術を駆使しながら、限られた演技時間のなかで「表現」を競うものです。だから、技術面と芸術面の両方から楽しむことができます。
フィギュアスケートを初めて観る人なら、「ああ、この曲、知っている」「あの選手の衣装がきれい」「スピンのスピードがすごい」「あの子の顔が好き」というところからフィギュアスケートの世界に触れてもいいと思います。
最初は、自分のお気に入りの選手を見つけることが大事です。たとえば、ソチオリンピックでフィギュアに興味を持った方は、好きな選手に注目して演技を観ているうちに競技のおもしろさに気づくでしょう。
しばらくすると、自分のタイプがわかるようになってきます。ジャンプが得意な選手が好きなのか、滑りがなめらかな人が好きなのか、アップテンポの楽しい曲が好きなのか、フィギュアを観ていて何が楽しいのかがハッキリしてくるはずです。
子供のころに憧れたのは、カタリナ・ビット
私は4歳のころにフィギュアスケートを始めましたが、ジャンプが得意ではありませんでした。そのせいか、競技を見るときに、芸術的なおもしろさを求めていたように思います。
音楽に合わせた表現に注目をしていました。
小学生のころに好きだった選手は、カタリナ・ビットさん(旧東ドイツ)。子供ながらに、彼女の情熱的な演技に訴えてくる思いを感じました。何かを伝えようという気持ちが強い、「魅せる」という部分に長けた選手だったと思います。彼女の『カルメン』というプログラムは、ずいぶん経ってからビデオで観ましたが、心をわしづかみにされました。
ミシェル・クワンさん(アメリカ)も印象深い選手です。ほかのスケーターと比較して何かが突出しているというよりも、ミスがないタイプで、「ミス・パーフェクト」と呼ばれていました。彼女の『サロメ』というプログラムを観たとき、大きな衝撃を受けました。
「フィギュアスケートなら、こんなすごい表現ができるんだ!」と。
クワンさんはソチオリンピックにコメンテーターとして来ていて、一緒に写真を撮ってもらいました。私にとってはアイドル的存在だったので、素直に嬉しかったです。