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「いい人生だった」と笑って言える人になる



2012年02月03日 公開

川村妙慶 (僧侶、広島経済大学客員教授)

《 『もしあなたが、あと1年のいのちだとしたら』 より》

 (写真:高橋章夫)

今という一瞬をどれだけ大事に生きられるか

 

「四苦八苦」と向き合おう

 突然ですが、あなたが「あと1年のいのち」だと宣告されたらどうしますか? きっと慌てふためくのではないでしょうか。

 どうしてでしょう? 人間は「自分に限っては長生きする」と思っているからです。どこかに特別意識があるのです。ですから怒りもするし、さまざまなことで苦しむのです。いつまでも生きることができると思うから「悩む」のです。      

 仏教ではこの世の中は一切皆苦(いっさいかいく=すべてのものは苦しみである)と教えてくださいます。仏教は無気力になる教えなのかと思われるかもしれませんが、仏教でいう「苦」とは、「自分の思い通りにならないということを自覚しましょう」と教えてくれます。

 まず、「生まれてきた」ことがそうですね。あなたは両親や環境を選んで生まれてきましたか? そこには選択の余地はありません。不思議なご縁でこの世に生まれさせていただきました。

 次に「老いる」こと。誰でも平等に老いていくのです。

  「病む」こと。生きていれば病気にもなります。

  「死ぬ」こと。生まれたということは必ず死ぬ時がやってくるのです。生老病死という4つの避けられないことを四苦といいます。

 さらに、どんなに愛していても必ず別れる時がきます(愛別離苦 あいべつりく)。どんなにいやな人でも顔を合わせなければならないのです(怨憎会苦 おんぞうえく)。

 そしてこうなりたいと思っても思い通りにならないこと (求不得苦 ぐふとくく)、人としての肉体・精神があるために生まれる苦しみ(五蘊盛苦 ごうんじょうく)の4つを、生老病死の四苦に加え「八苦」といいます。これを「四苦八苦」と教えてくださいます。

 では生まれたことも、生きていることも意味はないのか?  と悲観的にもなるでしょう。そうではないのです。思い通りにならないからこそ学べるのです。人間はマイナスを経験してこそプラスの意味が問えるのです。はじめからプラスだけだと、どんなものにも気づけません。

 私たちは諸行無常の人生を生きています。すべての存在、あらゆる現象は生じ、そして滅する、私たちもその流れのなかにあります。ですから自分の力ではどうしようもないことばかりなのです。

 すべてのものは変化しているのに、私たちは目の前のものに執着したり、「自分」にとらわれたりしてしまいがちです。

 さて、私たちは長さにとらわれます。「何年生きることができるのか?」「これはどのくらい頑張ったらいいのか?」というのがそうですね。

 しかし、大切なのは長さだけではありません。今という一瞬をどれだけ大事に生きているかなのです。逆に一瞬を大事に生きることができない人には未来はありません。

 

やってしまったこと、やらなかったことの後悔

 あることを決断できずに悩んだことがありませんか? たとえばある催しに行こうか? やめておこうか? など悩むときがあります。私は迷ったときは「行く」ほうをお勧めします。

 なぜなら行ったことによって、よかったのか、あまりピンとこなかったかがわかるからです。しかし、行かずに終わると「行けばよかったかな?」と想像することで後悔の念が残るのです。人間というものは目や体、心で体験することで納得しているのです。

 私たちは一度しかない人生を生きています。「あのときにこうすればよかった」などと、後悔はしたくないですよね。

 ですから、何らかの理想や目標をもって生きていこうとするのが私たちです。とはいっても失敗せずに生きたいと、慎重にもなります。「後悔したくない」ということと、「失敗したらどうしよう」という綱引きで毎日が揺れ動いているのです。

 私たちは生きる中で思い通りになることと、ならないことがあります。七転び八起きという教えは、また転んでも立ち上がる気持ちが大切ということを教えてくれますが、7回は転ぶのだということも教えてくれるようです。つまり結局は思い通りになることのほうが多いのです。

 病気や事故、世の中の変化など、思いもかけないことが起こってくるたびに、「こんなはずではなかった」といって苦しまなければなりません。そして、他の人に先を越されたりすると、失望したりするのです。

 なぜ「こんなはずではなかった」と思うのでしょうか。

 私は仏教を学ぼうと東本願寺関係の学校へ入学しました。親の言いなりに入学したと言いきった私に、担任の先生は「川村! 黒澤明の『生きる』を見にいこうか」と言って、映画に誘ってくださいました。

 映画の主人公は突然、あと数カ月のいのちと宣告されます。死に直面して、はじめて過去の自分の無意味な生き方に気がつくのです。それまでの自分は、家族を守るため、お金を貯めるために生きていて、「幸せという形」を埋めるためのものでしかありませんでした。自分で生きていなかったことに気がつくのです。

 こんなはずではなかった。その思いは、「自分だけは大丈夫」だと思い込んでいるために起こるのではないでしょうか。

 そんな私たちに対して、すべての物事は必ず移り変わるということを、仏教は「無常」と教えています。

 その事実によって目を覚まさない限り、自分の人生がいつまでも続くように夢見て、結局は空しく過ぎ去ってしまうことになるのです。

  願わくは深く無常を念じて、いたずらに後悔を貽(のこ)すことなかれ。
  (親鷲聖人『教行信証』行巻)

 私たちはこの世に生を受けました。ということは必ず老い、病み、死ぬのです。これは誰もまぬがれることのできない、いのちの事実です。

 しかし、できるだけマイナスイメージのものは見ないようにするのが私たちです。けれど、見ないようにしたからといって、「老」「病」「死」が消えるわけではありません。

 大事なのは、「老」「病」「死」を憎んだり、遠ざけることではありません。「老」「病」「死」のある人生をどう生きるか、問題を抱えている人生をどう生きるかということです。

 「あのときなんであの人と付き合ったのか」と後悔しても、あの人と出会ったという事実があります。

 「あのとき、あの人と付き合っていれば幸せになれたかもしれないのに」と、できなかった後悔もあるでしょう。

 やってしまったこと、やれなかったこと。
 この2つは「ご緑が整わなかった」だけなのです。
それだけなのです。過去や出来事に引きすられているから辛いのです。

 今の出会いに動かされ行動できたということが正直な気持ちであり、事実なのです。あなたの「いのちのかけがえのなさ」を大切にしてください。

 過去だけでもない、未来を当てにすることでもない。今のあなたをそのまま受け取り、大切にして生きていきましょう。

 

川村妙慶
(かわむら・みょうけい)

僧侶

池坊短期大学家政学部、池坊文化学院華道芸術科、大谷専修学院(東本願寺経営)本科卒業。FM大阪、ABCラジオ、テレビ西日本、NHKラジオ番組などのアナウンサーを経験。30代から本格的に僧侶としての活動をスタートさせる。ヤフー人名検索2007年度第1位のカリスマ僧侶としてその名を全国に知られている。
自身のウェブサイト「川村妙慶のロココスタイル」には、毎日約200通の悩みメールが寄せられる。趣味は温泉めぐり。特技は華道。現在・広島経済大学客員教授、NHK文化センター・FBS読売センター講師も務める。

著書に『あなたは、あなたでいい』(PHP研究所)『絵解き 世界一ホッとする尼さんのいい話』(マガジンハウス)『心の荷物をおろす108の知恵』(講談社)『こころが折れそうになったとき読む本』(こう書房)『独りじゃないよ』(二玄社)など多数。
http://homepage3.nifty.com/sairenji/


◇書籍紹介◇

もしもあなたが、あと1年のいのちだとしたら

川村妙慶 著

なんとなくやる気が起きない、もっと生きる充実感を味わいたい……そんなあなたに贈る、後悔のない人生を送るために大切なこと。

 



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