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社会

政治家も官僚も怖れる「ネットの炎上」 世論には貧困を救う力がある

阿部彩(社会政策学者),鈴木大介(ルポライター)

2018年10月30日 公開 2023年01月30日 更新

芸能人生活保護受給騒動と年越し派遣村

(阿部)そもそも貧困問題や生活保護の問題は、政治のビッグイシューじゃないんです。もうマイナーマイナーマイナーイシューなんですよ。ですから普通の政治家は貧困問題には手を出さない。貧困問題で自分をアピールしている議員以外は、基本的に興味を持たないんです。

そういう状況で、貧困について国会で取り上げられるためには何らかのきっかけが必要で、そのきっかけはやっぱり話題になったということなんですよね。

例えば、生活保護の不正受給に関しても、お笑い芸人の河本準一さんのお母さんが生活保護を受給していることが話題になって、片山さつき議員などが国会で取り上げたことで政治問題になったわけで。

(鈴木)そうか、もしかしたら、2009年の年始につくられた、「年越し派遣村」の影響もあったのかな。

(阿部)そうですね、年越し派遣村がテレビで取り上げられたことで、「もしかして経済やばいのかも」「うちのお父さんだって派遣になるかもしれない」といった雰囲気がつくられたのは確かですね。

厚労省は年越し派遣村なんてまったく気にしていなかったのに、政治家が取り上げるようになったから、最終的には厚労省も何らかの対策をとらなければいけなくなりました。

(鈴木)じゃあ決して無駄ではないのかな。本音を言うと、年越し派遣村が話題になったとき、もう10年も20年も前から炊き出しに並んでるおっさんどもは取材しないで、新たに現れた若年層、20代30代で炊き出しの列に並んでいる人だけをインタビューしたじゃないですか。
今まで無視してきた貧困をいきなりコンテンツ化したことにむちゃくちゃ頭きたんですよ。

(阿部)私もそういうイメージですよ。今までずっとやっていたことで、今年はじめて日比谷公園でやったわけじゃないんだよ、みたいな。でも、結果的にはそこで政治が動いたわけです。「日雇い労働者」という言い方ではなく「派遣」という言い方がなされたことも大きかったと思います。

(鈴木)なるほどです。正直、投票率を上げるとか、現状の組織票団体にイシューを変えさせるなんて、絶望でしかないと思っていたんですが、政治を動かすのは投票行為だけじゃなく、世論もあるということなんですね。少し光明が見えた気がします。

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