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末期ガンを周囲に知られて起こる「優しい虐待」【幡野広志】

2018年09月26日 公開

幡野広志(写真家)

 

インスタントラーメンにお湯を注ぐような、気軽な「善意」のアドバイス

「この壺を買えばガンが治る」というメッセージがきたときは、腹の筋肉がシックスパックになるぐらい笑わせてもらったので、結果としてはよかった。

ガン患者っぽくもっとスリムになって余命ジョークにキレをつけたいし、シックスパックを見せつけて、看護師にキャーキャー言われるのも悪くない。

だが、こうした優しさのほとんどは、虐待だ。
僕が出した結論は、根拠なきアドバイスは「優しい虐待」であるということだった。

ガンと診断された人の多くは、現実を受け止めることができない。だから現実逃避をしたり、家族や医療従事者に怒鳴り散らしては自己嫌悪に陥り、自分の過去を責めたり、自分の存在価値を否定してしまう。

僕が調べたところ、ガン患者でうつ病や適応障がいを併発する人は健康な人の約2倍、自殺率は約24倍。病院内の自殺者の半数がガン患者だという。
ガンというのは体だけでなく、心も蝕む病気なのだ。

さらにガン患者は高齢者が多い。絶望し、藁にもすがりたい気持ちのところに「優しい手」に奇跡の水を差し出されたら、受け取ってゴクゴク飲んでしまうだろう。

優しさのかたちをしているけれど、結果として苦しめるのなら、それは相手を残酷に取り扱うのと同じこと。つまり「優しい虐待」なのだ。

前立腺ガンの5年後の生存率は97.5%。
すい臓ガンの5年後の生存率は7.9%。
ガンといってもさまざまで、同じ治療法が有効とは限らない。

「私はこの治療で治りました」とか「余命3カ月の宣告だったけれど、 10年生きています」というメッセージも大量にもらったけれど「それはよかったですね」としか思えなかった。

奇跡的な成功例はすばらしいけど、その裏には遺族が思い出したくもない失敗例が山ほどあるだろう。

いいところだけを見せようと、希望だけを与えようとするのは危険だ。希望がなくなったと気づいたとき、絶望が待っている。

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「優しい虐待」が患者も、家族も苦しめる >

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