アップルの社内では、どんなプレゼンが行われているのか
2012年01月06日 公開 2022年10月06日 更新
世界各国でベストセラーになった『プレゼンテーションZen』。著者のガー・レイノルズ氏は「日本人のプレゼンはつまらないものが多い」という。では、プレゼンを向上させるためには何を心がければいいのか、引きつづきうかがった。
※本稿は『THE21』2012年1月号[すべらない「プレゼン術」]より一部抜粋・編集したものです。
情報を羅列し読み上げるのは最悪!
アップルの社内では、どのようなプレゼンが行なわれているのだろうか。やはりジョブズが行なう製品発表のようなプレゼンなのかと思いきや、そうではないという。
「製品発表のような大きな機会を除いて、ほとんどのプレゼンではスクリーンを使いません。ジョブズもパワーポイントが嫌いでした。
10人ぐらいのミーティングでのプレゼンなら、スクリーンを使うよりも、ホワイトボードを使ってフリーディスカッションをするほうがいいのです。写真をみせる必要があるのなら、iPadを使ってもいい。
デートのときにスクリーンを使いますか? 『趣味は?』と訊かれて、『はい、趣味は3つあります。1つ目は野球で……』なんてスクリーンを指しながら話す人はいませんよね。ビジネスのミーティングも同じです。
私の専門は、大人数に対して行なう、スクリーンを使ったプレゼンです。アップルの社員でも、これをうまくできる人はあまりいません。
MBAをもっているエリートもたくさんいますが、MBAプログラムで教えられているプレゼンも、優れたものだとはいえません。だからこそ、私がマーケティングのプレゼンをしたときに、いい評判を得ることができ、目立ったのでしょう。
とはいえ、日本の企業でよくあるようにハンドアウトに書いてある内容をすべてスクリーンに映すことはなく、スクリーンはシンプルにするべきだということは理解されています」
それでは、レイノルズ氏は、どこでプレゼンを学んだのか。その原点は「35ミリスライド」にあった。
「スライドはビジュアルであって、文字を読ませるためのものではありません。テレビのニュース番組でも、映像を映しながら、音声で解説をします。人は文字を読みながら話を聴くのが苦手なのです。
スライドはビジュアルに徹するべきだというのは、誰に教えられたというわけではなく、私が初めてプレゼンをした17歳のころには当たり前のことでした。
当時は、まだパソコンはありませんでした。スライドをつくるには、紙とペン、あるいは黒板を使ってデザインのスケッチを措き、それから、そこで使う写真を実際に35ミリフィルムで撮影しました。
フィルムを現像するのには2週間かかりました。現像できたフィルムをスクリーンに投影して、プレゼンするわけです。必要な文字は、写真のうえにフェルトペンで書き込みました。
パワーポイントがあリませんでしたからどても面倒ですが、そうするしかありませんでした。しかし、これを経験することで、ビジュアル・コミュニケーションについて学ぶことができました。
パワーポイントのテンプレートを使うと写真を貼る場所が指示されますが、それに従っていては、ビジュアル・コミュニケーションのセンスを高めることはできません。
87年にパワーポイントが登場したときには、プレゼン用の画像を表示するためのソフトウエアでした。ところが、その後、『ここにタイトルを入れて、ここに文章を箇条書きにして、……』と指示するソフトウエアになってしまい、最悪なスライドが氾濫するようになったのです。
パワーポイントを便うなといっているわけではありません。パワーポイントは、適切な方法で使えば、役に立つツールです。しかし、プレゼンターが話しているのと同じ情報をスライドにも書くような、不適切な方法で使えば、最悪なプレゼンになってしまうということです」
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同じ内容のスライドでも、デザインによってまったく別物になる