実は答えられない「なぜ企業にダイバーシティが重要なのか」
2018年07月25日 公開 2022年08月08日 更新
「属性」の人事から「個性」の人事へ
また、企業の競争力を高めるため、多様な視点からの意見を取り入れることで新しい発想を生み出したいといった場合には、「女性」「高齢者」「外国人」などといった属性だけで人材をとらえるのではなく、むしろ一人ひとりの「個性」を重視するという視点が重要になってきます。
例えば、子ども向けの商品を作っている企業の役員、管理職になった女性たちのなかに、子どもを持った女性が一人もいない場合、それはダイバーシティを強みにしているといえるのかどうか、ということです。
年齢に関しても同様です。若いから斬新な意見があるだろうと捉えるのではなく、その若者がもつ知識や視点をどのように事業に活かすかという視点を持つべきです。
「属性」ではなく、「個性」を生かす、という発想を持つことが真に多様性を生かすことにつながります。
昨今、多くの企業で「働き方改革」を取り組まれていますが、働き方そのものが多様化しているなかで、全社員共通で残業時間を調整したり、休暇の取得を促進したりすることが、はたして社員の働き方を改善し成果につながっているかは疑問が残るところです。
例えば、定時後に先輩から仕事を教えてもらったり、自社の商品について調べて勉強をしたり、仲間と議論するなかで多くを学んだり……という経験は、今も昔もあるはずです。
しかし、一斉に帰宅をさせたり、残業時間を削減させたりすることは、企業が社員の成長機会を奪うことにもなりかねません。
もちろん、違法な労働環境や、不適切な長時間労働、ハラスメントなどは厳しく取り締まらなければなりません。しかし今後、人材の多様性を成長の原動力にしていくうえでは、一斉に社員の働き方を決めるだけではなく、一人ひとりの社員が自分の価値の高め方を考え、選択できるようにすることが求められます。
働き方改革をきっかけに、人材の多様化と、個性に注目した人事について考えいただければと思います。
※本記事は、南 和気著『人事こそ最強の経営戦略』 (かんき出版) より一部を抜粋編集したものです。