「本当に話の上手い人」が“結論”から話を始めない理由
2019年03月13日 公開 2024年12月16日 更新
<<「結論から話せ」と教えられたり、指導された経験のある人は多いのではないだろうか? まずは結論、そして理由。しかしその形にこだわると、かえって分かりづらい話になってしまうこともあるのだ。
元カリスマ予備校講師の⽝塚壮志⽒が自身の講師経験から、本当に相手に伝わる話し方のためには、結論の前にある要素が必要だと語る。その要素とは何か?>>
結論から話すと、わかりにくくなることも
「1回の話の中で、理解してもらいたいことを何度かリピートするのがコツです」
これがなんのことだかわかりますか?
これは、「たった1回で相手に理解し記憶してもらうための話法」です。ただ、いきなりこんなことを言われても、なんのことだかよくわかりませんよね?
このフレーズは、分類としては、いわゆる「結論」に相当します。「わかりやすい話をするためには、結論から話せ」とよく耳にすることもあるかと思うのですが、今回の私のように、結論から話すとかえってわかりにくいケースがあります。
つまり、聴き手にわかりやすい話をしようとするあまり、どんなときも結論から話すのは逆効果にもなり得るのです。
それでは、結論から話したほうがわかりすい場合と、そうでない場合の違いはなんでしょうか?
相手が「わかってくれる」ための必要条件とは?
結論から話していくときに、聴き手がわかってくれる必要条件というのがあります。それは「前提が共有されている」ことです。
自分が話をするときに、相手がスムーズに理解していくためには、話し手である自分と聴き手である相手との間に「前提」が共有されていなければなりません。
裏を返せば、前提が共有されていない状態で結論から話しても、聴き手は理解不能に陥る可能性が高くなります。話し手と聴き手との間で前提が共有できていない場合、話が噛み合わないという自体が生じやすくなるのです。
そのため、前提が共有されていない可能性のある相手には、話す内容が成立するための「前置き」を、前提の共有目的で、結論を話す前に入れなければなりません。
こういった「前置き」を認知心理学では、「共通基盤」と呼びます。話し手と聴き手との間で共通基盤が作られているほど、「わかってもらいやすい」状態になるのです。
一方、前置きが一切なく、前提が共有されていない、つまり共通基盤がゼロの状態で話しはじめても、相手の理解力は低下してしまいます。
冒頭の例でいうと、私はまず初めに、「これから、たった1回で相手に理解し記憶してもらうための話法をお伝えしますね」と一言添えてから、
「その方法とは、1回の話の中で理解してもらいたいことを何度かリピートするのです。」
と結論を伝えるようにすべきなのです。このように話せば、必要最低限の前提が聴き手と共有できるはずです。
なお、話し手は、話す内容に関して聴き手よりも多くの情報を持ってしまっている分、聴き手も同じだけ情報を持っていると錯覚していまいがちです。
つまり、話し手は、聴き手と前提が共有されていると思い込んでしまいやすいのです。しかし、聴き手は話し手が思っているほど前提前提を把握できていないことが多いのです。
ですので、「これからこんなことを話すよ」的な話す内容のテーマを、冒頭で一言、コンパクトに話してあげることが効果的だと考えています。それが、わかりやすく話すための必要条件でもあり、聴き手に対する親切心でもあると思うのです。