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アップルの社内では、どんなプレゼンが行われているのか

2012年01月06日 公開

ガー・レイノルズ ( ベストセラー 『プレゼンテーションZen』 著者 )

 『THE21』 2012年1月号 [すべらない「プレゼン術」]より  

世界各国でベストセラーになった『プレゼンテーションZen』。著者のガー・レイノルズ氏は「日本人のプレゼンはつまらないものが多い」 〔記事「ジョブズも学んだ「禅」の精神をプレゼンに活かす」参照〕 という。では、プレゼンを向上させるためには何を心がければいいのか、引きつづきうかがった。

 

情報を羅列し読み上げるのは最悪!

 アップルの社内では、どのようなプレゼンが行なわれているのだろうか。やはりジョブズが行なう製品発表のようなプレゼンなのかと思いきや、そうではないという。

「製品発表のような大きな機会を除いて、ほとんどのプレゼンではスクリーンを使いません。ジョブズもパワーポイントが嫌いでした。
 10人ぐらいのミーティングでのプレゼンなら、スクリーンを使うよりも、ホワイトボードを使ってフリーディスカッションをするほうがいいのです。写真をみせる必要があるのなら、iPadを使ってもいい。
 デートのときにスクリーンを使いますか? 『趣味は?』と訊かれて、『はい、趣味は3つあります。1つ目は野球で……』なんてスクリーンを指しながら話す人はいませんよね。ビジネスのミーティングも同じです。

 私の専門は、大人数に対して行なう、スクリーンを使ったプレゼンです。アップルの社員でも、これをうまくできる人はあまりいません。MBAをもっているエリートもたくさんいますが、MBAプログラムで教えられているプレゼンも、優れたものだとはいえません。だからこそ、私がマーケティングのプレゼンをしたときに、いい評判を得ることができ、目立ったのでしょう。

 とはいえ、日本の企業でよくあるようにハンドアウトに書いてある内容をすべてスクリーンに映すことはなく、スクリーンはシンプルにするべきだということは理解されています」

 それでは、レイノルズ氏は、どこでプレゼンを学んだのか。その原点は「35ミリスライド」にあった。

「スライドはビジュアルであって、文字を読ませるためのものではありません。テレビのニュース番組でも、映像を映しながら、音声で解説をします。人は文字を読みながら話を聴くのが苦手なのです。
 スライドはビジュアルに徹するべきだというのは、誰に教えられたというわけではなく、私が初めてプレゼンをした17歳のころには当たり前のことでした。
 当時は、まだパソコンはありませんでした。スライドをつくるには、紙とペン、あるいは黒板を使ってデザインのスケッチを措き、それから、そこで使う写真を実際に35ミリフィルムで撮影しました。フィルムを現像するのには2週間かかりました。現像できたフィルムをスクリーンに投影して、プレゼンするわけです。必要な文字は、写真のうえにフェルトペンで書き込みました。
 パワーポイントがあリませんでしたからどても面倒ですが、そうするしかありませんでした。しかし、これを経験することで、ビジュアル・コミュニケーションについて学ぶことができました。

 パワーポイントのテンプレートを使うと写真を貼る場所が指示されますが、それに従っていては、ビジュアル・コミュニケーションのセンスを高めることはできません。
 87年にパワーポイントが登場したときには、プレゼン用の画像を表示するためのソフトウエアでした。ところが、その後、『ここにタイトルを入れて、ここに文章を箇条書きにして、……』と指示するソフトウエアになってしまい、最悪なスライドが氾濫するようになったのです。
 パワーポイントを便うなといっているわけではありません。パワーポイントは、適切な方法で使えば、役に立つツールです。しかし、プレゼンターが話しているのと同じ情報をスライドにも書くような、不適切な方法で使えば、最悪なプレゼンになってしまうということです」

同じ内容のスライドでも、デザインによってまったく別物になる

「Before」のようなスライドをつくりがちたが、「After」のほうが聴き手の記憶に残る。

「Before」は
不必要な背景や文章が入っている
文章が主体で、視覚的なインパクトが弱い
余白を埋めようとしている
色や書体のコントラストが弱い
英文・和文・画像の関係がわかりづらい

「After」は
不必要な要素は排除している
画像の内部にテキストを組み込んでいる
余白を使って、読ませたい文字へ視線を導く
色や書体のコントラストが明確
英文・和文・画像の関係がわかりやすい
  (関係の強いものが近くに配置されている)

いつもと同じように話せばいい

 最後に、プレゼンを向上させるためには何を心がければいいのかをおうかがいした。

「これから、日本のプレゼンは変わります。
 私は、よく『日本人は素晴らしいプレゼンターになれる』といっています。そういうと、『アメリカにはオバマやジョブズがいるけれど、日本人には無理だ』という人がいます。けれども、日本人にもすごいプレゼンターはいます。孫正義さんや茂木健一郎さん、また、DREAMS COME TRUE(ドリカム)などです。ドリカムの吉田美和さんと中村正人さんは、もちろん優れたミュージシャンですが、笑顔やアイコンタクトで何万人もの聴衆とのつながりをつくるのが、並外れてうまい。

 日本人は、プレゼンのとき、手元の資料に目線を落として聴き手とのアイコンタクトをせず、笑顔もないことが多いのですが、普段はそうではありません。プレゼンになると違う人になってしまうのです。プレゼンのときも、いつもと同じように話せばいいのです。
 スクリーンはビジュアルに徹するべきだというと、日本人はそれではうまく話せないと反論する人もいますが、そんなことはありません。
 私は大学でも英語でプレゼンを教えているのですが、まだ英語力に不安がある学生は、スクリーンに文章を映して、それを読もうとします。でも私は、スクリーンはビジュアルだけにさせます。すると、自分の言葉で表現して話さなければならなくなります。それができたとき、学生は自信に満ちた表情になるのです。
 スクリーンに映した文章を読むだけでも、日本では『よくできました!』となるのかもしれません。しかし、それでは、言葉は悪いかもしれませんが、芸ができた犬が褒められるのと同じではないでしょうか。

 スライドのデザインについても、センスがないと嘆くことはありません。デザインのプロになるわけではないのです。基本的なことを押さえれば、かなり改善できます。
 デザインセンスを向上させるには、禅の教えにあるように、身の周りに気づきをもつのがいいでしょう。身の周りのグラフィックデザインや自然には多くの気づきがあるのです。
 その点で、日本にいることはとてもラッキーなことです。ジョブズが禅に注目したように、日本には学ぶべきものが多くあるのですから。

 『スライドの枚数は何枚にするべきでしょうか?』というような質問は、間違った質問です。座禅をしているときに『集中できないんですけれども』と質問すること自体が間違っているのと同じです。運動でも、『何分間走ればいいのでしょうか?』『何キロカロリー摂ればいいのでしょうか?』と簡単に答えを求めようとしてしまいがちですが、ほんとうに重要なのはそんなことではなく、ライフスタイルでしょう。重要なのは、スライドの枚数ではなく、スライドをどう使うかです。

 ユニクロや楽天といった新しい会社では、もうプレゼンに対する考え方が変わっています。将来は、日本にも多くの上手なプレゼンターが生まれると信じています」

<インタビューの前半「ジョブズも学んだ「禅」の精神をプレゼンに活かす」はこちら

 

ガー・レイノルズ(Garr Reynolds)

関西外国語大学准教授
1961年米国オレゴン州生まれ。住友電気工業(株)米国アップルでの勤務を経て現職に。プレゼンの実施・指導における世界的な第一人者。西洋のプレゼン技術に日本文化の「禅」を融合させた手法は世界でもっともシンプルなメソッドとして名高い。企業向けの研修やコンサルティングのほか、世界中の企業や大学に招かれてセミナーを行なう。

 

ガー・レイノルズ氏の著書

プレゼンテーション Zen

熊谷小百合 訳 
ピアソン桐原 刊
2,415円(税込み)
<amazonで購入>

amazon.com「ベストオブ・ブックス2008」ビジネス書部門Customer Favorites分野 第3位に選ばれた大ベストセラーの邦訳。悪いスライドと、その改善法の具体的な例も豊富に収録されている。ほかの著書に『プレゼンテーションZenデザイン』『裸のプレゼンター』(以上、ピアソン桐原)、『ガー・レイノルズ シンプルプレゼン』(日経BP社)がある。



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