「てるてるぼうず」の起源は残酷だった!
子どもの頃、運動会や遠足の前日に「てるてるぼうず」を作って、「あした、天気にしておくれ」と願ったことがある人は多いだろう。しかし、「てるてるぼうず」に秘められた物語を知れば、そうそう無邪気ではいられないかもしれない。
そもそも、てるてるぼうずの姿はなんとも異様ではないか。やけに頭が大きく、身体はまるで雨ガッパのようである。それが「首吊り」状態で軒先などから下げられているのだから、見方によっては不気味でもある。
そして、「てるてるぼうず」は実在したという話がある。
ある年のこと、長く雨が続き、人々は難渋した。
「誰か、雨がやむ方法を知らないか」という為政者の声に、ひとりの僧侶が名乗り出て経を唱えたが、いつまでたっても雨はやまない。
「噓つきめ」と、怒った為政者が僧侶の首をはね、見せしめとして首を布に包んで吊るしたところ、雨があがったという。
こうなると、てるてるぼうずの坊主頭、雨ガッパは僧侶の衣、そして姿は吊るされた首と、すべてが一致する。
また、「てるてるぼうず」は中国から伝わった「掃晴娘」の話に由来するという説もある。
昔々、中国のある街に、紙切り細工が好きな晴娘という美しい女性がいた。ある年、雨が長く続き、彼女が晴れることを願うと、「命を差し出せば雨はやむ。だが、拒めば雨は降り続き、大惨事をもたらす」と天の声が聞こえてきたのである。
迷った末に晴娘が死を選ぶと、雨があがった……。
後世の人は、紙切り細工が好きだった晴娘をしのんで、ほうきを持った「掃晴娘」という紙人形を作るようになったという。「掃晴娘」の「掃」は、空の雲をほうきで掃いて青空にするといった意味だ。
日本の僧侶にしろ、中国の晴娘にしろ、いうならば「生贄」のようなもので、自らの命を捧げることで、自然の猛威を鎮めたというわけである。
※本稿は、平川陽一著『本当は怖い! 日本のしきたり―秘められた深い意味99』より一部を抜粋編集したものです。