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アンガーマネジメントとマインドフルネス

2017年07月25日 公開

菱田哲也・牧野宗永

すぐに怒る人は不安になりやすい!?

菱田 ここでは、一番コントロールが難しいと思われる「怒り」を題材にして考えを深めていきたいと思いますが、そもそも怒りがコントロールしにくいのはなぜでしょうか。

牧野 危険の回避などの本能の中でも優先度の高いものだからでしょうね。

菱田 怒りは自分に危険が迫って戦闘攻撃モードに入っているようなものですものね。危険などの不安に対する感情ですから根源的ともいえますね。

牧野 怒りは本当に怖いものです。怒り始めたら手がつけられないという人も結構いますから……。

菱田 ビジネスの組織でいえば、常に怒っている人がいると、部下や周りの人は萎縮していき、全体としてのパフォーマンスがかなり低下するということはよくあります。怒っている人相手に議論はできないですし、いつ怒りだすかわからないと怖くてものも言えないですからね。

牧野 先述したように、怒りは、相手のためによくないと思いがちですが、実は、自分自身を一番感情的にも身体的にも傷つけます。

菱田 脳は「不快の回避」という状態になり、闘争準備のためのホルモンが放出され交感神経が優位となって、コルチゾールという傷口の炎症を鎮める働きのあるホルモンが出てきて、海馬の抑制機能が低下し、古い本能の脳である扁桃体が暴走するということのようです。

私たちは1回怒っただけでも体力を消耗してしまいますが、それを続けていると扁桃体が敏感化し、あっという間に不安になったりするそうです。結果、心も痛んでくるし、体も痛んでくる。自分だけでなく、組織的にもよくないことですから、やはりどこかでストップすべきですね。そういった意味でも、自己制御力は重要になります。

 

お釈迦さまでも怒ることがある

牧野 「怒ったことで一番損をするのは自分」……怒る人もうすうす気がついているはずです。それでも、怒りをコントロールするのは難しい。そもそも仏教では「怒るな」とは言っていません。「お釈迦さまでも怒る」というおもしろい話もあるんです。

菱田 そうなんですか。

牧野 お釈迦さまが、道を歩いていたとします。そしたら、向こうから見知らぬ人がやってきて、すれ違い際に何を思ったか、お釈迦さまのほっぺたをパンと叩くんです。そうするとお釈迦さまも一瞬、「なんだ、こいつは!」とむかっと怒る。でも、次の瞬間には、その怒りの感情を手放します。そして、何事もなかったように、「なぜ、私を叩いたのか」と聞くわけです。叩かれた瞬間に怒りに飲み込まれるか、それとも、そこで怒ったことに自分で気づいて、怒りを手放してから次のアクションに移るのか。これが私たち凡人と悟りを開いた仏陀の違いだといいます。

菱田 なるほど。痛みを感じるのはどうしようもないが、その後のことは選択できるというお話ですね。なかなか難しいことですが……。

牧野 一番最初に自分の感情に飲み込まれずに「認識」したあと、冷静にその場を観察して、そして最善の解決策を選択する。それが仏陀のマインドなんですね。

これは、ビジネスで必要とされている「マインドフルネス」の効用そのものです。瞑想という仏教の修行は、心のあり方や心の動きに対する認識を実現するためにあるんです。

次に仏教では、「では、なぜ怒りが起こるのか」を分析します。怒りという感情は、相手が自分に対して攻撃したとか、ひどいことを言ったとか、大切にしている価値観を傷つけられたと感じたときに発生する反応です。

そして、その真ん中にあるのは、自分に対する過剰な執着です。私たちは、「自分」と「自分の~」という軸で世界を認識しています。自分の体、自分の家族、自分のビジョン、自分の価値観、これらを攻撃されたときに湧き起こるのが怒りの感情です。

こう考えて、自分や自分のものに対する執着を小さくすれば、怒りも自然に小さくなるだろうと考えるのが仏教なんです。

たとえば、「十円玉」が執着の対象だとします。それを失くすのが怖くて、私たちはギューッといつも握っている状態なんです。怒りは、私たちが執着して握りしめているものを奪ったり、傷つけようとするものに対する防衛反応といえます。餌を食べている動物に近づくと、餌を盗られると思って、ウゥーと威嚇してくるのと同じです。

怒りの根底にあるのは、自分や自分のものを傷つけられたり、奪われたりするのではないかという恐怖です。恐怖にさらされ続けるのは、ものすごいストレスですよね。そこで、お釈迦さまは言うわけです。「恐怖でがちがちで、すごくつらそうじゃないか。緊張を解いて、もっと楽になりなさい」と。

読者の方には、十円玉を、自分が執着しているものに置き換えていただきたいと思います。会社のポジションや収入、学歴、配偶者、いろいろなものがあると思います。

心の緊張を解いてリラックスしたらもっと楽になれることを教えるのが仏教です。失う恐怖でギューッと握り締めている状態が苦しみであり、楽になりたければ、握っている手を開いてリラックスすればいいと教えています。

多くの人は、手の甲を上に向けて手を開いてしまうと、十円玉が落っこちて、なくなってしまうと考えます。でも、仏教は十円玉を捨てろとは言っていません。仏教は、手の甲を下に向けて手を開いたらいいじゃないかと教えるわけです。そうすれば、十円玉もあるし、手も開いてリラックスできる。執着している対象そのものをどうこうするわけではない、執着の対象はあってもなくてもどっちでもいい。執着している私たちの心のあり方、対象との距離が重要なんだということです。

「持っていてもいいけれど、必要以上に執着すると、執着しているその心から苦しみが生まれる」ということですから、肩書きや配偶者、車やテレビなんでも持ったままでもいいのです。ただ、それに執着しすぎないように心と対象にほどよい距離を保ちなさいというのが、仏教の方法論です。「今握っちゃったな」と気づいて手を開く、ちょっと経つと今度はまた違うものを握っていて、それに気づいてまた開く、これを繰り返すことが仏教の「瞑想」なんです。

菱田 世の中には、「なんでも手放すことが大事。財産もすべて喜捨したほうがいいよ。何もかもすべて捨てるのが仏教なんだから」という誤解がありますね。

牧野 そうですね。たしかに。

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