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「会社の数字」がわかる社員による、ヒエラルキーのない組織作り【JALナビア】

高津良彦

2019年03月29日 公開 2019年04月15日 更新

自らの意思と能力で、働き方を選べる

JALナビア

――もう一つ、御社は、正社員と契約社員の方がうまく融合して仕事をされていると聞きます。これもフィロソフィ教育の効果でしょうか?

高津 最初にお伝えしたいのは、当社では「契約社員」という響きがあまり良くないので「ナビゲーションスタッフ」という呼称に改めています。そして、無期雇用への変更はもちろんですが、「正社員への登用」を活発に行っています。

ナビゲーションスタッフで入ってきたけれども、意識が高く、意欲にあふれ、高いスキルを持っている人には、どんどん手を挙げて貰っています。年に2回チャンスがあり、面談を通して意志を確認したうえで、出来るだけ登用しています。

従って現在、ナビゲーションスタッフは177人と全体の10%ほどの規模感に留まっています。「それならば、全員を正社員にすればよいのでは」という話も出ましたが、働き方の多様性を考えて、ナビゲーションスタッフという枠組みを残しているのです。

「私はマネジメントに携わる仕事ではなく、一本でも多くの電話を取って、お客さまに良いサービスをすることが生き甲斐です」という方がいてもいいわけですから。

――契約社員であるナビゲーションスタッフが、自らの意思と能力で、道を自由に選べるようにしたのは、素晴らしいです。

高津 ちょうど「雇い止め」をどうするかという話をしているころでした。「社長ミーティング」という社員との定例的なコミュニケーションの場で正社員から、「ボーナスの時期になると心が苦しくなります。一生懸命やってくれているナビゲーションスタッフの子たちに全然ボーナスが出ないのは、かわいそうじゃないですか」と言われたのです。

「当社の社員は、本当に優しい人が多いな」と感動しましたね。そしてこれは「一人ひとりがJAL」で、皆で力を合わせてやっていく、というJALフィロソフィがきちんと浸透していたからの発言だとも思いました。

この様な出来事の後押しもあって、無期雇用への道も開き、「正社員登用制度」も活発化させたのです。それによってでしょうか、「おかげで辞めないで済みました」という話を聞いたことがあります。「ことを進めてよかった」と、うれしかったですね。

――社員の方々のモチベーションアップに、効果が出ているのですね。

高津 さらに、出産・育児や何らかの理由で一度辞めた人に戻ってきて頂く制度も作りました。復帰するに当たっては、本人の希望も踏まえ正社員・ナビゲーションスタッフ等の雇用形態を決定し、復帰前のその人のスキルを活かして効果的に働いてもらっています。

退職前の在籍年数、退職してからのブランク期間などによって復帰時の賃金水準が決まりますが、最近少しずつ復帰する人が増えています。とても喜ばしいことです。

そして今後、オペレーターのやる気と生産性を高める手段として考えているのが、「AI」の導入です。

――AIは「仕事を奪う存在」として考えられているところもありますが……。

高津 われわれはAIを「有効活用できる道具」としてむしろ歓迎すべきものと捉えています。

これまでオペレーターは、「ご質問に対する答えは、どのデータバンクにあるか」を探しながら会話をする必要があるなど、細かい作業を同時並行でこなしていました。サービス、制度など取り扱う情報量が非常に多く、かなりの負担を強いられていたのです。

この場面にAIが入ると、お客さまとオペレーターとの会話を聞き取っているAIが最適なお客さまへの回答をどんどん見つけ出してくれるから、その部分でのオペレーターの負担は確実に軽減します。

一方で、本来の腕の見せ所であるお客さまとのコミュニケーションに集中し、質の高い受け答えが出来るようになる。結果、お客さまの満足度が高まり、仕事の成果も上がっていくと考えられるのです。

――このような「AI活用」のノウハウを確立し、それを将来的には、JAL以外の仕事にまで広げていくことをお考えですか?

高津 そんなに甘くはないとは思いますが、当社のノウハウを生かして取り組める仕事は、世の中にたくさんあると思います。そこで、「外に打って出る」ことで、世の中の様々な場面でお役に立ちたい、という気持ちを持っています。

その際に大切なのは、アメーバ経営とJALフィロソフィという二本柱に支えられて当社がこれまで培って来た仕事への取組み姿勢と価値観を、社員の皆さんがどこまで持ち続けていけるかということです。

当社が今後、どこまでビジネスの幅を広げても、また、時間が経って世代が変わっても、この二本柱に基づく大切にしなければならない姿勢をぶれることなくしっかりと社員ひとり一人に持ち続けてもらいたい。私はそう、切に願っています。

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