政治家も官僚も怖れる「ネットの炎上」 世論には貧困を救う力がある
2018年10月30日 公開 2024年12月16日 更新
<<どうすれば、貧困問題は解決できるのか。社会政策学者の阿部彩氏は、PHP新書『貧困を救えない国 日本 (PHP新書)』で「政治家や官僚は、われわれの想像以上に世論を恐れている」と説いている。
阿部氏と貧困の現場を取材してきた鈴木大介氏の「本音の貧困論」が語られる同書から、日本の貧困問題の解決策を探る一節を紹介する。>>
※本稿は阿部彩,鈴木大輔著『貧困を救えない国 日本』(PHP新書)から一部抜粋・編集したものです
ネットで話題になれば永田町も霞が関も大騒ぎになる
(阿部)いろいろ問題のある政界ですけれども、私たちは政治家をうまく使うということも考えなきゃいけない。
実際、例えばネットや新聞報道で大きな話題になったとか、NHKスペシャルで報道されたとか、そういったことがあるたびに、永田町も霞が関もてんやわんやなんですよ。「わー、炎上している、どうしよう、どうしよう、どう火消しをしよう」みたいなてんてこ舞い。
(鈴木)そんななんですか。それは意外ですね。
(阿部)火消しに走り回る役人もいれば、その騒ぎにどう上手く乗ろうか企んでいる国会議員もいる。いわゆる世論を、ものすごく見ているんですよ。
で、ずうっと議論してきて決めたことが、それを否定するような報道が一個出ただけでおじゃんになってしまうぐらい、ほんとマスコミに翻弄される。一つの報道やネットの炎上ごときであたふたするな、どーんと構えてろって思うんですけど、彼らはそんなことないですね。
昔の官僚はそうじゃなかったのかもしれない。もうちょっと自分たちの考えで政策を進めていたのかもしれないんですけど、今の官僚は政治家にすごく翻弄されてますよ。そして、政治家が見ている相手はマスコミです。マスコミだけです。
(鈴木)ということは、どんな議員を選ぶかも大事だけど、選んだ議員がどう動くのかは、僕らが思っているより世論、というかメディアによって左右できるということ?
(阿部)なのでマスコミはもちろん、そのマスコミが気にしている私たちの目というものは、すごく強い武器なんですよ。みんなが思っているよりはるかに影響力がある。
だから、一番問題なのは政治的無関心です。無関心じゃなくて、自分はどうしてほしいのか、要望をどんなかたちでもいいから発信していく。それが例えばChange.org(利用者がオンライン署名を集め、提出できるサイト)のクリック一つでも、いいね! の一つでも、いいんです。
何もやらないのと比べて、全然違うんですよ。
(鈴木)それは僕も蒙を啓かれた感じです。政治家も庶民と変わらず、すごく小さなことで右往左往してるってことですよね。
(阿部)本当に一つの問題をよく勉強していて、そのエキスパートのような政治家がいれば、どんな報道やネットの反応があろうとも右往左往しないんですけど、みんなそこまで勉強する時間もないし、いつもてんやわんやなんですよ。
だから本当に、チャンスですよね。逆にうまく回せば、すごく動いてくれます。
(鈴木)言い換えれば、立法はただで動かせるんですね。